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花卉(かき)栽培とは?花卉栽培農家の仕事内容やスケジュール、将来性などについて

花卉(かき)栽培とは?花卉栽培農家の仕事内容やスケジュール、将来性などについて

植物が好き、あるいは農業で生計を立てたいと考えている人の中には、花卉(かき)栽培に興味のある方もいるでしょう。花卉栽培農家は農業者の中でも特に若い世代が活躍しています。今回は、花卉栽培について業務内容や将来性を含めてご紹介します。記事最後に、3000坪の圃場面積で花苗を生産している今野高(こんの・たかし)さんへのインタビューもあります。イチから花卉栽培を始めた経緯や、やりがいについて聞きました。

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花卉栽培とは?

花卉栽培とは、鑑賞用の植物という意味を持つ「花卉」を栽培することです。花卉の例としては、切り花、鉢花や花壇苗や観葉植物、盆栽など食用でない植物があげられます。基本的に贈答用や、切り花の場合には冠婚葬祭として扱われることの多い植物の栽培になるため、嗜好性の高い作目の農業です。

花卉の種類

花卉の種類_一覧

花卉の栽培方法

土耕栽培 土壌で栽培するスタイルです。除草や土作りのための手間がかかることや、害虫や天候の影響を受けやすい点が難点ですが、設備投資にかかる費用が抑えられるといったメリットもあります。
養液栽培 水に養分を溶かした培養液を使って花卉を栽培するスタイルです。主にハウスの中での栽培となり、害虫や天候などの影響を受けにくく安定した品質で生産しやすい点が特長です。しかし、土耕栽培に比べると管理はしやすいものの、設備投資に多額のお金がかかる、電気代や設備管理に伴う支出が発生するというデメリットもあります。

花卉栽培業界の現状

平成29年のデータによると、花卉の産出額は農業全体の約4%を占めています。その中でも産出額トップとなるキクは花卉産出額の17%にものぼりました。しかし切り花の輸入増加や栽培農家の減少により、作付面積や産出額は減少傾向にあります。
その一方で、花卉栽培に従事する生産者は稲作と比較すると45歳未満の若い世代が約2倍多いという特徴もあります。新規就農者が選ぶ作物としても魅力的な分野のようです。
また、民間会社や生産者自らの育種も盛んです。例えば、サントリーグループが世界で初めて成功させた青いカーネーションや青いバラ、青いユリなどはよく知られています。花卉業界は、その時代の流行やニーズに合わせて新しい品種を作り出し、さらに価値の高いものとなるよう日々開発が進んでいます。

参照:農林水産省花卉の現状について 花卉の定義

花卉栽培の業務内容

花


    ・土作り
    ・水やり
    ・植え替え、鉢上げ
    ・土やハウスの管理
    ・出荷
    ・育種

花卉栽培は、扱う花卉の種類により収穫や出荷の時期が変わってきます。業務内容についても花卉によって異なる部分があるため、適切な手入れや段取りを行う必要があります。ここでは、一般的な業務内容をご紹介します。

土作り(切り花)
土耕栽培の場合、苗を植える約2週間前から土作りを始めます。土を何度も耕して石灰や腐葉土を加えて寝かせ、肥料を混ぜて整えておきます。苗や種を植えた後も、適宜肥料を追加するなどの管理を続けます。

水やり(鉢花・花壇苗)
毎日の水やりは簡単に見えますが、経験が必要な作業です。花に傷を付けず、ちょうど良い量を与える必要があります。

植え替え、鉢上げ(鉢花・花壇苗)
苗の成長とともに、大きなポットや鉢に植え替えます。花卉の成長に合わせて適切な大きさのものへと変えていきます。

土やハウスの管理(切り花、鉢花・花壇苗)
ハウスの温度を管理したり、虫食いの対策をしたりと、花卉を育てる環境を常に管理します。

出荷
切り花として出荷する場合は、余分な葉やつぼみを取り除きます。鉢ものや苗ものは、ラベルを挿すなどの行程もあります。

育種
異なる品種との掛け合わせなどによって、色や形の違う新種を作る取り組みです。花卉栽培農家によって、行っているところとそうでないところがあります。

体力仕事もありますが、比較的に軽作業が多い作物です。女性も活躍している業界です。

花卉栽培農家のスケジュール例

年間スケジュール(花壇苗の場合)

