有機JAS認証取得の流れ
有機農産物のJAS認証を取得するためには、前提として農業経験が原則3年以上あり、JAS規格の基準にクリアしていることが必要です。その上で「有機」や「オーガニック」と表示できる「有機JAS認証」認定の申請ができます。

申請の流れ。農林水産省「はじめての人のための有機JAS規格」を参考にマイナビ作成
①申請書類の作成、提出
農林水産大臣が登録した登録認証機関に認証申請書を作成、申請します。
②書類審査
登録認証機関は申請書類を受理後、登録認証機関が指名した検査員が申請書類の記載内容が認証基準に適合していることを確認するために書類審査を行います。
審査書類の内容が認証の技術的基準を満たしていると判断された場合、または請求した不足事項が実地審査の時期までに改善されることが見込まれる場合、次段階の実地審査に進むことができます。
③実地検査
圃場や保管倉庫などが認証基準に適合していることの確認、及び申請書類の記載内容が事実に即していることなどを確認するため、登録認証機関の検査員が圃場や保管倉庫などに出向いて実地検査を行います。検査では実際の作業手順や管理状態などが確認されます。
実地検査の結果、改善・不足事項が確認された場合は、必要な対応が是正指示書で通知されます。その場合は、指摘された箇所を改善し追加提出を求められた書類を速やかに提出します。是正が完了された後に、判定が行われます。
④判定
登録認証機関に設置されている判定委員会において、検査員から提出された書類審査及び実地検査の結果などを基に、認証基準に適合しているか否かについて最終的な判定を行います。
⑤認定証の交付
判定結果が適合と判定されれば生産行程管理者として認証され、認証機関から認定書が交付されます。
有機JAS認証取得にかかる金額
取得費用は全国一律ではなく、それぞれの登録認証機関ごとに違います。検査までの費用を手数料一式としてまとめている機関もあれば、認証申請料、検査料、判定料などと費用を細かく分けて請求する機関もあります(表1参照)。また、検査料は圃場面積や圃場の数によって変動する機関が多いです(表1、2参照)。実地検査の際、検査員の移動にかかる交通費や宿泊費の支払いも必要な場合があるので、まずは見積を取得して総額を確認すると良いでしょう。
表1 認証機関Aの例合

※上記料金に交通費の実費が加算。プラス宿泊を要する場合は1名1泊につき15,000円
表2 認証機関Bの例

※上表は認証手数料及び年次調査手数料のみ。交通費、宿泊費及び日当は別途請求
有機登録認証機関の選び方
農林水産省によれば、JAS規格の認証を行うことができる登録認証機関は2021年8月現在、国内52機関、海外17機関の合計69機関があります。概ね各都道府県に1つずつあり、機関によっては審査対象とする品目や生産者の居住エリアを制限している所もあります。
初めてのチャレンジならJAS規格の基礎からレクチャーしてくれる機関がおすすめ
申請書の記載にあたっては、有機JAS規格や認証の技術的基準について熟知しておかなければならず、栽培記録などの細かな資料も必要です。不備があれば書類審査段階で不適合になり、圃場検査には進めません。自己流の有機農法では書類審査をクリアできないケースも多いので、初めてチャレンジするのであれば、有機JAS規格を基礎からレクチャーしてくれる機関がおすすめです。また、各機関のホームページには、認証事業者一覧がありますので、そこから各機関の得意とする認証の種別が把握できます。
とはいえ、どこの機関を選んだらいいのかまったく見当がつかない場合は、JAS制度の普及に努める「日本農林規格協会」にアドバイスを仰いでみるのもよいかもしれません。
一般社団法人日本農林規格協会(JAS協会)
コストが気になる場合は、圃場近くの機関や自治体の支援制度をチェック
審査には実地検査が必要ですので、圃場までの検査員の交通費や宿泊費も負担しなければなりません。その費用も考慮すると、検査費用が多少高かったとしても、一般的には圃場近くの機関に依頼する方がコストを抑えられる可能性が高いです。ですが、職員数の多い機関ですと、地方ごとに検査員を置いている場合もありますので、気になる機関があれば問い合わせてみましょう。また、自治体によっては認証にかかる経費や、転換期に施用する有機質肥料などにかかる割増経費を一部補助してくれるところもあります(※1)。
(※1)愛媛県など
見積依頼には電話がおすすめ
候補機関をピックアップできたら、見積を依頼しましょう。認証取得を希望する種目、圃場の場所や広さなどを伝え、取得費用の比較をします。この時に、認証取得の目的を各機関の職員に詳しく伝え、各機関の雰囲気、温度感などをつかむようにします。機関ごとの対応も比較材料のひとつになりますので、見積依頼には電話がおすすめです。
有機JAS認証取得時の注意事項
審査を無事合格し晴れて有機JAS認証を取得できても、有機JASマークを使用したり、「有機野菜」「オーガニック野菜」を名乗ったりするには、毎年継続して認証機関の検査員に圃場を検査してもらわなければなりません。次年度以降も継続して毎年費用が発生することになりますので、そこにも注意して認証機関を選ぶようにしましょう。

