しっかり怖い! 仮想現実(VR)で事故体感、農作業での死亡事故を防げ|マイナビ農業
マイナビ農林水産ジョブアス 10/20OPEN 先行登録キャンペー農林水産 マイナビ農林水産ジョブアス 10/20OPEN 先行登録キャンペー農林水産 閉じる

マイナビ農業TOP > 農業ニュース > しっかり怖い! 仮想現実(VR)で事故体感、農作業での死亡事故を防げ

しっかり怖い! 仮想現実(VR)で事故体感、農作業での死亡事故を防げ

しっかり怖い! 仮想現実(VR)で事故体感、農作業での死亡事故を防げ

農作業での死亡事故発生数は、交通事故や建設現場での事故を上回る――(※)。そんな衝撃的な事実を聞いたとき、どのような感想を抱くだろうか。「恐ろしい」「怖い」という素直な感情こそが、事故を未然に防ぐ鍵となる。
農作業を始める前に「ちゃんと怖がる」ため、VR(バーチャルリアリティー)を活用して、現場で起き得る作業事故を体験する研修動画がリリースされた。(※人口10万人当たりの死者数で比較。農林水産省調べ)制作を担当した企業に効果的な活用法を聞いた。

リアリティにこだわり臨場感を演出

乳牛を飼育する、とある家族経営の牧場。
ニット帽がトレードマークの若い酪農家は、いつものように牛舎の掃除に精を出す。少し寝不足なのが気がかりだ。牛舎は牛が自由に歩き回れるフリーストール形式で、牛用のベッドが1頭ごとに金属のパイプで簡易的に仕切られている。男性は次の作業の段取りを考えながら、シャベルを使ってストール内のベッドメイキングを続ける。

すると突然、興奮した牛が暴れ出す。衝撃で男性は転倒、パイプに頭を打ちつけて流血してしまった。「まいったなぁ…」。血の付いた手のひらを見つめて呟いたそのとき、牛は荒々しくひと鳴きし、力任せに男性に体当たりしてきた。男性に逃げ場を与えることなく、2回、3回……と突進を続ける牛。こちらにも激突の衝撃が伝わってくる――。

これは、畜産現場で発生しうる事故をVRで体感する、研修用動画の一場面だ。
農林水産省が企画し、2021年6月に配信を開始。畜産業向けITサービスなどを提供するNTTテクノクロスが、研修用VRコンテンツ制作の実績があるNTTラーニングシステムズと共同で手掛けた。

頭を上下左右に動かしてみると、視野角が250度まで広がるため、まるでその場にいるかのような臨場感が味わえる。近づいてくる牛を避けようと思わず体を動かしたり、「わっ」と声を上げたりしてしまう。

スマートフォンをはめたVRゴーグルを着用し、3D映像を視聴する様子

同社のデジタルツイン事業部理事・副事業部長の櫻井義人(さくらい・よしと)さんは、「現場を知る生産者の方に違和感がないよう、リアリティにこだわった」という。現場からアドバイスをもらいながら、福島県にある農水省管轄の家畜改良センターで撮影を行った。
畜産のほかにも水産業や林業の現場向けなど、4つの業界に関する映像計6つを制作した。農水省大臣官房政策課の今井彰子(いまい・あきこ)さんは、「畜産の担当職員が『畜産動画の牛の毛の質感が予想以上に良かった』と話していました。どの映像も事故の状況を想定したリアリティのある映像に仕上がっていると思います」と太鼓判を押す。

ショックで正しい作業手順を定着

特筆すべきは視聴の手軽さだ。専用のアプリをダウンロードしたスマートフォンをVRゴーグルにはめて再生、頭に装着すれば3D映像が簡単に視聴できる。ゴーグルは家電量販店などで、2000~3000円程で入手できる。最近は100円ショップでも販売されているようだ。

VRゴーグル

視聴に必要なVRゴーグル。2画面で再生される動画をゴーグル越しに見ることで、立体感や没入感を体感できる

2D映像にはなるが、ゴーグルやアプリなしでも動画の視聴は可能。これでも充分恐怖は伝わる。私事だが事前にYouTubeから視聴した筆者は、自ら取材時にVRを体験させて欲しいと申し出ながらも、前夜まで憂鬱だった(特に、丸のこに巻き込まれる林業の事故映像が痛ましい)。しかし臨場感のある映像にショックを与えられたからこそ、後半に流れる事故予防のための正しい手順説明がしっかりと記憶に植え付けられた。暴れる危険のある牛には目印をつけておく、ヘルメットなど保護具は着用するといった、現場で共有して習慣化すべき具体的な対策が学べる。

小規模農家、コロナ禍での活用も意識

農水省の調査によると、農作業事故による死亡者は調査を開始した1971年で364人、2019年は281人に上った。農業就業人口の減少に伴い減少傾向にはあるが、就業人口10万人当たりの死亡者数は建設業など他産業よりも大幅に多く、交通事故による死亡者数をも上回る。

農業現場の改善が遅れていることの背景には、家族経営の農家が多く、事故が個人の責任とされてきたことなどがある。農業の法人化が進む今、他産業と同水準の対策が求められるはずだ。今井さんは、「事故は自分にも起こり得ることとして捉え、生産者自身でできる作業安全対策にしっかり取り組み、行動を変えていくことが大切です。身近なシチュエーションでの事故事例を見ていただくことで、事故の発生を自分ごととして捉えてもらうきっかけになれば」と話す。

NTTテクノクロスのメンバー

左からNTTテクノクロスの坂本さん、江崎(えさき)さん、櫻井さん

コロナ禍により集合型の研修の開催が難しい、また小規模経営のために大々的な教育研修は行えないという生産者にも取り入れやすい。同事業部第二ビジネスユニットマネージャーの坂本敏哉(さかもと・としや)さんによると、「技能実習生として来日している外国人スタッフにも、映像を通すことで作業の注意点を伝えやすい」というメリットもある。

坂本さんは、「座学研修と実地ですべき対応のギャップは生まれがち。よりリアルな3D教材を通して事故の怖さを体感頂き、予防の重要性を再認識して作業安全に活かしてもらえれば」と効果を期待する。

アプリのダウンロード用リンクや詳細は、下記ページから確認できる。不慮の事故から命を守るための一歩として、すぐにでも試してみて頂きたい。

作業安全事故体感映像

関連記事
【動画つき】死亡事故のリスクが潜む、トラクターの危険を体感!
【動画つき】死亡事故のリスクが潜む、トラクターの危険を体感!
農林水産省によると、2017年の農作業の事故による死亡者数は304人。前年より8人減少したものの、依然として多くの方が亡くなっているのが現状です。中でも、農業機械作業による死亡者数は211人で全体のおよそ70%を占めています。なぜ事…
交通事故より多い! 注意一秒ケガ一生、農作業事故を減らすためにできること
交通事故より多い! 注意一秒ケガ一生、農作業事故を減らすためにできること
農業でありがちな事故は何なのでしょうか? 米・野菜や果樹の生産から酪農まで、農業をする人の中でも特に始めて5年以内の人に向けて、事故の傾向とその対処法などを専門家に聞きました。ご自身の安全対策にはもちろんのこと、農業法人…

シェアする

  • twitter
  • facebook
  • LINE

関連記事

タイアップ企画

カテゴリー一覧