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沖縄の野菜が日本の冬の食卓を支える? 沖縄青果市場に潜入取材!

沖縄の野菜が日本の冬の食卓を支える? 沖縄青果市場に潜入取材!

全国の農家さんを訪ねるフリーランス農家のコバマツです。現在沖縄県に滞在中です。今回は、沖縄県内の青果物の流通を担う、沖縄協同青果さんにお邪魔しました。
沖縄では、冬場のスーパーでも豊富な種類の県産野菜が並んでいます。さらに沖縄以外でも沖縄県産野菜を見かけることは珍しくありません。
冬場でも暖かい気候だからこそ野菜を作ることができる沖縄。そこでできた野菜の流通ってどうなってるの? そもそも市場ってどのような場所なの? コバマツが市場に潜入し、実際にお話を聞いてきました。

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沖縄の農業とは

今回、コバマツが訪れている沖縄県。現在1月ですが、平均気温は17~23℃と半袖でも過ごせるくらいの気温です。1月下旬にもなると桜が咲き始める地域もちらほらあります。

正直、沖縄で農業というイメージがあまりなく、実際に来るまでは、

「サトウキビと果物くらいしかないんじゃないの?」

と、わりと本気で思っていました。
しかし、沖縄滞在中、スーパーや直売場に行くと県産野菜がズラリと並んでいます。しかも、冬の時期である12月、1月に!
沖縄の農業&流通について冬の野菜1

沖縄の農業&流通について冬の野菜2

スーパー、直売所に並ぶ沖縄県産野菜達

どうやら、沖縄も豊富に野菜がとれるようです。しかも冬に。
実に興味深い沖縄県産野菜の生産と流通! これは沖縄にいる間に調べなきゃ!

沖縄青果市場に潜入!

というわけで、沖縄の農業と野菜の流通について、コバマツが実際に青果市場に潜入し調査してまいりました。

今回市場を案内してくれるのはこの方です!

■遠藤千晴(えんどう・ちはる)さんプロフィール

沖縄の農業&流通について遠藤さんプロフィール 1994年生まれ。埼玉県出身。東京農業大学応用生物科学部醸造科学科卒業後、就職を機に沖縄県へ移住。株式会社美(ちゅ)らイチゴなどの農業生産法人での勤務を経て、2019年に沖縄協同青果株式会社へ入社。
現在は、営業本部販売促進班にて、市場に日々出荷する生産者の農業技術開発や農産物の販売サポートを行っている。
大好きな農業と農家さんに毎日触れることができること、農家さんから「いいものができたよ」と言ってもらえることが何よりのやりがい。

AM5:30、市場に潜入!

沖縄の農業&流通について 朝の5時半

AM5:30の市場。外はまだ真っ暗!

今回の取材の集合時間はAM5:30。さすが市場! 朝が早い。待ち合わせの駐車場で待っていると、続々とトラックや車が入ってきます。

早速市場に潜入です。普段は、市場に登録している卸業者や農家さんしか入ることはできません。今回は取材ということですが、私も市場の人に変装します。

沖縄の農業 コバマツ変装

市場の人に変身完了! いざ潜入!


沖縄の農業市場の様子 

さすが、市場。早朝から市場職員や、卸業者でにぎわっています

見渡すだけでもすごい量の青果物ですね! 沖縄県産のものも多くあるのでしょうか?
沖縄県では、11月下旬から5月上旬くらいまでが、県産野菜が多く出回ります。冬(12~2月)の時期、キュウリ、インゲン、ゴーヤー、ピーマン等が多く生産されています。島野菜や葉物野菜も多いです。夏は暑すぎて野菜が作れなくて、冬のこの時期が一番沖縄の市場は作物の種類が豊富ですね。

沖縄といえば、サトウキビや果物のイメージでしたが、野菜も豊富なんですね!
都内や、私が住んでいる北海道でも沖縄県産の野菜を見かけることが多くありますが、この市場からどれくらいの量を県外に出荷するのでしょうか?
時期にもよりますが、冬場はおよそ3割の野菜・果物が沖縄県外にいきます。本土は気温の影響で冬場はなかなか野菜が作れないので需要があり、そのため県外に多く出荷されます。

3割も! 確かに全国的に、野菜の生産量が減少する冬場に出荷できる沖縄の野菜は貴重な存在ですね! それだけでも価値がある!

