国内初AI導入の選果場、メディア初披露 人口減少時代に対応、11月運用へ

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国内初AI導入の選果場、メディア初披露 人口減少時代に対応、11月運用へ

国内初AI導入の選果場、メディア初披露 人口減少時代に対応、11月運用へ
最終更新日:2021年02月12日

ミカンの産地である静岡県浜松市のJAみっかびが11月から稼働を予定している、国内初という人工知能(AI)で規格別に果実を仕分ける選果場。外壁の工事が終わり、特別に見学する機会を得た。目を見張る巨大さで、延べ床面積では「東洋一の選果処理能力」とうたった現行の選果場のさらに約1.5倍に及ぶ。そこから見えてくるのは人口減少時代に対応する産地としての強い意志である。

処理能力は1日500トン

選果場

施工中の選果場。通路を設けて、見学を受け入れる

農畜産物の販売高のうち「三ヶ日みかん」が75%を占めるJAみっかび。産地を象徴するのはJA本店のそばに立つ「東洋一」と呼ぶ選果場だ。
建物の延べ床面積は1万5000平方メートルで、一つの品目の選果場として国内ではほとんど目にすることのない規模である。糖度と酸度を計測する光センサーやコンテナを移動するロボットが1日当たり500トンのミカンをさばく。
ただ、竣工から20年が経ち老朽化したことから、総工費約80億円をかけて旧三ケ日高校の跡地に新たな選果場を建築中だ。

規模拡大の弊害である「家庭選果」を省力化

久米部長

JAみっかび営農柑橘(かんきつ)部部長の久米さん

建物の内部はまだ施工中で、がらんとしている。だからこそ余計に広く感じるその空間は労力を軽減するためにある。その対象はまずもって農家であり、個々で実施している「家庭選果」だ。

現状、農家は収穫した果実を「レギュラー」、一つ下の「2等」、風擦れなどの傷、病気や虫の被害に遭った加工品向きの「原料」に外観で仕分ける「家庭選果」をしてから、選果場に出荷している。一方、新たな選果場では「レギュラー」「2等」の仕分けを請け負うことにする。つまり農家は「原料」だけを取り除けばいい。高齢の農家の中にはそれすらもできなくなっているところもあることから、収穫物をそのまま集荷する仕組みも整える。選果場の一区画に専用のロボットと補助員を配置して、「原料」を取り除く。こちらは有料。

注目したいのは、「家庭選果」で「レギュラー」と「2等」を仕分けるよりも、選果場にすべて任せたほうが上位の等級に入る割合が増えることだ。同JA営農柑橘部部長の久米孝征(くめ・たかゆき)さんは「2等品として厳しく判定する農家が多かったということ。等級が上がった分で数億円の効果が見込める」とみている。

選果結果のデータを営農指導に活用

以上を可能にするのはAIを導入した選果機。過去2年にわたって収穫した果実の画像データをAIに学習させ、人よりも高精度に選果できるようにしたのだ。現行の選果場では目視に頼っていた、病気や虫の被害で外観が損なわれた果実の判定も新たな選果場ではAIに任せる。
注目したいのは、選果した成績が農家の畑ごとにデータとして蓄積されることだ。これがきめ細かな営農の指導に役立ち、量と質の向上につながる。
このほか選果する過程で果実に近赤外線を当てるだけで、腐敗の発生を防止したり糖度を向上させたりする機能を持つ装置も取り入れる。

集荷業者の運転手不足にも対応

特徴としてもう2点付け加えたい。一つは出荷箱の容量を現行の10キロから8キロと4キロに変える。世帯当たりの消費量が減少したり単独世帯が増加したりしているからだ。選果の出口を複数に分けることで、ほかの容量にも臨機応変に対応できるようにする。

また、新たな選果場は集荷業の運転手が足りなくなる時代に対応することも想定している。その一つが「合い積み」の自動化だ。
現行の選果場では、選果したミカンが詰まった箱を出荷用のパレットに載せる役割はロボットが担っている。課題は一つのパレットに一つの規格しか載せられないこと。たとえば「優・2L」を載せるパレットに「秀・L」と一緒に載せる「合い積み」ができない。

ただ、20以上ある等階級を効率的により多くの市場へ届けるには、合い積みすることが欠かせない。JAみっかびの場合、出荷量の30%が合い積みである。このため選果場では人力による詰め替えの仕事が発生する。たとえば「優・L」と「秀・2L」を合い積みする場合、「優・L」でいっぱいになったパレットの箱を人力でもって半分だけ取り除き、「秀・2L」を積み入れる。選果場の職員と運転手が総がかりでこの作業に当たっている。

一方、新しい選果場ではより高度になったロボットによって合い積みができる。同JA営農支援課課長の伊藤篤(いとう・あつし)さんは「試算ではドライバーが荷積みにかける時間が10分の1になる。ドライバー不足の時代に大事なこと」と説明する。

次の世代に何を残すのか

パレット

JAみっかび管内の農家の低温貯蔵庫。パレットで保管している。

ちなみに、いずれの果樹の産地でも選果場からの出荷は大型トラックにパレットのまま積むわけではない。「ほとんどは箱のまま積んでいるようだ」と伊藤さん。
付け加えると、同JAでは多くの農家がJAの選果場まで2トン車にパレットを載せて出荷する。これができるのは農家が各自でフォークリフトをそろえ、パレットのまま保管できる低温貯蔵庫を持っているからだ。多くの産地ではコンテナで貯蔵と出荷をしているので、その積み下ろしがないだけで負担は大きく違う。

約30年前にこの仕組みを考案したのは同JAの前組合長で、当時はミカンを作る農家だった後藤善一(ごとう・よしかず)さん。仲間とともにスピードスプレーヤー(薬剤噴霧器)の研究会を設立。傾斜の園地をならし、園内道も整備した。それでスピードスプレーヤーやバックホー、軽トラなどが入れるようになり、防除や施肥、収穫、木の植え替えに至るまでが楽にできるようになった。ほかの農家もそれに倣い、産地全体の生産性が上がった。「三ヶ日みかん」は先人によって礎を築かれたのだ。

ただ、年月を経るごとに高齢化や労働力の不足などの心配事が顕在化してきている。そんな中でJAみっかびは次の世代に何を残すのか。この問いからミカン産地の将来について考えてみたい。

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