存続危機の集落営農法人、その将来像に迫る 「3階建て方式」とは

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存続危機の集落営農法人、その将来像に迫る 「3階建て方式」とは

窪田 新之助

ライター:

存続危機の集落営農法人、その将来像に迫る 「3階建て方式」とは
最終更新日:2021年01月28日

全国で集落営農法人が存続の危機にある中、地域の農業を維持するにはどうすればいいのか。広島県東広島市の重兼農場が近隣の集落営農法人やJAと出した答えは、共同出資による広域の受託組織をつくることだ。集落営農の「3階部分」と呼ぶこの新たな組織の誕生の経緯や事業を通して、集落営農法人の将来像に触れたい。

存続の危機を迎えた集落営農

ファームサポート広島中央が作業受託している中山間地

ファームサポート広島中央が作業受託する中山間地

東広島市では1989年の重兼農場を皮切りに、2019年度末までに33の集落営農法人が誕生し、いまではすべての町に存在している。同市と三原市大和町を管内とするJA広島中央の管内にまで広げると、その数は45に及ぶ。中山間地の農業をまさに集落営農法人が支えている構図である。

ただ、前回の記事で紹介したように、いずれの集落営農法人も高齢化と人手不足に加えて、定年と年金支給の延長のあおりを受けて、いまの体制で組織を継続的に運営することが難しい状況にあった。東広島市高屋町重兼の集落営農法人・重兼農場の代表に29歳で就いた山崎拓人(やまさき・たくと)さん(31)が2016年に入社した当時を振り返る。
「少なからぬ集落営農法人では誰か一人が病気で倒れたら、次の日から作業が回せない心配があります。集落営農法人からの作業を請け負う広域の組織が必要だったんです」

前回の記事はこちら
集落営農法人として史上最年少!? 29歳で代表に就いた元JA職員による経営改革
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集落営農法人を支える新組織

アイキャッチ、2_山崎さんと中土さん

重兼農場の代表・山崎さんとJA広島中央の中土さん

そこで山崎さんの先輩らが重兼農場はじめ5つの集落営農法人とJA広島中央とともに共同出資してつくったのが、各法人が管轄する地域からの農作業を一括して受託する株式会社ファームサポート広島中央だ。
その前身は2009年に5つの集落営農法人でつくった任意組織のファームサポート東広島。米価が低迷する中でも生き残れるよう、集落営農法人同士が機械を共同で利用することで、経費を削減することを目的とした。当時、JAが各集落営農法人が所有する機械の稼働率を調べると、半分は使っていなかった。

余談ながら、JAでは独自に受託組織をつくる案も浮上していた。ただ、すでに同様の組織としてファームサポート東広島があったことから、農家組合員と競合するのを避けるため、既存の組織に出資することにした。

集落営農の発展にとってファームサポート広島中央は新たな段階から誕生した組織といえる。全国の集落営農の組織としての体制はおおむね「2階建て」となりつつある。つまり1階部分は農地や水といった地域資源の管理などの公益機能を、2階部分は農産物の生産や加工、販売などを担う。

これまで2階部分については、高齢などを理由に住民ができなくなった農作業を集落営農法人が請け負ってきた。ところが設立から時間を経て高齢化や人手不足が進み、集落営農法人も受託するのに限界を感じるようになった。そこで各集落営農法人から受託する「3階部分」といえるファームサポート広島中央のような組織が誕生したのだ。

これは集落営農にとって新しい概念のようで、農林水産省の担当者に聞いても初耳のようだった。ただ、山口県では県を挙げて組織化が進んでいるほか、兵庫県たつの市ではこれからつくるという話を聞いている。全国の集落営農法人が置かれた状況を思えば、ほかの地域でも必然的に誕生していくに違いない。

JA出資型にした訳

ファームサポート広島中央の事業は出資する5つの集落営農法人や当該地域の農業法人、JAなどから農作業を受託すること。主には田植えや稲刈り、ドローンによる防除、土壌改良剤の散布である。
機械は集落営農法人から借り上げ、時間当たりの利用料を支払う。ドローンは自社で中古品を一機所有するほかはJAから借りている。機械の移動はJAに、格納は各集落営農法人かJAに委託している。

実際のところ、ファームサポート広島中央の実務は、ほかの集落営農法人と比べて経営体力がある重兼農場がこなしている。そうであれば共同出資の法人をつくらずとも、重兼農場がほかの集落営農法人から受託するようにしてもよかったのではないだろうか。この疑問についてファームサポート広島中央の取締役でもある山崎さんは「それはよく言われるんです」と前置きしたうえで、次のように答えた。

「JAが出資するのは大事です。一つは看板を借りられるから。重兼農場だけだとほかの地域での信用度が低い。もう一つは事務作業が楽になるから。というのも作業受託の依頼の多くはJAを通して舞い込んでくるからです。もともと人員が少ないところに事務までこなすとなると、大変ですからね。それからJAの施設が利用しやすくなるのも利点です」

受託する相手はJAか農業法人に絞っているのが特徴だ。JA広島中央営農販売部の中土敏弘(なかど・としひろ)さんはその理由について「集団管理へのいざない」という。
「中山間地の農業は個人では管理できない事態にまで来ています。ファームサポート広島中央が法人からの受託に限っているのは、集落営農法人はじめいずれかの法人に加入してもらおうという意図があるわけです。個人からバラバラに委託されても、作業効率が悪くなる心配もありますからね」

将来は2階部分を担う

前回紹介した通り、重兼農場は山崎さんが代表になってから、若い人材が増えてオペレーターの数がそろってきた。一方で周囲の集落営農法人は若返りが進まず、存続できるか不透明だ。山崎さんは「その時にはファームサポート広島中央としてその集落の農業を部分的にではなく全面的に請け負っていく」と力強く語る。一人の若者の参入には一つではなく複数の集落の農業を変えるだけの力があるということを教えてもらった。

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