メジャーな野菜の収穫時期は本土と真逆の冬、一方で夏にはマンゴーやシークワーサーなどのトロピカルフルーツの生産が盛ん。さらに沖縄ならではの島野菜や果物もあって、沖縄の農業はなかなか独特です。

沖縄の市場について

ところで、市場ってそもそもどのような場所なのでしょうか? ざっくりしたイメージはあるのですが……。
市場は、1. 生産者、2. 卸売業者、3. 仲卸業者・売買参加者と、主に3つの役割の人達が集う場所です。
1. 生産者は農家さん。
2. 卸業者は私たち、市場の人間です。生産者から品物を預かったり、仲卸業者や売買参加者に品物を売ったりする役割があります。
3. そして、仲卸業者・売買参加者は、市場で購入した青果物をスーパーや加工業者に卸したり、自分達のスーパーで販売したりします。

なるほど! 生産者と卸業者をつなぐ場所なんですね。一般の消費者の食卓に届く手前の業者が買い付けに来る場所なんだ! ちなみに、生産者はどのような基準で市場に出荷できるのでしょう?
出荷登録すれば誰でも出荷できます。

え!? 誰でも!? 農業者とか、最低出荷量とか、品質とか、何か基準があるのでは?
形の良しあしなどでA品、B品、C品などの分類はありますが、農業者の方じゃなくても出荷できますよ!

私でも!?
コバマツさんでも!

なぬーー!! 知らなかった! コバマツ、野菜を市場に出荷する夢ができました!
もちろん、市場に出荷するためのルールはあります。食品衛生上安全なものであること、市場が受け入れ可能な時間帯に出荷することなどのルールがあり、それを守っていただける方に生産者登録をしていただいたあと、出荷できるようになります。

きちんと安心安全なものを届けることができるように、そこは市場のチェックが入るのですね!
沖縄の農業 島唐辛子1パック 

この日一番少量の出荷作物。島唐辛子1パックでも市場に出荷可能

大まかな市場の仕組みが分かったところで、実際に市場に潜入していきたいと思います。

セリに潜入!!

セリに潜入セリの様子

セリは毎日朝6時から始まります。買受人(仲卸業者、売買参加者)が、各野菜のエリアを回り、野菜の買い付けを行っていきます。

セリに潜入並ぶ野菜達

ズラリと並ぶ野菜達

セリに潜入 番号

赤丸が購入業者番号

セリで業者に購入された野菜達には、業者の登録番号が記入されていきます。

セリに潜入 ふーちばー

島野菜のフーチバー

セリに潜入 ブロッコリー

ものによりますが、段ボールに入っている野菜は沖縄県外に輸送されることが多いようです。

見るだけでも半分以上が段ボールに入っています。

セリに潜入果物

こちらは店頭売買用

セリに潜入トマト

沖縄県産トマト

セリで購入された野菜達は次々とフォークリフトで外に運ばれていきます。

セリに潜入行き交うフフォークリフト

市場内は何十台ものフォークリフトが行き来しており、ボヤボヤしていたらぶつかりそう

セリに潜入出荷されていく野菜達

そのままトラックに乗せて運ばれていくものもありますが、各仲卸業者が、市場にテナントを構えていて、市場で野菜の選別やパッキングを行い出荷する、というケースもあります。

セリ潜入選別場

市場内にある、選別、パッキングできるスペース。セリで購入した野菜達の中にはこちらに運ばれてくるものもあります

セリに潜入 野菜選別

ブロッコリーのパッキング

セリに潜入ミカン仕分け

こちらはミカンの選別、袋詰め中

市場内では日々、このような流れで野菜や果物が流通しています。
さまざまな工程を経て、野菜が私たち一般の消費者の手に届いているということが分かりました。ありがたや。

沖縄県の野菜の特徴は?

