将来性ある事業を通じて
企業イメージと地域活性化を向上させたい
東証一部上場企業であり、港湾運送を中心とした物流事業をグローバルに展開する業界大手の株式会社上組と、そのグループ会社として大手鉄鋼メーカーの構内作業を担う大分港運株式会社。この2社が大分県内での新たな事業展開を模索していた時に出会ったのが農業でした。当初は飲食業やレジャーホテル、介護施設、リサイクル業など、幅広い業種を検討していたと言います。その中から農業を選んだいちばんの理由は、上組グループ全体のイメージアップにもつながると考えたから。また、当時はまだ珍しかったフルーツトマトの生産・販売には、高い成長性と収益性が見込まれたというところも、大きな決め手になりました。
そして、株式会社サニープレイスファームを佐伯市に設立し、4年目には年間120トンを収穫。「試行錯誤を重ねてようやく利益を出すことができ、事業としてやっていく手応えをつかめました」と、取締役を務める藤澤さんは当時の気持ちを振り返ってくれました。それから現在に至るまで、収穫量はおよそ100〜120トンで安定的に推移。売上高は年間1億円前後になると言います。「温暖化などの影響で猛暑日が続くと、暑さに弱いトマトの栽培は難しくなります。そのため、今のところは毎年黒字を継続できている訳ではありませんが、そこは技術と経験をさらに積み重ねていくことによって改善できるはず。顧客ニーズは高いため、より多くの需要に応えられるように、生産性を高めたいと考えています」と、山田社長は語ります。より安定的に収穫できるようになれば、関東・関西でさらに市場を広げていくことができるため、事業としての伸びしろは大いに残されていると言えるでしょう。
企業参入における支援が豊富な大分県と連携。
新規参入を手厚くサポートする支援プロジェクトチームの存在
順調に事業を軌道に乗せることができたかのように見える株式会社サニープレイスファームではありますが、設立当初からすべてが順風満帆だった訳ではありません。会社設立時に農業経験者を新たに採用するということもなく、まったく未経験のメンバーたちが集まり、ゼロから農業を始めたのですから、それは至極当然のこと。そこで大きなチカラになったのが、大分県と佐伯市が連携して結成している支援プロジェクトチームです。同社が生産している低段密植栽培による高糖度トマトは、大分県農林水産研究指導センターが開発したもの。そのため、技術面の支援は大分県が全面的にバックアップし、地域住民の合意形成が必要な農地集積は佐伯市が担当。設備投資は県と市が補助。県と市の垣根を越え、相互に連携する体制があったからこそ、スムーズなサポートを受けることができたと言います。
佐伯市では現在も3社の新規企業参入が進行中で、県・佐伯市・JAが連携した参入支援プロジェクトチームが新たに「農業を始めたい」企業を手厚くサポートしています。
農業参入にあたっては、農地の確保・農地整備・施設整備・人材確保・栽培技術の習得・資金調達など複数の事業を平行して行う必要があるため大変ですが、プロジェクトチームでは営農開始までのタスクを見える化し、それぞれの担当者が情報共有しながら役割を果たすことでスムーズな参入を支援しています。それが、会社設立から10年が経った現在まで続いているというのですから、農業に参入する企業にとって、これほど心強く感じられる存在はないのではないでしょうか。
雇用の創出など、
地域社会への貢献が新たな企業価値に
まだ成長過程にあるとは言え、同社が事業を軌道に乗せ、農業参入を成功させることができた背景には、上組グループが持つ全国的なネットワークがあります。青果関連の取引先も多いため、収穫したトマトは基本的にすべてこうした取引先やその紹介先への直販となっているそう。独自の販売ルートを確保しているという点が、同社の何より大きな強みになっています。既存事業をいかに有効活用するかを考えることは、農業参入を成功させるためのキーポイントになるでしょう。
また、企業にとって農業参入することのもうひとつの魅力は、地域社会への貢献度が高いというところ。高齢化による耕作放棄地の増加や担い手不足は、農業が主要産業となる地域にとっては頭の痛い問題です。そのため、農業への企業参入は地場産業を盛り上げ、雇用を創出することで地域の活性化へとダイレクトに貢献できるもの。実際、株式会社サニープレイスファームは現在28名の従業員を雇用しており、非常に高い定着率を誇っています。その理由について、現場で活躍する三股さんは「繁忙期と閑散期の差が少ない周年栽培なので、残業はほとんどありません。また、水耕栽培は体力的な負担も少ないですし、土で汚れるような仕事もないだけに働きやすいんです。そして、何より自然相手というのが、余計なストレスがなくて気持ち良いんですよ」と言います。また、「やり方がひとつではなく、その年々の気候に合わせてトマトの育て方を工夫する必要があるという奥深さも、この仕事ならではの面白さ。試行錯誤の連続ですが、だからこそ『この子がトマトを食べるところ、初めて見た!』とお客様から言われたりすると本当に嬉しいんですよ」と、そのやりがいについても教えてくれました。
現在も正社員を募集しているということなので、もし農業に興味のある方がいれば、問い合わせてみるといいかもしれません。
このように事業性と地域貢献を高い次元で両立できる農業は、新規事業を模索する企業にとっては大きなメリットがあります。そして、そのための技術やノウハウがなくても、スムーズに始められる充実したサポート体制があるというところが、大分県ならではの魅力。これから新たに企業の未来図を考えるなら、検討してみる価値は十分にあるはずです。
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大分県農林水産部 新規就業・経営体支援課 企業参入支援班
〒870-8501
大分県大分市大手町3丁目1番1号 (大分県庁舎本館9階)
電話:097-506-3780取材協力
農業生産法人 株式会社サニープレイスファーム
〒876-0823
大分県佐伯市女島7589番地2
電話:0972-23-0775