有機農業とはどんな農業?
そもそも「有機農業」とは何を指すのでしょうか。
有機農業は、日本では「有機農業の推進に関する法律」で定義されています。
有機農業の定義
簡単に言うと、以下の3点を満たして生産する農業を指します。
①化学的に合成された肥料および農薬を使わない
②遺伝子組換え技術を利用しない
③環境負荷をできるだけ減らして生産する
なお、「有機農産物」という似た言葉もあり、これは農産物自体を指します。有機農産物を意味する「有機○○」「オーガニック○○」などの表示のためには、上記に加え、さらに厳しい基準である有機JAS認証が必要です。
有機農業=無農薬ではない
有機農業と聞くと、無農薬と思う人もいるかもしれません。
もちろん農薬を使わない人もいます。しかし、有機農業は、あくまでその定義に沿えば「化学的に合成された肥料や農薬を使わない」ということ。そのため、自然由来の農薬なら使うことができます。
関心の高まる有機農業
有機農業は近年、関心が高まっています。
農林水産省の資料によれば、2009年から2017年に日本の有機食品市場規模は約1.4倍の1850億円になったと推計されます(※1)。
全国農業会議所の「新規就農者の就農実態に関する調査」によれば、新規就農者の約1/4が有機農業に取り組んでいます(※2)。
この関心の背景にはどのような理由があるのでしょうか。
(※1)農林水産省「有機農業をめぐる事情(令和2年)」
(※2)一般社団法人全国農業会議所「新規就農者の就農実態に関する調査結果(平成28年度)」
有機農業のメリット
では、以下、有機農業の代表的なメリットを4つ紹介します。
信頼感の高い作物を生産できる
有機農業の最大のメリットは信頼感の高い作物を生産できることではないでしょうか。
「安心できるものを食べたい」と考える消費者には「化学物質を使って栽培してほしくない」という意識もあり、この点で「化学的に合成された肥料および農薬を使わない」有機農業は魅力的でしょう。
生産者も同様で、農林水産省の「有機農業を含む環境に配慮した農産物に関する意識・意向調査」によると、生産者が有機栽培などに取り組む理由も「消費者の信頼感を高めたい」という回答が66%と、もっとも高くなっています(※3)。
(※3)農林水産省「有機農業を含む環境に配慮した農産物に関する意識・意向調査(平成28年)」
環境に配慮した農業ができる
環境に配慮しながら生産できることもメリットでしょう。
有機農業は、化学的に合成された肥料や農薬を使わず、環境負荷をできるだけ減らして生産する点で、自然にやさしい農業と言えます。
化学的に合成された肥料や農薬を大量に使ったり、誤った使い方をすると、土壌や大気、河川の汚染を招く恐れがあります。これらを使わないことで、生物の多様性を保全することにもつながったという報告もあります(※4)。人間にも自然にも配慮した農業と考えられる点で、有機農業には大きなメリットがあります。
(※4)農林水産省「環境保全型農業をめぐる事情(平成27年)」より、兵庫県・豊岡市の事例
慣行栽培作物との差別化ができる
ビジネスの観点からも有機農業にはメリットがあります。
先述のとおり、生産したものを「有機農産物」と表示するためには有機JAS認証を得る必要があります。有機JAS認証には厳しい基準をクリアする必要があるため、有機農産物を売り出すこと自体が丁寧な生産の証でもあり、消費者へのアピールにつなげることもできます。
有機農業に取り組む生産者は全国で0.5%未満に過ぎません(※5)。化学肥料や農薬を使った慣行栽培作物との差別化もでき、目立った存在として売り出していくこともできるでしょう。
高い付加価値をつけることもできる
また、有機農業に取り組む生産者が圧倒的に少数である一方で、消費者の関心は高まっている状況です。そのため、高い付加価値をつけることも可能でしょう。2015年の農林水産省の「有機農業をめぐる事情」に関する調査では、「1割高までなら購入したい(購入している)」という人が約45%、「4~5割高以上でも購入したい(購入している)」人も約2.3%います。
早く取り組むほど有機農業トレンドに先乗りできる
農林水産省は「みどりの食料システム戦略」にて、2050年までに有機農業が農地に占める比率を25%に高める目標を掲げました。
現状は有機農業を行う農地は0.5%未満であり、今後大きく後押しされると考えられます。
いち早い取り組みは、関心の高まる有機農産物マーケットで先行することも期待できます。
有機農業のデメリット
なぜメリットが多い有機農業に取り組む生産者が少ないのでしょうか。デメリットについても以下に挙げます。
「オーガニック」「有機栽培」を名乗るには有機JAS認証が必要
第一に、認証が厳しいという実態があります。
有機農業を対外的に示すものの一例が「有機JAS(ジャス)マーク」ですが、このマークを使用するには、農林水産省の登録認証機関の検査で、一定基準に沿うことが認められなければなりません。書類審査や実地検査があり、認証費用もかかるため、負担は小さいとは言えないでしょう。