有機JAS認証のマーク
有機JAS認証水稲農家「(有)たけもと農場」の場合
石川県能美市で特別栽培コシヒカリなどを生産する(有)たけもと農場では、「石川県」を認証機関として、約20年前に有機JAS認証を取得しました。石川県では圃場の枚数で料金が変わり、たけもと農場では圃場が4枚ということで、最安料金の3万円ですみましたが、取得後の年次手数料を毎年2万~2万5千円ほど支払っています。
取得にあたっては、書類を揃えることがとにかく難しかったとのこと。使用する機械のリストや圃場の地図、栽培方針表などの10書式を超える書類に、米作りの過程をすべて文字化して、きっちり落とし込まなくてはなりません。「記入漏れがあったり、表現があいまいだったりすると戻されてしまいますので、提出前に今一度数人でチェックした方が確実だと思います」と竹本さん。

たけもと農場の有機JAS認証米。右下に認証マークが入っています
「また、認証を取得したからといって販路がいきなり拡大することはありません。できれば、認証取得によってアプローチが見込める販売店などに前もって当たりをつけておき、取得後はあらかじめ作っておいた販売ルートにのせる方が時間やコスト面からも無駄が少なくなります」(竹本さん)
年次手数料がかかることもふまえ、認証取得を考えたら、平行して販売プランも考えておくようにしましょう。費用対効果の高い認証取得ができます。
有機農業に取り組む方におすすめ BLOFware®.Doctor
有機JAS認証審査の実地検査ではすべての圃場が検査され、「播種・植付け前2年以上有機栽培」であるという基準を満たしているか、有機栽培が継続できる圃場であるかが判断されます。有機JASに適合した圃場を作り合格に結びつけるためには、細かく計算された施肥設計が必要です。
そこでおすすめなのが、NTTコムウェア株式会社が株式会社ジャパンバイオファームと共同で開発した、営農支援クラウドサービス『BLOFware.Doctor』です。

『BLOFware.Doctor』の特長
「BLOFware.Doctor」では、施肥設計に使用する肥料をユーザー自身で情報登録・選択できるため、有機JAS許容資材のみを使った土作りが可能となり、パソコンやタブレット上で管理できます。しかも、BLOF®(ブロフ)理論(※2)に基づく生育に最適な施肥設計が直感的な操作でできるため、初心者でも多収量・高品質を目指せます。
(※2)アミノ酸、ミネラル、土壌の3つの分野に分けて科学的に営農することで、高品質・高栄養価・高収量・安定生産を実現する、株式会社ジャパンバイオファーム独自の有機栽培技術
有識者であるインストラクターによるアドバイスも受けられますので、「BLOFware.Doctor」片手に有機JAS取得に挑戦してみてはいかがでしょうか。
次回は有機栽培の成功要因、失敗する人のつまずきポイントについてご紹介します。
(取材協力/(有)たけもと農場)
〒923-1113 石川県能美市牛島町ロ175番地
https://okomelove.com/
(監修協力/一般社団法人 日本農林規格協会)
参考サイト一覧
一般社団法人 日本農林規格協会(JAS協会)
農林水産省「有機登録認証機関一覧」
農林水産省「有機加工食品検査認証制度ハンドブック(改訂第3版)」
農林水産省「はじめての人のための有機JAS規格」
お問い合わせ
NTTコムウェア株式会社
〒108-8019
東京都港区港南1-9-1 NTT品川TWINS アネックスビル
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