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「地域農業協同組合」として生きる 合併しない道を選んだJAの戦略

窪田 新之助

ライター:

「地域農業協同組合」として生きる 合併しない道を選んだJAの戦略

「反主流派」──。JA越前たけふ(福井県越前市)の組合長・冨田隆(とみた・たかし)さんは自らのJAをこう呼ぶ。一方の「主流派」とは、同JAを除く県内の10JAが合併して、2020年4月に誕生したJA福井県。「反主流派」のJAがその道を選んだ理由や展望とは。

組合員反対の意向を受けて合併しないことを選択

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JA越前たけふが独自に開設した「JAコンサルティングセンター」

──JA福井県が誕生したのは1年以上前の話ですが、そこに参加しなかった理由について改めて教えてください。

うちで実施した意向調査で全組合員の64.8%、総代の68.5%が反対したからです。当時はメディアで「福井県JAグループに反旗を翻した」なんて書かれることもあったのですが、そういうわけではありません。反対が多かったのは、合併すれば、メリットよりもデメリットのほうが大きいと思われたからでしょう。

農協改革が始まる以前から、うちは独自の自己改革をしてきました。その結果、たとえば肥料は全農・経済連系より販売価格が2、3割安くなった。ガソリンは三重県四日市市のコンビナートからじかに仕入れ、安く提供できている。保険はほかのJAのようにJA共済だけを扱うのではなく、損保ジャパンやSOMPOひまわり生命保険の代理店にもなることで、商品の選択肢を広げた。

福井県JAグループが合併構想で示した自己改革よりもずっと先に行っている。合併すれば、こうしたメリットが失われるというので、反対が多かったわけです。

合併しないことを決めてからは、JA越前たけふ単独で2020年4月1日に「JAコンサルティングセンター」を発足させました。司法書士や税理士、中小企業診断士、弁護士ら8人の士業の方と2、3年の専属契約を結んでいるんです。このうち弁護士は東京地検や各地の検察庁で仕事をしてきた方。「主流派」が力で押したとしても、そこに違法性があれば問題になるわけです。

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JAコンサルティングセンターの相談室

北陸新幹線の駅名が「越前たけふ」になった必然

JAコンサルティングセンターでは士業の相談員による相談会を毎月複数日にわたって開催しています。対象者は組合員であるかどうかは問いません。相談は事前予約制で、毎回埋まるほど人気です。

──組合員に限定しないのはなぜですか?

JAが地域にとって欠かせない存在であると認識してもらいたいから。これからのJAにとって大事なのは、地域とともにあること。合併しなかったのは、それができなくなるからでもあります。最近面白かったのは、越前市で2024年に開業予定の北陸新幹線の駅名が「越前たけふ駅」に決まったことです。

──JAと同じ名前ですね。

これは偶然ではありません。うちが合併したのは26年前。じつはそのころから駅名を「越前たけふ」に誘導しようと地域活動をしてきました。たとえばうちの口座を利用している年金受給者が誕生日を迎えたら職員が胡蝶蘭(こちょうらん)を贈答に伺ったり、春と秋にはJA越前たけふ主催の祭りを開いたりしています。そうやってJAの名前が地域に定着してきました。だからこそJRが駅名を公募したら、「越前たけふ」という意見が圧倒的に多かったわけです。

地域に一層不可欠な存在になりたい

──地道な普及活動の成果なのですね。

これに関してもう一つ面白い話があります。うちのJAでは出資金が1口5000円。最大は1000口で500万円になります。最高額の出資者は2021年6月末で33人。この33人のうち正組合員が8人なのに対し、准組合員(農業者ではないがJAの事業を利用する組合員)が25人なんです。最高額の出資者に正組合員より准組合員の方が多いのは、うちのJAが地域に定着し、これまでの施策が地域に支持されたからだと思います。

──これからの農協経営の方向性とは。

この地域に一層欠かせないJAとなっていくことに尽きます。「地域農業協同組合」といえばいいのでしょうか。

この7月には私が代表理事となり、JAや猟友会、森林組合、自治体などとともに一般社団法人・越前市獣害防止対策ネットワークを設立しました。これまで全国にある同様の組織の目的は農作物被害を防ぐことでした。ただ、最近ではイノシシやシカ、クマなどが生活空間にまで侵入して、家屋被害や人的な被害までもたらしています。農産物も大事だけど、市民の生活も大事。二つをともに守りながら、「地域農業協同組合」として歩んでいきたいです。

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