花卉農家の年間スケジュール_s02

株式会社宮城フラワーパートナーズの場合

6月、7月は休業にする花卉栽培農家も多いようです。中には、海外の花卉の展示会に参加する農家もいます。

8:30 作業開始
8:30~11:15 花卉の観察、水やり、室温管理など
11:15~12:15 昼休憩
12:15~16:00 植え替え、追肥など
16:00~17:00 室温管理など
17:00 作業終了

自分で花卉栽培農家を経営している場合と、従業員として働いている場合とでは、1日のスケジュールが異なります。
また、繁忙期や時期に仕事内容が左右されやすい職種のため、1年を通して全く同じスケジュールということはほとんどありません。栽培している植物が収穫時期を迎えた場合は、収穫や出荷作業がメインとなる日もあります。一方で、これから新しい苗を植える時には土作りで1日が終わる日もあります。

大規模花卉栽培農家にインタビュー

今野さん

ホームセンター向けの花苗を生産している株式会社宮城フラワーパートナーズの今野 高(こんの・たかし)さんに、3000坪の圃場で生産するまでの経緯ややりがいなどについて伺いました。

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花卉栽培農家になるには?

宮城県庁で野菜の農業改良普及員として働いたころから市場外流通(※)の農業で独立すると決めていたと話す今野さん。

※ 市場外流通:卸売市場を通さない取引のこと。売り手である生産者や輸入業者と、買い手である小売業者・外食事業者・消費者との直接の取引。

──なぜ、市場外流通の農業にこだわったのでしょうか。

「雇用を生む農業を目指していました」。人の安定雇用のため、値段の価格設定に参加参画したいと考えていました。
農産物は市場に出荷すると自分で値段をつけられない。市場での価格が変動すると給料の資金捻出の不安定さがあり、雇用するとなるとこの点は非常にリスクになります。そのため市場外流通で独立し、価格設定に参画したかったのです。
私は「農業経営者を育てたい」と考えています。農家は子供が後継者となるケースが非常に多いですが、次世代の農業を担う熱量のある人にたくしていきたいです。そういう人と出会うためには、雇用をつくらなければなりませんからね。

──市場外流通の農業で独立を実現させるために、数ある作物から花を選択された理由はなんでしょうか。

最初は野菜で独立すると考えていました。たくさんの野菜の中から自分が理想とする農業ができるものを模索していました。当時、ガーデニングブームもありホームセンター向けの花苗が一番価格設定に参画しやすく市場外流通の契約も結びやすいということが分かりました。しかし、花のことは何も知りませんでした。

──どのように花について知見を深めたのでしょうか。

花について知識を得るために最初は公務員を続けたまま、とにかく沢山の種をまいて研究することにしました。数でいうと2000ポット(面積でいうと10坪)、資金は5万円でスタート。土も含めてほとんどのものをホームセンターから購入しました。
また、千葉県に師匠がいたので宮城県から月に1度、師匠の農園へ研修にも行きました。朝5時から業務開始ですが、4時には圃場に着いて花を観察。成長スピードや状況に応じた対処を把握することに繋がりました。

──スタートからどのような流れで規模を拡大したのでしょうか。

「花の生産で得た売り上げは全額、次の生産への資金にあてる」ということの繰り返しでした。
10坪のときは、自宅の軒先で販売し、売り上げを全て資材に投入。次は20坪ほどに拡大して自宅の軒先と近所にある野菜市場で販売し、売り上げはすべて40坪のハウスを建てるための資金にあてました。ハウスそのものを直売所風にして販売し、その売り上げで更に新しくハウスをたて、100坪になりました。ここまでを3年かけて行い、独立しました。

実は、この独立するまでの3年で販路も確保していました。大手流通のAEON(イオン)と契約を結んだのです。まだ希望された花について作り方が分からない段階で契約していたので、「どんな花が欲しいですか」と希望を聞いてからその品種の作り方を勉強しました。

──3年で!すごいスピード感ですね!

