丁寧な顧客対応で増えるファン。“三方よし”の6次化と直販で、小豆の魅力を海外にも発信!

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丁寧な顧客対応で増えるファン。“三方よし”の6次化と直販で、小豆の魅力を海外にも発信!

丁寧な顧客対応で増えるファン。“三方よし”の6次化と直販で、小豆の魅力を海外にも発信!
最終更新日:2020年12月16日

「ひとつの畑、ひとつの品種をピュアに味わっていただきたい」。これが北海道十勝地方の清水町で畑作を営むA-Net(エイネット)ファーム十勝の6次化のテーマです。自社の作物と加工品の直販事業からリアルに学んだ事、そして十勝名産の小豆の可能性について、PRと販売を行う森田里絵(もりた・りえ)さんに聞きました。

【プロフィール】株式会社A-Netファーム十勝 専務取締役 森田里絵さん
長崎生まれ横浜育ち、京都大学農学部卒。北海道農政部で同僚だった森田哲也(てつや)さんと2004年に結婚し、夫のUターンに伴い北海道十勝地方の清水町羽帯(はおび)で営農する森田農場の一員になった。農場は2011年に法人化し、里絵さんは2013年から豆類の商品開発とウェブ管理を担当。シーズン中は小豆をはじめとした畑の作業も忙しい。

春の小豆畑_A-Netファーム十勝

農地72ヘクタールのうち小豆は8〜10ヘクタール。日勝峠に続く緩い傾斜地の畑は標高183メートル。この地域は気候が冷涼なため、これより標高が高いと小豆栽培は難しくなる(写真提供:A-Netファーム十勝)

小豆農家の4代目夫婦は、元公務員

北海道の十勝地方では、小麦、豆類、ジャガイモ、テンサイ(ビート)を輪作する畑作農家が多く、特に小豆のブランド産地として全国に知られます。清水町に100年近く続く農場の4代目、森田哲也さん、里絵さん夫妻が営む「A-Netファーム十勝」は、農地面積72ヘクタール。哲也さんの父と正社員1人とともに、小麦、ジャガイモ、大豆、小豆、アスパラガス、カボチャなどを栽培しています。
十勝晴れの秋、小豆の収穫が終わった農場にお邪魔しました。「2020年産の収量はまずまず。どんな味になるのか楽しみです」。農学部出身の里絵さんが大規模農家の一員になって16年。「土作り、安全性、美味(おい)しさのバランスがとれた農業」という経営ビジョンのもと、夫婦で目標を持って働いてきました。営業面での具体策は、直販と自社原料による商品開発。特に後者を進めるために申請した「六次産業化・地産地消法に基づく総合化事業計画」に、2013年秋に認定され、環境を整え始めました。
売り先はこだわりの和菓子店、ベーカリー、セレクトショップ、そしてウェブショップは里絵さんが担当。現在は自社通販サイト、Amazon、楽天店を運用しています。

森田夫妻_A-Netファーム十勝

「A-Netファーム十勝」代表の森田哲也さんと里絵さん

単一農園・単一品種の小豆で、豊かな味の世界を伝えたい

“畑を混ぜない”小豆が肝心なわけ

里絵さんが特に小豆の直販や商品化に注力する理由は、十勝で出会った小豆のおいしさと面白さでした。
「小豆って、品種や気候条件で味も食感も全く違うんです。そこをわかっていただくにはどうしたらいいか、いつも考えています」と里絵さん。「不思議なことに、すぐ隣の畑の豆ですら、煮える時間や皮の柔らかさは違う。だから“畑を混ぜない”のが理想。一つの畑の豆を煮ることで、ムラなくおいしいあんこが作れます」
A-Netファーム十勝の小豆が「ひとつの畑、ひとつの品種」ごとに販売されているのは、おいしさのため。主力品種は「きたろまん」。中でも大粒のものを手選別して「プレミア小豆」として限定販売しています。
小豆の栽培は、ジャガイモや小麦といった機械化しやすい作物よりも人手がかかります。発芽から夏までに手作業の除草を3回。10ヘクタールの小豆畑にカルチベーター(畝の除草機械)をかけ、さらにホー(立ったまま使う草刈り用のクワ)を使って草刈りし、それでも出てくる草を手で抜く作業は、里絵さんの言葉を借りれば「草と人の戦い」。これを繰り返しながら16年間、小豆とつきあってきました。

おいしい小豆の煮方の発信で、常連客が定着

Youtubeのスクショ_A-Netファーム十勝

YouTubeチャンネル「A-Netfarm Tokachi」 では、自社の小豆の調理法や畑の様子を発信している

きっかけは、あんこ作りが上手な義母の味でした。「できたてのあんこを、気づいたらお鍋の半分くらい食べてしまって……」と笑います。その味やふつふつと煮える匂い、体にしみわたる充実感を伝えるには、やはり自分で小豆を煮てもらいたい。そこで、自社が販売する小豆の煮方やレシピをウェブサイトや動画配信で発信しています。意外だったのは、ゆで水を途中で取り換える渋切りをしないことです。「小豆は登熟期の日照時間が長いほどタンニンが増え、黒くて渋い豆になります。その点、ここは秋の日照が短いので豆の色が赤く、渋みがほとんどないんですよ」(里絵さん)
メールの質問にも丁寧に返信し、小豆ファンを一人一人増やした結果、2020年には1500人の購入者が里絵さんのメールマガジン「小豆らいふ」を購読し、うち3割がリピート購入者。新豆が出る度に買ってくれる常連客が、ウェブショップの売り上げを支えてくれます。

