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二刀流でしっかり稼ぐ「半農半X2.0」を実現する方法

hiracchi

ライター:

二刀流でしっかり稼ぐ「半農半X2.0」を実現する方法

半農半Xは「自給農で食いぶちを確保し、Xで好きな仕事をする」という考え方が前提ですが、「パラレルワーク(複業)」が当たり前になる中、両方で十分な収入を得る「新たな半農半X」が実現しやすい環境が整いつつあります。ここでは、ライターをしながら農業でも稼ぐ筆者が「半農半X2.0」の実現方法について詳しく解説します。

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農水省も本格的な支援を検討し始めた「半農半X」

野菜を持つイメージ写真

農水省も半農半Xの支援を検討

これまでの日本の農業は、「専業農家・大規模化」を後押しする方針がずっと続いてきましたが、ここにきて大きな転換が図られようとしています。2020年4月、農林水産省は「新しい農村政策の在り方に関する検討会」を設置し、農業とほかの仕事をする、いわゆる「半農半X」や「パラレルワーク(複業)」を幅広く支援する方向で議論が進められています。

今年4月に農水省が公表した「2020年農林業センサス」の確定値によれば、農業従事者は2015年から2020年の5年間で46万人減少し、152万となりました。実に5年間で約4分の1が離農した計算となります。今後もさらなる大量離農が予想されるなか、新しい形の「小さな農家」を支援する方針が示されようとしています。

農業は、すべてを経済合理性で割り切ることができない多様な機能を持っています。資本主義の論理ばかりで物事を進めると、効率が悪い山間部の農業は、いずれ見向きもされなくなる可能性があります。そこで、「新たな農との関わり方」が求められているというわけです。

半農半Xやパラレルワークによる農業を後押しする動きは、全国各地で広がりを見せています。例えば、JAグループ北海道では「農業をするから、農業もする時代へ」というキャッチフレーズの下、「パラレルノーカー」という新たなライフスタイルを提案しています。また、島根県では、県外からU・Iターンして半農半Xを実践する就農時65歳未満の人を対象に、就農前の研修時と定住・就農初期の営農に必要な経費を助成、さらに営農開始時に必要な施設の整備も支援しています。

半農半Xには、まだまだ否定的な意見が多い?

トラクターでの作業イメージ

半農半Xでも農業で稼ぐことは可能

僕は、2003年にフリーライターとして独立し、さらに2010年からは新規就農して「ライター+農業」の二刀流生活をスタートさせました。当初はなかなか収益が上がらず苦労した農業ですが、11年目を迎えた現在は、農業でもライターと肩を並べる程度の売り上げを確保し、両方の仕事からそれなりの稼ぎを得られる状態になりました。

そのため、農水省が半農半Xの支援を真剣に議論し始めたというニュースを見つけた時には、「僕みたいなスタイルの人が増えるのかな?」と期待しながら記事を読んだのですが、そのネット記事のコメント欄を見てちょっと驚きました。「半農半X? そんなに簡単に稼げるかよ。なめんじゃねーよ!」といったネガティブな意見があふれていたからです。
もちろん、農業はそんなに簡単ではないのは事実です。僕の周りでも大変な思いをしながら農業をしている人はたくさんいます。でも、その一方で、「そんなにネガティブに考えることはないんじゃないかな?」というのが正直な気持ちです。

僕は、ライターという職業柄、取材を通じてさまざまな職種の仕事を見る機会がありますが、どの仕事でも相応に大変です。決して楽な仕事ではありませんが、だからといって、他の職種で独立するのに比べて「極端に難しいか?」といえば、決してそんなことはないと思います。

移住を考えるのであれば補助金をうまく活用したい

田舎のイメージ

移住時は補助金の活用を検討しよう

では、半農半Xをこれから実現したい人、特に「半農半Xでしっかり稼ぎたい」という人は、どうすればうまくいくのでしょうか。ここからは、二刀流の実践者である僕なりの考えを伝えていきたいと思います。

まず検討してみてほしいのが、地方移住者向けの補助金を最大限活用することです。
東京圏に住む人であれば、移住に対して100万円、さらに地方の地域の課題に取り組むビジネスで起業すれば、起業支援金+移住支援金で最大300万円の支援が受けられる制度があります。半農半Xを都会で実践する方法もあるかもしれませんが、農地確保の問題などから、移住を前提に考えている人が多いと思います。もしそうなのであれば、せっかくなので移住に関する補助金を最大限に活用する方法を考えてみましょう。

