-
栗山千明(くりやま・ちあき)さんプロフィール
1984年10月10日生まれ、茨城県出身。ティーン誌でのファッションモデルを経て、1999年に第1回ミス東京ウォーカーを受賞。映画「死国」にて女優デビュー。代表作は、映画「バトル・ロワイアル」「キル・ビル Vol.1」「チーム・バチスタFINAL ケルベロスの肖像」「種まく旅人 くにうみの郷」、テレビドラマ「ATARU」など多数。安定した演技力と幅広い才能で、映像、音楽などの分野で活躍している。
金沢市のレンコン農家を舞台にしたヒューマンドラマ
映画「種まく旅人〜華蓮のかがやき〜」は、農業や漁業をテーマに制作された映画「種まく旅人」シリーズの4作目です。今回は石川県金沢市の伝統野菜である「加賀れんこん」をテーマに、レンコン農家の後継ぎ問題を中心に物語が描かれています。
栗山さんが演じるのは、農林水産省の地域調査官・神野恵子です。シリーズの2作目「種まく旅人 くにうみの郷」で演じた役柄を、今作で再び演じています。今作ではレンコン農家の視察のため、神野恵子が金沢を訪れます。
舞台となるのは、加賀れんこんを育てている農家の山田家。父親が脳梗塞(こうそく)で倒れ、後継ぎ問題に揺れています。農家の息子・良一は大阪で銀行マンとして働いており、後を継ぐかどうか悩みます。そこへやってきた神野がこの後継ぎ問題にかかわっていくことで、それぞれが下す決断と歩んでいく人生が描かれています。
純粋でお節介な人柄で周囲を巻き込んでいく主人公の魅力
──主人公の神野恵子を演じるのは2回目となりますが、神野のどんなところに魅力を感じますか?
神野のいいところでもあり、悪いところでもあると思うのですが、すごくお節介なんです。でもただのお節介ではなくて、「知り合ったからには放っておけない」という純粋な気持ちから来るもの。その性格で周囲を巻き込んで、ストーリーが動いていきます。
仕事だから、そこまで相手に深くかかわらなくてもいいのに、神野は簡単に仕事相手という一線を飛び越えちゃうんです。「農水省の官僚」という肩書きは関係なく、神野は地域の人と共にちゃんとそこにいるんです。そうした人柄は、素敵だなぁって思います。
──栗山さんのクールなイメージと違うキャラクターのようですね。神野との共通点ってありますか?
食に対する興味があったり、食べるのが好きだったりというところはそっくりだと思います(笑)。
──意外です! 撮影の合間で「加賀れんこん」は食べましたか?
はい。撮影までは、加賀れんこんは普通のレンコンとそこまで変わらないと思っていました。でも食べてみたら、「これなんだ?!」って思うくらいおいしくて、普段食べているレンコンとは全然違いました。
前作の撮影後も、スーパーでタマネギを買うと、「どこのかな?」って産地を見るようになって、「淡路島のタマネギだ、うれしい!」って思うようになりました。映画を通して、食にもっと興味が出ました。
──なるほど。食への意識も変化したんですね。
どういうふうに育って栽培されているか、詳しくわからないものってたくさんありますよね。普段スーパーに行けば手軽に買えるものでも、作る過程や自分の手元に届く過程を再認識することで、ありがたみを感じられて、余計においしくいただける気がします。
──レンコン農家の後継ぎ問題に神野はかかわっていきますが、栗山さんは農家の「後継ぎ問題」については、どう感じましたか?
農業だけに限らず、親の仕事を継ぐか継がないかというのは、すごく難しい問題だと思います。もし、ほかに自分がやりたいことがあったら困るし、難しい選択を迫られますよね。後を継がないこと自体は悪いことではないし、その人自身の人生ですから、何を選択したとしても、正解か不正解かではないと思います。ただ、神野だったら、「こんなおいしいレンコンが作れる環境があるのに、手放しちゃうのはもったいない!」って言うと思います(笑)。
──農作業のシーンもあったそうですが、撮影は大変でしたか?