商慣習を学び、“三方よし”を目指す6次化

常温品で賞味期限が長いのが勝因。ゆで小豆のドライパック

ホクホクあずき_A-Netファーム十勝

定番品になった「ホクホクあずき」。森田さん夫妻の6次化力アップのきっかけになった

加工商品の開発でまずトライしたのはお菓子。小豆や大豆を手軽に食べてもらうのが狙いでしたが、冷凍品のため送料がネックとなり、早くも壁にぶつかりました。しかし2016年、あるバイヤーから「小豆農家なのだから、小豆そのものを味わえる商品が欲しい」とアドバイスを受けて、哲也さんが動きます。出張先で見た大豆のドライパックを見てすぐに加工先を探し、千歳市の田中製餡(せいあん)北海道工場に相談。試作の末、ゆで小豆ドライパック商品「ホクホクあずき」が完成しました。この商品が先のバイヤーに採用され、大手生活雑貨チェーン・無印良品の一部店舗で扱われたのです。「ホクホクあずき」は常温品で賞味期限が長いため取り扱いやすく、商品の回転もスムーズ。これが6次化成功第1号の商品になりました。

「発酵あずき」のトラブルから、顧客対応も学ぶ

発酵あずき_A-Netファーム十勝

2019年発売の「北海道発酵あずき」。糖分を心配せずに小豆を食生活に取り入れたい女性に、特に人気が高い

2019年3月にリリースした「発酵あずき」の商品コンセプトは、健康志向の人にシュガーレスの提案をすることです。麹(こうじ)を使って小豆の甘みを出すという里絵さんのアイデアを、十勝の本別町の味噌(みそ)蔵、渋谷醸造が商品化。開発を機にクラウドファンディングも実施し、こだわりを込めたロゴなどのデザインを施したパッケージ類も整いました。
実は2020年の夏、この商品の一部に変質が発生しました。開封前は常温扱いですが、発酵食品ゆえの不安定さはゼロではありません。そこで、里絵さんは二つの対応をしました。まずは顧客対応。商品交換はもちろん、他の購入者にも改めて25度以上の保管を避けるようメールとSNSで説明しました。次に改善策として、外箱にもステッカーで温度管理をお知らせ。「また、猛暑の時期などは受注を一時停止することも可能です。こういう時オンオフをこまめに変更できるのは、ECの利点かもしれません」と里絵さん。送料を考えてレターパックプラスで送れるサイズのパッケージを採用した商品なので、常温配送の中でできることを判断した対応でした。

6次化の根本は「値付け」

公務員出身の森田さん夫妻にとって、こうした6次化の取り組みは「商慣習というものを一から学ぶ場」(里絵さん)でした。食品流通の賞味期限のルールや表示関係、保健所の手続き、デパートや商店との受発注の流れや書類の作成など覚える事が多く、時には価格競争にもさらされます。里絵さんは、「6次化の根本は値付けではないでしょうか」と言います。高ければ売れない、安ければ続かない。「製造販売の仕事は、お客様と自分と流通の“三方よし”を探す旅のように続けていくもの」。里絵さんは今、そう感じています。

海外プレゼンで、小豆の可能性を再確認

パリ小豆イベント_A-Netファーム十勝

2018年1月にパリで行った小豆のワークショップ

販路開拓は国内にとどまりません。2人は2016年に帯広市「十勝人チャレンジ支援事業」を活用して、パリで市場調査をして小豆とあんこの価値観や輸出の可能性を探りました。この時、パリで大人気のどらやき専門店「パティスリー朋(とも)」の日本人パティシエと知り合ったのをきっかけに、2017年、2018年に小豆のワークショップを開いたのです。豆を甘く煮て食べる習慣のないフランス人ですが、あんこには興味津々。渡航前の下調べで「ドラえもん」のアニメが放映されたことでどらやきを知る人が増えたという情報は知っていたのですが、まさにその通りだったと実感しました。2019年に「シラ国際外食産業見本市」(リヨン)に出展して試食が大人気となったことから、哲也さんが商談中だったパリ高級日本食材店との取引も始まり、2020年2月には飲食業界向けワークショップも実現させました。「現地の方々は、食を表現する言葉がとても豊か。あんこを初めて食べて、栗のペーストにベリーを足したような味だね、などと的確に表現されて驚きました」と里絵さんは手応えを感じています。

A-Netファーム十勝の売り上げは2020年も堅調で、小豆のファンは着実に増えています。小豆の魅力は、デリケートな味や産地の様子を伝えてこそ理解される。森田さん夫妻の思いが実った時、小豆は世界が求める食材になっているかもしれません。

森田農場(A-Netファーム十勝)

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