他産地から出品もOK いち地域のJAが「全国共有のECサイト」をつくる理由

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他産地から出品もOK いち地域のJAが「全国共有のECサイト」をつくる理由

窪田 新之助

ライター:

他産地から出品もOK いち地域のJAが「全国共有のECサイト」をつくる理由
最終更新日:2021年03月04日

JAみっかび(静岡県浜松市)が11月からECサイトの運用を始める。しかも独自ブランドの「三ヶ日みかん」だけではなく、他産地からも品目を問わず出品できるようにする。農畜産物を扱うECサイトについては既存のものが数多くある中、なぜいちJAが自ら全国共有のものをつくるのか。

眉唾な「無農薬」や「無化学肥料」の表示

新型コロナウイルスの影響で外出が控えられる中、巣ごもり需要の高まりで電子商取引(EC)サイトが盛況だ。農家や産地にとって売り先が広がることは喜ばしい。ただ、産地にとって懸念する事態も起きている。信頼性において眉唾な商品が少なくないのだ。JAみっかびがECサイトをつくる理由の一端はそこにある。
たとえば一部の商品は「無農薬」や「無化学肥料」などと表示している。いずれも、農産物の生産と表示の規則で関係者が守るべき基準について農林水産省が定めた、「特別栽培農産物に係る表示ガイドライン」に原則では反する。

「栽培方法などについて相互に納得した」?

ただ、同省はECサイトは同ガイドラインの対象外としている。同省がまとめた「特別栽培農産物に係る表示ガイドラインQ&A」によると、同ガイドラインを順守する対象としているのは、「販売方法の如何(いかん)にかかわらず、不特定多数の消費者に販売される農産物」。
一方、「特定の生産者と消費者とが結びついており、栽培方法などについて相互に納得した上で売買されている場合は、表示が問題になるとは考えられない」。ECサイトは後者に当たるというのだ。
この言い分には疑問が残る。果たして既存のECサイトでどれだけの人たちが売買するに当たって、「栽培方法などについて相互に納得した」といえるほどに情報を交換し合えているだろうか。ごく少ないはずだ。とはいえ同ガイドラインは法律に基づいて順守する義務を課すわけではない。実際には野放しといえる状態になっているのが現状だ。

出どころが疑わしい商品

出荷箱

統一されたJAみっかびの出荷箱

既存のECサイトには出どころを疑うような商品もある。多くの産地はブランド農産物について出荷用の箱を独自に作り、意匠をこらしている。ただ、ECサイトにはそれとは別の箱で出品されているブランド農産物がある。
たとえばJAみっかびは「三ヶ日みかん」の出荷箱を統一している。箱には同ブランドの公式キャラクター「ミカちゃん」を描いているほか、機能性表示食品制度に基づき「β‐クリプトキサンチン」と「GABA(ギャバ)」を含有する「機能性表示食品」であることをうたっている。

ところが同JAが既存のECサイトを調べたところ、こうした意匠がなく、別の仕様の箱で売られているのを発見した。そこには「元の箱から詰め替えた」とただし書きがあるものの、その言葉を信じるだけの担保はない。
実際、ECサイトでその商品を購入した客から「思っていた商品と違う」と、同JAに苦情が来ることがあるという。産地にとってはあずかり知らぬことで、迷惑というよりほかない。
いずれも農業に関する法律や制度を熟知しない、あるいは問題を直視しない業者が起こしているようだ。放っておけば農家や産地の信頼を揺るがしかねない。

安心して売り買いできる場を提供したい

選果場内

JAみっかびの選果場内。ミカンの品質や生産履歴はデータで管理している

JAみっかびは以上のような事態を懸念し、独自のECサイトを作ることにしたのだ。開発と企画、運営を担当するのは、農業技術の要点を伝える動画の配信や農産物の販売促進の支援などをしているAGRI SMILE(アグリスマイル、東京都渋谷区)。今年の秋から運用を始め、まずは取扱高の75%を占める温州(うんしゅう)ミカンを重点的に売る予定。
同JAは選果場に光センサーを導入して、ミカン一個ずつの酸度や糖度を計測。生産履歴も管理しているので、その商品の信頼はデータで担保できる。同JA営農柑橘(かんきつ)部の久米孝征(くめ・たかゆき)さんは既存のECサイトの問題点を踏まえながら、「産地にとっても消費者にとっても安心して売り買いできる場を提供したい」と意気込みを語る。

産地や品目を限定しない訳

JAみっかびのECサイトでもう一つ注目したいのは、産地や品目を限定しないことだ。周年で多品目の農産物が豊富にそろい、売り買いが活発になることこそECサイトと産地の成長につながると考えるからだ。他産地のミカンも受け入れるというから寛容である。売り手としての参加条件は「細かくは決めていないものの、商品に思い入れがあって安全や安心を担保してくれることが望ましい」と久米さん。
JAみっかびが出品する商品については、農家から栽培に関する思いや意気込みを聞き取り、その物語を記載するという。JAらしい計らいだ。産地農協らしいECサイトの登場を楽しみに待ちたい。

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