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反収75トンの衝撃 トマトで日本一の収量を叩き出した農業法人、労務管理システムを共同開発

山口 亮子

ライター:

反収75トンの衝撃 トマトで日本一の収量を叩き出した農業法人、労務管理システムを共同開発

10アール当たり75トン。大玉トマトとしては当時日本一の収量を、農場の運営を始めた初年の2015年に叩き出したのが、山梨県北杜市の有限会社アグリマインドだ。軒高7メートルのオランダ式ハウスは、害虫が侵入しにくく、中の環境をコントロールしやすい最新鋭のもの。今ではカゴメとの契約栽培で、高リコピンの中玉トマトを栽培する。2021年に施設栽培に適した労務管理システムをシステム会社と共同開発するなど、さらなる効率化を進める。

アジア初の温室で環境を高度にコントロール

トマトの茎の高さが3.5メートル、軒高は実に7メートル。連棟ハウスの短辺は130.5メートル、長辺は148メートルにもなる。ハウスの端にあるコリドーと呼ばれる空調室(空気を調整する部屋)を見ようと、トマトの列の間を100メートル以上歩きながら、「もう着くか」と何度思ったか知れない。無数のトマトの木がたわわに実をつけているさまは、壮観だ。1.9ヘクタールのハウスに、実に8万株が植わっている。

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明野町にある農場「明野菜園」の外観

ハウスは、アジア初のセミクローズド(半閉鎖型)温室だ。ハウス内の気圧が高い陽圧状態のため、害虫が侵入しにくい。コリドーで、必要に応じて外気も取り込みつつ、温度や湿度、二酸化炭素濃度などを最適な状態にした空気を作り出す。ファンでハウス内に空気を送り込み、チューブ伝いに空気が行き渡る。チューブはまんべんなく空気を行き渡らせるために、一定の間隔で穴があるといった工夫が凝らされている。

チューブ(エアホース)

トマトの木の下を走る丸くて大きなチューブから、調整された空気が送り出される

コリドーで作った空気で、ハウス内を狙った状態に保てるため、天窓が極端に少ない。ふつうはハウスの天井に大きな天窓があって、換気に使われる。ところが、アグリマインドのハウスに天窓は4列のみだ。

「一応天窓が付いているんですけど、ここで換気する量は、すごく少ない。従来型のハウスだと、周囲が完全な無風状態にあると、換気ができなかったんですよ。その点、ここはコリドーから空気を強制的に取り入れられるので、自分たちでコントロールできるわけです」
アグリマインド社長の藤巻公史(ふじまき・こうし)さんが解説してくれる。

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藤巻公史さん

65トンしかとっていない

「今は、10アール当たり65トンしかとっていない」(藤巻さん)
インタビューしていて、耳を疑いたくなるような言葉が飛び出してきた。国内のトマトの平均収量は、統計でみると10アール当たり約6トン(2018年度、農林水産省調べ)。一般的には10アール当たり15トンと言われているので、65トンでも、国内では十分にトップレベルの収量だ。ただ、10アール当たり75トンというアグリマインドのキャパシティーからすると、あえて65トンに落としていることになる。

なぜかというと、初年の収量が高すぎ、作業が追い付かなかったり、選果ラインの物理的な上限を超えてしまったりしたから。人手や、ハウス以外の設備のキャパシティーに収量を合わせるため、あえて収量の落ちる品種に切り替えた。カゴメとの契約栽培で、リコピン含有量が多く、付加価値のある高リコピントマトを生産する。

制御システム

ハウスの管理画面。1000以上の項目のデータがとられていて、自動やマニュアルモードで管理ができる

人手確保が課題でロボット化も検討

人手の確保は、多くの農業法人にとって最重要課題であり、アグリマインドも例外ではない。特に同社の位置する北杜市明野町は、市が大型の農業法人を何社も誘致した。どの法人も、北杜市や近隣の自治体から労働力を確保しようとするため、募集がバッティングして、人を集めにくいところがある。
解決策として、アグリマインドではさまざまな方法を試していて、ここではそのうち四つを紹介したい。一つ目は技能実習生だ。現在15人が働いている。

二つ目は社員を増やすことで、従業員60人のうち、11人が社員だ。
「ふつう、このくらいの規模の法人では、こんなに社員を採っていないと思います。やっぱりパートというくくりだと、人が集まりにくいところがあるので。経営上はきつい面もありますが、社員化して安定的な職を提供しようと、やっています」(藤巻さん)

三つ目は、他の農業法人との連携の可能性を探ることだ。同社をはじめ、北杜市に所在する農業法人16社が「北杜市農業企業コンソーシアム」(事務局・アグリマインド)を作っている。この場で、人の融通で協力できないか話し合っている。

「どうしても皆、ほとんど同じ時期が繁忙期になってしまうんですけど、うまく人を回せないかと考えています。コンソーシアムで派遣業務的なものをできるようにして、法人間を行き来できるようにするということも、構想しています」(藤巻さん)

四つ目は、ロボット化だ。最も人手の必要な収穫をロボットに担わせたいと、企業と組んで実証する。人による監視や無駄な作業を極力減らしたいと、ハウスの上からつり下げてトマトの生育を自動で撮影する“つり下げ型”の画像計測ロボット(「匂いを測るセンサー、農家が自作するIoT 研究者が語る最新のスマート農業」参照)なども導入していて、効果を実証中だ。

選果場

選果場

施設園芸向け労務管理システムが6月にリリース

労務管理はこれまで、手書きの日報の情報をエクセルに転記していた。データの打ち込みに毎日2時間くらいかかっていて、1週間で日報の厚さが数センチになっていたのだが、2021年から労務管理システムを導入した。

「既存の労務管理システムの導入も考えたんですけど、施設園芸用の製品が充実している海外製のものだと言語の壁があったり、設定項目が複雑で、なかなか使いこなせないところがありました。システムによっては、管理者側に分かりづらかったり、逆に作業者が使いづらかったりします。管理者と作業者の両方が、しっかり使えるものを作りたかったんです」

藤巻さんはこう考え、農業経営支援サービス「Agrion(アグリオン)」を提供するライブリッツ株式会社(東京都品川区)に声を掛ける。施設園芸に特化した使いやすいシステムを、アグリマインドを実証の場にして同社に開発してもらった。2021年の年明けから実証を始めて、6月には「Agrion施設園芸」としてリリースしている。

勤怠管理から作業計画、日々の作業記録まで、タブレットに記録することで、施設全体のデータをクラウド上で一元的に管理できる。導入から間もないため、実際どの程度の効率化になるかは、これから分かる。

「作業記録を紙で書くよりも、タブレットで入力した方が、かかる時間が減るんじゃないか。これまでは、最低でも翌日以降でないと、集計結果や分析結果が見られなかったんです。それがリアルタイムで現状が見えるようになり、経営のプラスになるんじゃないか」
藤巻さんはこう話し、集計や分析が自動で、しかも即時にできることに期待している。

「施設園芸現場の『あったらいいな』をカタチにしました」

Agrion施設園芸の製品ページでは、こううたわれている。サービスは、ユーザーを募りながら改良を重ねていくそうで、今後に注目したい。

アグリマインド

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