日本人の3人に1人が該当 「浮き指」って何
今月の特集は「農家って休めるの?~農家の働き方改革~」。経営改革事例はいくつか取り上げているが、文字通り体を休める方法についての話題がまだ無かった。
「百姓」といわれるように、業務は多岐にわたり多忙な生産者。彼らの疲れを癒やし、できれば仕事の時間に“ながら”で活用でき、気軽に取り入れられるアイテムがないものか──。筆者はインターネットの大海をさまよっていた。
そんなとき社内の若手営業マンから、「最近、質の良い靴の中敷きが人気らしいです。体を支えてくれるので、力仕事に従事する方にも人気らしいですよ」と情報をもらった。ナイス! とんとん拍子でインソールメーカー「テンシャル」の本社にお邪魔することになった。
まず、知りたかった「インソールを使うことの具体的なメリット」を聞いた。
そこで逆質問されたのが、「普段、足の指って使えていますか?」。不意を突かれたが、あまり意識したことがないと正直に伝えた。実はそういう人がほとんどなのだという。
「日本人の3人に1人が、足の指を地面につけずに歩いてしまう『浮き指』という症状を持っています。浮き指で歩くと、指の付け根やかかとに重心が偏ります。上半身が前傾姿勢になりやすく、それを支えようとして、肩こりや腰痛につながってしまいます」と、教えてくれたのはセールス部門統括の木林毅(きばやし・つよし)さんだ。
崩れたバランスをかばおうとしたり、軸を戻そうとしたりする無意識の動きによって、腰やひざに負担が掛かり、体の痛みを引き起こすのだという。
日常生活で、足の指の動きを意識することは少ない。が、ランニングなどさまざまなスポーツでは重要視される部位だ。そういえば、筆者もヨガ教室でバランスポーズを取るときに、「足の指で地面をわしづかみして!」と先生から言われたことを思い出した。確かに体軸が安定する感覚を得たことを覚えている。
靴の中に入れるだけで、無意識にでも足の指を正しく使える状態に導いてくれるのがインソールだ。
インソールを入れることで足の裏と地面が接する面が増え、靴の中で指が浮かなくなる。体の重心が適切な位置に戻り、バランスが整い安定するのだという。重心が正しい位置に戻れば、同じ動作でも体に掛かる負担が大きく軽減される。
TENTIALのインソールは、足の甲の真ん中から外側の辺りに存在する「立方骨」を押し上げ、指先を正しく使えるようにしてくれる。「足の裏の外側から支えることになるので、より高い安定感が得られます」と木林さん。インソール使用前後の力の入り方の変化が分かる実験映像があるので見てみてほしい。
また、自然なアーチを描く土踏まずは、運動時の着地の衝撃を和らげるクッションの役割をするが、このアーチが崩れるとクッション性が失われてしまう。これを正しい形に保つのもインソールの役目だという。
腰痛、背中痛、膝痛、足・かかとの痛み、外反母趾(ぼし)、扁平(へんぺい)足といった症状に悩んでいる人や、立ち仕事や力仕事の多い人に特におすすめだそうだ。
インソールは農業にも効くのか?
それでは、肝心の農作業に効果はあるのだろうか?
作物によって差はあるが、農家のとることが多いポーズを伝えた。
・前傾、前かがみ状態での作業
・しゃがみ姿勢での作業
・重量物の取り扱い
・上向きでの作業(収穫・剪定<せんてい>など)
木林さんからは、「全ての動作で効果を出せると思います」という答えが返ってきた。
「例えば、前傾姿勢は足の指を使うことでより安定します。重いものを持つ場合は、かかと重心になってしまうと力が入らないので、指先を意識することが重要です」。
あらゆる動作において体幹を意識することが、疲れの軽減につながると言ってよさそうだ。
TENTIALのホームページには、農家によるユーザーインタビューも掲載されている。
▼農業のイメージを革新し、選ばれる仕事になるために
高価格の理由とは?
気になる値段だが、いちおしの「TENTIAL INSOLE(テンシャルインソール)」は、8778円(税込)と「他社製品と比べて値段が張る」と木林さんは言う。
その理由は、高級素材とされる「ポロン」というクッション材を全面に使っていることにある。一般的に、低反発の素材は体を柔らかく包み込む反面、力を入れづらいといった運動性の低さが特徴だ。逆に高反発素材を使った靴底やインソールは、踏み込みやすく運動に向いているが疲労しやすいとされる。トレッキングシューズの靴底を想像すると分かりやすいだろう。この「ポロン」は両方の特性を持つため、柔軟性と疲労軽減効果、運動性も兼ね備えている「いいとこ取り」なのだという。
ゴルファー向けなどカテゴリーは全4つで、2970円(税込)から試せる。自分の足の大きさに合わせ、カットして使用し、対象商品は30日以内であれば使用後でも返品できる。気になる耐久性だが、半年程度が交換の目安だという。
体の痛みを自覚した際に、テーピングで補助することが多いが、これでは根本の解決策にはならない。体幹を鍛えながら疲れを予防し、手軽に本来の身体能力を引き出すアイテムとして、試し甲斐がありそうだ。「欧米ではフットケアは一般的。日本はまだまだ伸びしろがある」(木林さん)と、市場のポテンシャルにも期待する。ユーザーは20~50代の幅広い年代で、最近では成長期の小学生の利用事例も増えているという。
日々酷使している肉体。手軽にできるケアでいたわりつつ、足元から更に高いパフォーマンスを追求してみては。