市場内を見渡してみると、段ボールに入っていて県外に行く野菜が多いですね! どのような野菜が需要があるのでしょうか?
さっき見ていただいて気づいたと思うんですけど、やっぱり、日々食卓に上がるメジャーな野菜が需要があります。沖縄県ならではの島野菜は、ほとんど県内で流通しますね。

品目によりますが、全国的に国産野菜が減っている冬場は、やはり県外での需要が高まるようです。
具体的にどのような所に流通するのか?
実際に仲卸業者の人に、市場で購入した野菜をどこに販売するのか、聞いてみました。

こんにちは! こちらの買い付けたピーマンはどこにいくのでしょうか?
沖縄県野菜の特徴は?段ボールピーマン

本州にいく大量の買い付けられたピーマン達

これは、大きさ的にB品扱いになるので、関東、関西の飲食チェーン店に加工用に卸します。

え、こんなに立派なのにB品なんだ!
沖縄県野菜の特徴は?規格外のピーマン

立派だけど、大きすぎるピーマン

沖縄のピーマンは、大型の品種のためどうしても規格で定められているサイズより大きくなっちゃうんですよね……!
B品でも、都内に出荷した方が高く売れるんですよ!

そっか! 沖縄県内では冬でも野菜の供給があるから、供給が少ない県外に出した方が値段を高く流通させることができるんですね!

ほとんどのA品は、県外へ。その方が、沖縄県内に出荷するよりも価格が高く売れるとのこと。B品、C品が県内で流通するそうです。

沖縄の野菜の流通について

沖縄の市場に入ってくる野菜のほとんどが、沖縄県外に出荷されているという事実が発覚しました。
日本最南端から、どのように品質を保って、沖縄県外に輸送しているのでしょうか?
営業本部部長の親泊直樹(おやどまり・なおき)さんにお話を聞きました。

どのように輸送するのでしょうか?
通常、飛行機や船を使い、冷蔵で送りますね。飛行機だと1日。船だと2~3日くらいで、関東、関西まで運ぶことができます。

案外早く着くのですね!
飛行機や船でこれだけの量を送るとなると、輸送費がものすごーーーく高くなると思うんですけど……。
沖縄から輸送する青果物の輸送に対しては、国からの補助金が輸送業者、つまり買受人に出ているんです。ほとんど、業者が輸送費を負担することはありません。

え!そうなんですか! 一番気になっていた輸送費についての謎が解けました!

明らかに距離や輸送費の面で、本州に比べ不利な立地の沖縄県。その昔、沖縄の輸送業者が、国に対して「平等に生鮮品を流通させることができるようにしてほしい」と交渉したのだとか。

ちなみに、市場で1日に流通する青果物の量はおよそ200~250トンとのこと。金額でいうと、4000万~5000万円の取引になるそうです。
これを流通させるのに業者が運送費を支払っていたら……すごい金額になりますね。

沖縄輪野菜の流通について日が出てきた市場

AM10:00頃。市場ではようやく、セリも出荷も終わります

「沖縄で農業?」
とあまりイメージがわかないかもしれませんが、今回の取材を通して、日本の冬の国産供給を支えている貴重な地域であることが分かりました。

日本最南端という、日本の中でも特殊な気候と風土を持つ沖縄。冬こそ野菜が多くとれるという強みを生かして、本土の国内野菜の供給を満たしてくれています。

特に日常的に食卓に並ぶ品目の作物は、あればあるだけ、本土では需要があります。つまり限られた県内の農地でも生産量と効率を上げていくことができれば、沖縄の農業にはもっともっと可能性がある!

そんなことを沖縄の市場で感じました。

沖縄輪野菜の流通について 遠藤さんとツーショット

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