私、出身が茨城県なんですけど、レンコン畑が結構たくさんあって、小さい頃から「深いから落ちたら大変よ」と周りから言われていたので、大変な場所ということは知っていたんです。撮影前はきっと大変だろうと、覚悟をしていきました。
撮影中は、泥に足を取られて大変でしたが、私は農作業が上手じゃない役だったので、まだましな方で。農家役の平岡くん(平岡祐太さん)や機材を持ったスタッフさんたちは、相当大変だったと思いますね。
「ものづくり」という大枠で見つけた農家との共通点
──農業や農家さんの仕事の魅力についてはどう感じましたか?
自分が食すものを自分の手で育てられるというのは、すばらしいことですよね。生きるうえで大事な核になる「食」に携わる仕事は、やりがいがあると思います。天候によって左右される部分もあって、本当に大変ですが、その分、作物ができたときの喜びは、食べるだけの私たちにはわからない大きな感動があるのでしょうね。
私自身も新型コロナウイルスの影響で映画の公開が延期されたため、「本当に公開できるのかな」と、不安な思いもありました。それでも、やっと公開できることになり、あらためて達成感といいますか、みなさんにお届けできるという感動の気持ちがあります。もしかしたら、農家の方もきっとそうなんじゃないかなと思うんですよね。できあがるまでの大変さと、それを届けられたときの感動というのは、作品作りに通じる部分があるんじゃないかなと思います。
──たしかに、少しずつ育てていく「ものづくり」という点では、どちらにも共通点がありますね。
──映画には「農業女子」も登場しますが、農業に打ち込む女性はどのように映りましたか?
私も作物を育てることに興味を抱いて、シソとかバジルをおうちで育ててみたことがあります。結局あまりうまくいかなくて、「作るって難しいな」と思ったんですけど。興味がある方々で集まって、試行錯誤しながら農業をするのはきっと楽しいし、女性ならではの視点もあるのではないでしょうか。農業は、女性が楽しめるお仕事の一つなんじゃないかなと思いますね。
──最後に映画を見てくださる方にメッセージをお願いします。
どうやってレンコンが育つのか知らない方、たとえばお子さんや若い方は、映画を見て驚きや発見があると思うので、ぜひ農業から遠い人たちにも見てもらいたいです。そして、純粋に映画のストーリーを楽しんでいただければと思います。
その先は「金沢に行ってみたいな」とか「レンコンを食べてみたいな」と思っていただけたらうれしいですね。もし映画を見てくださった方が、スーパーで「加賀れんこんだ!」ってときめいていただけたとしたら、金沢でご協力いただいた方々への恩返しにもなるかなぁと思っています。ご協力いただいた金沢の方々、農家の方々に満足していただければというのが一番大きいですね。
「神野のお節介が周囲をかき回すけど、最終的には丸くおさめてしまう」と語る栗山さんの言葉を聞いて、神野恵子がどのようにレンコン農家の後継ぎ問題を解決するのか、映画館に足を運ぶのが心から楽しみになりました。
栗山さんが出演されている映画「種まく旅人〜華蓮のかがやき〜」は、3月26日から石川県内の各映画館で先行上映され、4月2日からユナイテッド・シネマ豊洲など全国で順次公開されます。
映画「種まく旅人〜華蓮のかがやき〜」
出演:栗山千明、平岡祐太、大久保麻梨子、木村祐一(特別出演)、永島敏行、綿引勝彦、吉野由志子、柴やすよ、駒木根隆介、小久保寿人、平山祐介
監督:井上昌典
脚本:森脇京子
撮影監督:阪本善尚
公式サイト:https://tanemaku-tabibito.jp/
配給:ニチホランド(C)2020 KSCエンターテイメント
ヘアメイク/奥原 清一、スタイリスト/ume、衣裳協力/ローベリイテ アンド シーオー/ドレスアンレーヴ、トゥイフェ/ドレスアンレーヴ