手間のかかる水稲種子生産の除草を約4割省力化、除草機導入にかかる金額と現状の課題とは

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手間のかかる水稲種子生産の除草を約4割省力化、除草機導入にかかる金額と現状の課題とは

斉藤 勝司

ライター:

手間のかかる水稲種子生産の除草を約4割省力化、除草機導入にかかる金額と現状の課題とは
最終更新日:2021年02月19日

水稲種子の生産では徹底した雑草防除が求められます。種苗法で雑草種子はもちろんのこと、同じイネでも変異株の種子の混入について厳しく規定されているからです。しかし、除草剤を使用しても残った雑草は人の手で取り除くしかなく、その労働負担は決して小さなものではありません。この除草作業が水稲種子生産の担い手不足の一因になっていることから、三重県農林水産部農産園芸課は水稲種子の生産性の向上を目指した実証試験に水田除草機やラジコン除草機を取り入れ、どの程度、省力化できるか調べています。

厳格な雑草防除が求められるが、むやみに除草剤を使えない

コメの生産では生産者自らが自家採種した種子が使われることもありますが、近年は質の高い種子を求めて、種子生産専門の生産者により採種圃場(ほじょう)で収穫された種子が利用されることが多くなっています。しかし、水稲種子に関しては、種苗法で種子の混入について厳しく規定されています。異種の雑草種子が0.2%を超えて混入してはならないとされているだけでなく、同じイネでも前年のこぼれモミから育った“漏生イネ”などの変異株の種子は一切混入してはならないとされ、厳格に雑草を防除することが求められます。

そのため除草剤が使われますが、適切な使用で異種雑草は枯らすことができても、変異株は同じイネであるため除草剤の使用だけでは防除できず、生産者が手作業で抜き取る必要があり、水稲種子は手間のかかる作物になっていました。少子高齢化の影響で全国的に農業者の減少が懸念される中、特に水稲種子の生産農家は急速に減少しています。こうした傾向は三重県でも見られており、種子生産における除草の省力化を目指して実証試験が進められています。実証試験を実施することになった背景について、三重県農林水産部農産園芸課の高橋勇歩(たかはし・ゆうほ)さんがこう説明してくれました。

「現在、三重県の水稲種子の生産者は、過去10年間で4分の1程度まで減ってしまいました。しかも、70歳以上の高齢農家が6割を占めていて、県内の水稲生産を維持していくには種子生産の担い手を育成していかなければなりません。ただ、三重県における水稲種子の生産はもっぱら中山間地域で行われており、水田内の除草に加えて、畦畔(けいはん)や水田脇ののり面が広く、除草作業が大きな労働負担になっていて、新規就農者があらわれない一因になっていました」

直進キープ田植機

直進を維持する田植機を取り入れることで、蛇行することなくイネを植えられ、後々の水田除草機の作業もしやすくなります

手作業の除草に比べて3~4割の省力化を確認

農林水産省がICTや農業機械を取り入れた農業生産の推進を目的に「スマート農業実証プロジェクト」を立ち上げたことから、高橋さんらはこのプロジェクトに応募。2020年から水稲種子の生産性を向上させるとともに、除草機の導入による省力効果を調べる実証試験を実施。水田内の雑草防除にはオーレック社製の水田除草機「ウィードマン」を採用しました。この除草機は除草刃が回転して条間の雑草を刈り取るとともに、回転式のレーキ(熊手)によって株間の雑草も抜き取ることができるといいます。

ただし、肝心のイネが蛇行して定植されていると、条間の雑草を刈り取る除草刃でイネまで傷つける危険性があります。そのためこの実証試験では直進を維持できる田植機を採用することで、まっすぐに植えたイネを傷つけることなく、条間の雑草を確実に刈り取れるようにしました。それでも残ってしまった雑草は手作業で取り除きますが、大幅な省力化ができたと評価されています。水田除草機の省力効果について、実証試験に参加する三重県農業研究所伊賀農業研究室の中山幸則(なかやま・ゆきのり)さんはこう評価します。

「まだ1年目の作付けを終えただけですが、手作業だけで除草していたのに比べて、水田除草機と手作業の除草を合わせた場合は3~4割省力化できると評価しています。ただ、実証試験の準備の遅れから、最初に水田除草機を使ったのはメーカーが推奨する『田植えから20日後』より8日間も後でした。その間に漏生イネは深く根を張ったでしょうから、除草機では取り切れなかった可能性があり、推奨されたタイミングで除草機を使えば、もっと省力化できるかもしれません」

GPSガイダンス付き水田除草機

実証試験に取り入れられた水田除草機。前面に取り付けられた除草刃と回転式レーキで条間だけでなく、株間の雑草も取り除くことができます

導入費用はいくらなのか、現状の課題とは一体

また、畦畔や水田脇ののり面については、クボタ社製のラジコン草刈機「ARC-500」が試されました。この意図について高橋さんがこう説明してくれました。
「中山間地域ゆえに斜面が急なところも多く、草刈機を使った除草中の転倒事故の防止にも配慮しなければなりません。ただ、走破性の高いラジコン除草機は高額なため、なかなか導入するのは難しく、実証試験では比較的リーズナブルなクボタ社製のラジコン草刈機を実際に使ってみて、どのような環境なら使えるかを調べました」

現在市販されている除草機でも、急な斜面やぬかるみをものともせずに走破できるものがありますが、こうした除草機は高額でそうそう導入できるものではありません。その点でクボタ社の草刈機はリーズナブルな価格が魅力でした。しかし、実証試験で試したところ、雨上がりで地面が軟らかくなった畦畔やのり面での使用において、地面の凹凸で立ち往生したりすることがありました。今後、価格を据え置いたままの、不整地での走破性の向上が期待されます。

水田除草機については除草の手間を大幅に削減できるだけに、その導入コストが気になります。高橋さんがこう続けます。
「私たちが導入した水田除草機は400万円以上で、決して安いものではありません。それでも除草の手間を3~4割も削減してくれるので、大規模に種子生産を行う経営体なら、導入する価値は十分にあると見ています」

主食用米の生産では種子生産のように厳格に除草しなくてもよく、水田除草機を導入する必要はありませんが、除草剤の使用が制限される有機栽培米や特別栽培米の生産では雑草防除の手間が増大する分、水田除草機が力を発揮するでしょう。種子生産にしろ、有機栽培米、特別栽培米の生産にしろ、水田除草機は生産規模による費用対効果を検討して導入を決めることが求められるようです。

ラジコン除草機

ラジコン操作なら除草作業者の転倒事故を防ぐことができますが、雨上がりの地面で立ち往生することがあり、ラジコン草刈機の課題が明らかになりました

画像提供:三重県農林水産部農産園芸課

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