ただ、100坪で独立すると言うと笑われますよ。生活していくとなると300坪ほど必要なので。花壇苗の栽培だと、1坪当たりの売り上げが3万円いけば良い方ですね。
しかし、僕の場合は独立してから1年半で1000坪になりました。新契約を結ぶ度に新しいハウスを建てたこともありますね。現在は3000坪までになりました。
僕だから達成できたということではなく、目指したから達成できた。自分が目指す姿を定めて、それに挑戦すれば、農業界にはいくらでも可能性があります!

現在感じるやりがいは

──今では3000坪で花卉栽培をされているということですが、現在のやりがいはなんでしょうか。

短期的なことでいうと、納期を合わせることですね。納期もピッタリ合って、品質も高い状態で出荷できるときはとても嬉しいです。
長期的には、ホームセンターで新しい需要をつくる、ということですね。それを達成するために商品・企画を作っているときはやりがいを感じます。

お花の苗を買う人、ガーデニング人口というのは全人口のうち30%と言われています。あとの70%はお花を買わない。人口が減少すれば比率は変わらなくとも、相対的にはガーデニング人口も減ってしまう。花を買わない70%の人たちが年1回でも2回でも購入していくような活動をしています。

──具体的にはどのような活動でしょうか。

ホームセンターで買い物をするお客さんのうち、3割は花売り場に立ち寄りますが、7割が素通りしているだけの状態。ただ苗を販売するだけでは、その70%の人は花売場に振り向いてくれない。私は売り場作りにも立ち合いますし、接客講習会なども開催したりします。年間数十回は接客活動をしています。そして、そこで得た情報を商品化して表に出していく。この繰り返しです。

例をあげると、ガーデニングの入り口として寄せ植えに力を植えています。寄せ植えは育てる園芸ではなく「魅せる園芸」です。玄関に1つか2つ、年に1回で良いから飾ってほしいと考えています。花の苗の客単価はホームセンターでいうと、500円から800円程度。でも、寄せ植えは1つで1000円以上します。今まで買わなかった人が寄せ植え1つ買うだけで、今までのお客さんの2人分に相当します。
マーケットの金額が増えると業界は活性化していくので、マーケットを広げるためにもこのような活動は続けていかなければなりません。

今野さんの圃場

──最後に花き農家として就農を考えている方にメッセージをお願いします。

未経験の方にはサイクルが短い作物をおすすめします。未経験者に足りないのは言葉の通り経験。サイクルが短い方が資金を増やすスパンも短いですし、1年で栽培経験できる回数がその分増えます。その点でも花卉(花壇苗)栽培農家はオススメできます。

花は嗜好品です。好きな色やカタチなど、自分の感性にあったものを生産することが1番だと思います。それを改めて感じたエピソードがあります。花卉栽培農家10人くらいで売り場をつくり、どの生産者がつくった花なのかは分からない状態で販売しました。ある1人のお客さんが10個くらい購入した際に、全て1人の生産者から出品されたものを選んでいたのです。生産者とお客様のセンスがピッタリ合っていたんですね。
商売っ気が出てくると売れるものを作ろうと思いがちですが、1番大事なことは、自分が好きなものを生産し、それを認知してもらう企画をして販売すること。 必ず自分のセンスと一緒のお客様がいます。

経験を積んで独立する時には、農林水産省のホームページ等で経営支援や給付金等のサポートを見てみましょう。条件が合えば、無利子で資金を借りたり、農機具等の購入の補助を受けたりと、費用面での負担が軽減できる可能性もあります。

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