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農業界のココ・シャネルになりたい 女性だけが働く施設園芸の経営者

窪田 新之助

ライター:

農業界のココ・シャネルになりたい 女性だけが働く施設園芸の経営者

大分県国東(くにさき)市のウーマンメイク株式会社は全国でも珍しい女性だけが働く農業法人。一代で創業した社長の平山亜美(ひらやま・あみ)さん(32)は「農業界のココ・シャネルになりたい」と語る。20世紀を代表するファッションデザイナーにあこがれるその思いとは。

従業員の半数が育児と両立

ウーマンメイクの園芸施設は、国東半島の東端にある大分空港から車で10分強の距離に立地している。隣接する事務所を訪ねると、平山さんが玄関前で迎えてくれた。

事務所は今年建てたばかり。応接室に案内してもらうと、ちょうど仕事を終えた作業着姿の人たちと行き会った。男性の顔は一切見当たらない。26人いる従業員はすべて女性で、年齢は26歳から69歳まで。従業員の半数は子育て中だという。

平山さんがウーマンメイクを創業したのは2015年。翌年から30アールの施設でリーフレタスの水耕栽培を開始した。事務所と同じく今年増棟した50アールの施設では、リーフレタスだけでなくホウレンソウも水耕栽培している。
年商は2016年度に4200万円だったのが2020年度には7200万円と、ずっと右肩上がり。創業してからずっと黒字だ。一代でこの会社を築いている平山さんはなぜ農業の世界に入ったのだろうか。

ゆっくり時間が流れる場所を求めて

大阪生まれの平山さん。大分県との縁は別府市にある立命館アジア太平洋大学に入学してからだった。卒業後は関西に本社がある大手企業に就職するものの、1年で退職する。
「電車通勤で往復2時間かかるうえ、帰り着くのは夜10時が当たり前。こんな生活をずっと続けるのかと思うと、しんどくなって……」

転職する場所として思い浮かんだのは、大学時代を過ごした、「時間がゆっくり流れている」という別府市。人材募集をしていた化粧品販売会社に職を得た。
勤続年数は2年だった。退職した理由は、その会社では産前産後の休業が取れないと感じたから。そのころ妊娠しており、出産後はシングルマザーになることが決まっていた。

育児と両立できる仕事を探して

育児と両立できる仕事はないだろうか──。そう思いながら職を探すうちに、国東半島に「道の駅」をつくろうと計画する女性経営者らと出会い、その活動に協力することになった。道の駅の農産物直売所では品ぞろえが多いほうが集客数も増えることから、自ら野菜を作ることになった。

「その時は出産も控えていたので、畑仕事をしながら野菜の収入で生活できるのではと思っていました……」と平山さん。

出産後にビニールハウスでスナップエンドウを作り始めた。ただ、生まれたばかりの女児を抱えながら、一人で農作業をこなすのは想像以上に大変だったという。

「日曜日や祝日は託児所は休み。でも天候は関係ないじゃないですか。雨が降れば子どもを抱えたまま、ハウスに向かわなければならない。それまで作物を栽培した経験すらなかったので、すぐに病気にやられるし。防除するにも自分の身長より高いところにかけるから、液剤がシャワーのように自分に降りかかってくるし。売り上げの面でも生活していける水準に達しなかった。いずれ女性と一緒に働くにしても、まずは作物を選ばないといけないなと痛感しました」

「稼げる農業」でないと続かない

平山さん

リーフレタスを栽培する施設を経営する平山さん

そんな時に出会ったのは県内の農業法人・上原農園の会長。「稼げる農業をしないと続かないよ」と助言を受けた。では、稼げるとは何か。会長はその見本となる各地の農業法人に平山さんを連れていってくれた。そのうちの一つである宮崎県の農業法人を参考にして、同じくリーフレタスの水耕栽培を始めることにした。そのための園芸施設ができあがったのは前職を辞めてから約2年。300万円ほどあった貯金は最後には底をつきかけていたという。

「未経験の私でも何とか始められたのは、上原農園さんはじめ周囲のサポートがあったからですね。それに時代も良かった。少し前であれば、女社長が銀行からお金を借りるというのはできなかったと思うんです。でも、私が会社を立ち上げたころに女性活躍推進法ができるなど、社会で女性の活躍を応援しようという雰囲気になっていました。企業に子どもを連れていっても、いやな顔をされたことはないですね」(平山さん)

女性が自由に活躍できる場をつくりたい

「CHANEL」

応接室に飾られている「CHANEL(シャネル)」という文字が書かれたアートパネル

一通り取材した後、従業員の希望を聞いて設計したという事務所の更衣室や休憩室などを案内してもらった。再び応接室に戻ると、壁に「CHANEL」という文字が書かれたアートパネルが飾ってあることに気づいた。「シャネルのブランド品は持っているわけではないけど、ココ・シャネルの考え方にはあこがれているんです」と平山さんがいう。フランス出身の20世紀を代表するデザイナーのどこが平山さんをひきつけるのだろうか。

「ココ・シャネルは女性の活躍をファッションで表現してきた方。20世紀初頭のフランスでは女性はコルセットで腰回りを縛って、ドレスを着ていたんです。でも、そんな格好では乗馬ができないので、ココ・シャネルは女性もズボンをはくことを提案した。それは改革なんですよ。ファッションを通じて女性を自由にしてきたんです。私はおいしい野菜を作ることを第一にしながら、仕事を通じて女性が自由に活躍できる場もつくりたいという思いを強く持っています。農業はその思いを実現するにはとても合っている仕事じゃないですか」

平山さんのそんな思いは職場の各所に表れている。次回は女性が働きやすい職場づくりについて紹介したい。

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