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【秋まき新商品解説】暑さに強く、生理障害に強い。高い耐病性と作りやすさを併せもつ夏ダイコン「夏あおい」

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【秋まき新商品解説】暑さに強く、生理障害に強い。高い耐病性と作りやすさを併せもつ夏ダイコン「夏あおい」

秋まき野菜の新商品について、育種のプロである大手種苗会社・タキイ種苗のブリーダーさんに紹介してもらいます。第3回のおすすめ品種は「ダイコン」です。

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ダイコン生産の動向

夏秋どり品種として「夏の翼」を発表してから12年が経過しました。「夏の翼」の耐暑性と品質は多くの産地、生産者に評価をいただいています。 
しかし、ダイコンの生産現場を見れば近年の気候変動から安定生産はなお一層難しくなっています。一方で消費形態は中食需要が増加しており、加工・業務用品種へのニーズはさらに高まっています。

これらの状況から、タキイではさらに高レベルな耐暑性をもち、より長い期間安心して栽培、供給のできる品種を目標に育成を行ってきました。今回発表する「夏あおい」は栽培面において高温下で問題となる生理障害に特に強く、晩抽性と土壌病害のバーティシリウム黒点病の耐病性をもち、品質面では緑肉の発生が少なく、加工用に適した肉質をもっています。厳しい環境下での安定生産、安定出荷のためにぜひ「夏あおい」をお試しください。

「夏あおい」の特性

 

夏あおい

「夏の翼」(左)に比べ「夏あおい」(右)の首色は淡い緑色となり、加工業務での歩どまりも向上した

耐暑性、耐生理障害にすぐれる

黒芯症や赤芯症などの生理障害に強いため、高温期の栽培に適しています。肥大はじっくりしており、抽根部が比較的短いため、曲がり根の発生が少ない品種です。
草姿はコンパクトで葉勝ちになりにくいので収穫作業がしやすく、また葉軸がしなやかで折れにくいため、機械収穫にも適しています。

耐病性にすぐれ、作りやすい

高温期に問題となる軟腐病や土壌病害の萎黄病に強く、ジャガイモの後作で問題となるバーティシリウム黒点病にも強いので、安定した栽培、出荷が可能になります。

幅広い作型に対応

夏ダイコンとしては抽苔(ちゅうだい)が遅いので、冷涼地での早まき栽培、中間地・暖地での春まき栽培が可能です。

加工業務向け出荷に最適

肉質はかたく、緻密でツマなどの加工用に適しています。「夏の翼」よりも首色が薄く、内部が緑肉になりにくい品種です。

ダイコン栽培の3つのポイント

①適期播種を心掛ける

「夏あおい」は、ある程度の晩抽性をもっていますが、極端な早まきは抽苔や空洞症の原因となるので適期播種(はしゅ)を心掛けます。

②施肥量はやや多め

夏ダイコンとしてはやや多めの施肥が適します(「夏の翼」と同程度)。肥効が弱いと肩部の肥大が鈍くなるため、収穫まで肥料が切れない施肥設計とします。全量元肥を基本としますが、生育に応じて間引きの後に追肥を行いましょう。

③極端な密植栽培には適さない

草姿はコンパクトですが、肥大はじっくりしているため、極端な密植栽培には適していません。秀品率を向上させるため、通常からやや広めの株間で栽培することで品種特性が最大限に生かされます。

④保水・排水性のよい土づくりを

極端な乾燥や過湿条件下では、横縞(よこしま)症などの発生が懸念されるため、堆肥(たいひ)などの有機物を施用し、保水・排水性のよい土づくりを行うことが良品生産への必須条件となります。

「夏あおい」の生かし方

「夏の翼」で栽培が難しかった以下の時期や場所で栽培、出荷が可能になります。

①晩抽性と耐暑性を生かす

中間地・暖地6月どり、冷涼地8月どり作型において特性を発揮します。これらの時期はタネまき後しばらくは低温感応することで花芽ができやすく、抽苔の心配があります。一方で、生育後半は高温条件となり、黒芯症や軟腐病が問題になりやすい作型です。「夏の翼」では晩抽性が不足するため、栽培が難しい作型でしたが、「夏あおい」は晩抽性と耐暑性を併せもちますので、本作型での栽培が可能となりました。

②耐病性を生かす

「夏の翼」は土壌病害のバーティシリウム黒点病への耐病性をもちませんが、「夏あおい」は耐病性をもっています。発生が認められる圃場(ほじょう)においても栽培が可能となりました(ただし、菌密度が高くなると発生が懸念されるので、輪作を基本としてください)。

(執筆:タキイ研究農場 田中寛)

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