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流通なんと1%。国産ライチを熊本で栽培する若き匠とは

流通なんと1%。国産ライチを熊本で栽培する若き匠とは

熊本県南部に位置する芦北(あしきた)町で、マンゴーを栽培するハウスの片隅でライチを作っている果樹園がある。
国内流通分のわずか1%という国産ライチを栽培するきっかけや思いとは。
柑橘(かんきつ)農家の2代目として奮闘する田中雄大(たなか・ゆうだい)さんに話を聞いた。

ライチって日本でも作れるの?

ライチは海外産の冷凍品の流通量が圧倒的に多く、国内に流通するうち国産の割合はわずか1%と言われている。
鹿児島県・宮崎県・沖縄県など、温暖な地域のごく一部で生産されている。

そんな中、熊本県南部の芦北町でライチを作っている農家があると聞き、取材に出向いた。

マンゴーを見つめる田中さん

もともと柑橘を作っていた「たなか果樹園」の3代目にあたる田中さんは、熊本県内の農業高校を卒業した後、宮崎県内の農業大学校へ進学した。宮崎でより深く農業について学び、取り組む中で出会ったマンゴーやライチなどの南国フルーツに、すっかり魅了された。

マンゴーとライチを作っているハウス

「マンゴーもライチも単純にとてもおいしくて、いいな、自分の手で作ってみたいなと思ったのがきっかけです」と語る田中さん。

当時まだ学生だった田中さんは先代である父に相談し、段々畑の一角をならしてハウスを建てるところから南国フルーツの事業が始まった。東国原宮崎県知事のトップセールスで、宮崎のマンゴーが話題になっていた頃のことだった。

ライチ、マンゴーの現在とこれから

10年ほど経過した今は、ハウスの中いっぱいに大きなマンゴーが実っている。そんなハウスの一番奥に、たった1本のライチの木がある。マンゴーと同じように宮崎から持ち帰って、実験的に植えてみたものだという。

たった1本のライチの木

取材に訪れた5月上旬にはたわわに実をつけており、ちょうど食べ頃を迎えていた。

大ぶりのライチの実をその場でいただく

さっそく摘み取ると、イメージする冷凍ライチの実より一回り大きい。皮の色合いも鮮やかだ。

ライチには見えないほどの大きさ

皮をむくや否や、果汁があふれ出した。濃厚な甘みがあり、みずみずしく弾力のある果肉。
実そのものが大きいので、食べごたえもある。

現在では1本しかないライチの木だが、食べた人からの評判も良いので今後は少しずつ増やしていきたいと考えている。
まだまだ発展途上の熊本産ライチの、これからが楽しみだ。

ふるさと納税の返礼品にもなっているマンゴー

一方で、ハウス内の大半を占めているマンゴーは全部で120本ほどの木があり、大きな実があちこちについている。国内産マンゴーの先進地域である宮崎県に定期的に勉強に行き、より甘く大きな実をつけられるよう工夫を重ねている。

収穫が近づいたマンゴー。ネットをかけて自然に実が落ちるのを待つ

完熟したマンゴーは手で摘み取るのではなく、ネットをかけて自然に落ちるタイミングを待つ。人間の都合で収穫時期を決められない上に、毎日すべての木を見て必要な果実にネットをかけていくのは大変な作業だ。

それでも10年ほど経過して、自分でも納得のいくおいしいマンゴーができる確率が高まってきた。柑橘だけではなくマンゴーのような別の品種を作ることがリスク分散にもなっている、と思えるようになったという。

マイナーな作物に挑戦する理由

全部で3ヘクタールの敷地面積を持つたなか果樹園では、ライチやマンゴーなどの南国フルーツだけでなく、先代から引き続き柑橘の生産を行い、さまざまな取り組みをしている。
中でも特徴的な取り組みが「パインみかん」の開発だ。

独自開発した「パインみかん」。これは小さいものだという

ユニークな名前の「パインみかん」は、見た目にもパインの果肉のような鮮やかな黄色をしている。
食べ方は一般的なミカンと同じで、手で皮をむいて薄皮ごと食べられる。口に入れると、あふれる果汁とともに濃厚な甘みとすっきりした酸味がやって来る。食感はミカンだが、後味がまさにパインだ。

一般的なミカンと同じように、皮をむいて食べる

パインみかんは、もともと生産していた「はるか」に「黄金柑(おうごんかん)」を掛け合わせ、たなか果樹園で作ったオリジナルの品種だ。

マニュアルもなければ相談できる先輩もいないため、困ったことがあっても自分たちで解決するほかない。苦労もあったが、育種をしている知人の手を借りて開発するのはとても楽しかったという。

希少な果物を流通に乗せるには

手探りで細々と生産を続けてきたパインみかんは、販売ルートも農協に頼ることはできない。あれこれ模索する中で、何気なく農家仲間から紹介されたECサイト「豊洲市場ドットコム」において、バイヤーの目に留まったのがひとつの転機だった。
オリジナリティーがあり他のどこにもないパインみかんは、日本中の希少作物を見てきたプロにも響いたのだ。

開発中であるパインみかんの瓶詰め

現在では全国の産直品を販売する産直ECサイト「OWL(アウル)」にも出品しており、東京をはじめ全国各地のユーザーから注文が入るようになった。2月ごろが最盛期というパインみかんを通年で楽しめるよう、瓶詰めなどの商品も開発している。
独自品種を作り続け、加工にもこだわる田中さんは、時に「若き匠(たくみ)」とも呼ばれている。

南国らしい色づかいの段ボールは、少しレトロな雰囲気を取り入れた

マイナーな果物ゆえに出荷する段ボールにもこだわり、南国らしさ、パインみかんらしさが一目で伝わるようなパッケージデザインを模索したという。完成した段ボールは、さんさんと降り注ぐ熊本の強い日差しを受けすくすくと育った様子が目に浮かぶような、明るくポップなデザインになっている。

くまモンのシールを貼ったマンゴー

一方で、宮崎産のブランドイメージが強いマンゴーには、すぐに熊本産と分かるように熊本県のキャラクターである「くまモン」のシールを貼る。熊本産のマンゴーがもっと広く知られ、もっと多くの人が手にとってくれるようにという願いが込められている。

編集後記

柑橘のイメージが強い熊本県南部の芦北町で、さまざまな挑戦を続ける「たなか果樹園」の田中さん。
もっとおいしい南国フルーツを作りたい、この土地で生産された果物を広く知ってほしい。
そんな情熱が言葉の端々からあふれていた。若き匠と呼ばれる田中さんの挑戦は、まだ始まったばかりなのかもしれない。

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