例えば、化学肥料・農薬を使わないなどはもちろんのこと、まわりから使用禁止資材が飛んでこないようにしたり、播種または植付け前の2年以上、有機肥料で土づくりした田畑で生産したりする必要があります。
基準を満たして、登録認証機関に認められなければ「有機○○」や「オーガニック○○」などの表示はできません。
病害虫・雑草対策が難しい
病害虫や雑草の防除対策が難しいという点は、有機農業では無視できない課題です。
例えば雑草を取り除くために使用できる農薬は限られ、手作業で除草せざるを得ないこともあるでしょう。
化学肥料・農薬を使わないため、その分のコストは下がったとしても、代わりに作業時間は増えてしまうことが大半です。
また、取り組む生産者が少ないために、周囲の生産者にノウハウを聞くことが難しいこともあります。さらに有機農業は栽培技術が確立されていないこともあり、教えてくれたとしても勘と経験によるノウハウに過ぎないという可能性もあります。
収量が少ない
手間がかかるわりに、慣行栽培に比べると収量が上がらない傾向があります。
一例として、先の農林水産省の資料では、露地にんじん作での有機農業経営と慣行農業経営の比較事例を挙げています(上表参照)。
これによると、10アールあたりの単収は慣行農業が3986キロに対し、有機農業は3000キロと、3割ほど下がります。
キロあたりの単価は有機農業のほうが約1.33倍も高いものの、作業時間も多く、結果的に時間あたりの所得はほぼ変わりません。
特に経験の浅いうちはノウハウも少なく、歯がゆい思いをしてしまうことも不思議ではありません。
また、収量や品質を安定させることも難しく、計画生産がしにくいという一面もあるでしょう。
販路が限られる
収量が上げづらいため、大きなロットが確保しにくく、販路は限定されてしまいます。結果的に、有機農業で生産された農産物の販路は消費者への直接販売が多い傾向にあります。これにより、販路を自身で整備する手間はかかるでしょう。
ただし一方で、直接販売ならば自身で価格を決められたり、消費者と接しやすくなる点ではメリットだと考えられるかもしれません。
有機農業に取り組む方におすすめ BLOFware®.Doctor
これらのデメリットを見ると、有機農業はそもそも栽培が難しく技術が体系化されていないことで勘や経験に頼りがちなことに加え、経験やノウハウが少ないために収量も上げづらく、相談できる相手も少ないという一面も見えてくるのではないでしょうか。
こうした有機農業の実践を支援すべく、株式会社ジャパンバイオファームは、営農支援クラウドサービス『BLOFware®.Doctor』 を提供しています。
『BLOFware.Doctor』は、高品質・高栄養価・高収量な農作物の生産を、“土づくり”に着目して科学的・論理的に生産するBLOF®(ブロフ)理論(※6)に基づいて、簡単に実践できるクラウドサービスです。
施肥設計や圃場管理、肥料管理、営農作業記録など、有機農業を進めるうえでのサポート機能を持っています。
効率的に有機農業に取り組みたい人にとって、大きなサポートになることでしょう。
(※6)アミノ酸、ミネラル、土壌の3つの分野に分けて科学的に営農することで、高品質・高栄養価・高収量・安定生産を実現する有機栽培技術
まとめ
有機農業は、環境に配慮して信頼感の高い作物を生産でき、ビジネスの観点でも消費者に強くアピールできるというメリットがあります。一方、認証には厳しい検査がありますし、栽培技術が確立されておらず勘と経験に頼る部分は大きいために、収量や品質を安定化させることが難しいというデメリットもあります。
こうしたデメリット解消のためには、勘と経験に頼る栽培から、体系的な理論と技術に裏付けられた栽培への移行が重要だと言えます。
有機農業は、生産者にとっても消費者にとっても、今後ますます関心の高まる分野であることは間違いないでしょう。先述のとおり、農林水産省は有機農業の農地の比率を上げることを目標としており、今後は行政による補助金の拡充も検討されます。
栽培の難しさをサポートするためのサービスも増えてきています。新しい取り組みとして、検討してみてはいかがでしょうか。
次回は「有機」「オーガニック」を名乗る上で必要な「有機JAS認証」について、基準や取得メリットについて解説していきます。
参考サイト一覧
農林水産省「有機農業をめぐる事情(令和2年)」
一般社団法人全国農業会議所「新規就農者の就農実態に関する調査結果(平成28年度)」
農林水産省「有機農業を含む環境に配慮した農産物に関する意識・意向調査(平成28年)」
農林水産省「環境保全型農業をめぐる事情(平成27年)」
お問い合わせ
株式会社ジャパンバイオファーム
〒396-0111
長野県伊那市美篶1112
『BLOFware.Doctor』の詳細はこちら
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