また、前述したように半農半Xを支援する動きが今後本格化してくるようなことになれば、農業に関する既存の補助金が幅広く使えるようになる可能性が高そうです。「農業次世代人材投資資金」など、就農を支援する補助金が活用できれば、農業に取り組むハードルはかなり低くなるはずです。

「農」は、ニッチかつ高収益な作物を選ぶのがおすすめ

タマネギのイメージ

大規模農家と競合しない作物がねらい目

次は、「農」と「X」、それぞれのビジネスについて考えてみたいと思います。

まず「農」の部分です。これは「自給農」にこだわるのか、「きちんと稼ぐ農業」を行うのか、この選択によって方向性が大きく分かれると思います。

そもそも半農半Xとは、日々の食いぶちを自給“農”で賄いつつ、空いた時間で好きなこと=“X”をするというライフスタイルのことを指します。この「自給農」という部分がポイントで、人によって若干スタンスに違いはあるものの、本来は「農業でしっかり稼ぐ」ことを目標にしたものではありません。

ただ、個人的な経験から言うと、最初から「農業でしっかり稼ぐ」のをあきらめるのはもったいないと思います。大規模な専業農家にはかなわなくても、やり方によっては、それなりの規模で高収益の農業を実現することは十分可能だと考えているからです。僕自身、農業だけで、サラリーマンの平均年収程度はコンスタントに稼ぐことができています。半農半Xの進化系、いわば「半農半X2.0」といったところでしょうか。

農業で稼ぐことを考えるのであれば、専業農家がなかなか手を出しにくいニッチな分野を検討してみるのがいいでしょう。市場のニーズはあるものの、そんなに量はいらないもの、売り上げが上がるまでに数年かかるもの、その土地でしか栽培できないもの、などに着目してベストな作物を探すのがおすすめです。

ポイントは、「X」での稼ぎが、「農」にも良い影響を与える可能性が高いということです。

ニッチな作物は、専業農家が大規模に取り組むには、十分な売り上げ規模がないケースが多いです。しかし、こういった作物のほうが、農家の個性を発揮したり、ブランド化を図ったりしやすい。これが、資本力のある大規模農家との差別化につながります。「X」でそれなりの稼ぎがあれば、売り上げ規模は小さいけれど、利益率が高いニッチな作物に手を出しやすいはずです。

また、基本的に「農繁期」と「農閑期」があり、仕事量に大きな差があるのが農業です。ただ、農閑期に暇を持て余しているわけにはいかず、メインの作物に比べると利益率が低い作物を栽培することがあります。半農半Xの場合、「X」の仕事で稼げるため、利益率が低い作物をバッサリ切ることも可能です。利益率が高い作物のみに思い切って振り切ることができる。これが「X」を持つ利点だと感じています。

「X」は、リモートワークの普及で選択肢が格段に広がった

ライター業のイメージ

コロナ禍で半農半Xがしやすい環境に

次は、「X」について考えてみたいと思います。

前述の通り、現在は地方移住者の起業を後押しする補助金制度が充実していますので、前向きに起業を検討してみたいところです。都会に比べて希望する勤め先に出会える確率が低いため、「X」の部分に好きな仕事を選択して稼ぐのは、起業しないと難しいと言えるかもしれません。

コロナ禍によるリモートワークの普及により、都会の仕事を田舎で行うハードルは、相当低くなったと感じています。僕自身、東京や大阪など大都市圏の案件に、リモートで対応する機会が格段に増えました。それなりに実績のある人であれば、ネットを活用して以前とほぼ変わらない感覚で仕事ができると思います。

僕の場合、農業をしていることが、ライターの仕事の幅を広げることにもつながりました。農業をしていることがきっかけで、新規の仕事を獲得できた例も数多くあります。その具体例のひとつが、この「マイナビ農業」での執筆です。

万全の計画と心構えで半農半Xを始めたとしても、失敗を100%回避することはできません。農業自体はうまくいっても、「田舎暮らしになじめない」といった理由でやめざるを得ないケースも考えられます。そんな時のための「保険」としても機能するのが「X」の部分です。都会での仕事を継続することができれば、万が一、地方移住での農業から撤退することになっても、収入が全くなくなるというリスクを回避できます。

もちろん大変な部分もある半農半Xですが、それ以上に「楽しい」「やりがいがある」というのが僕の率直な感想です。2つの仕事でしっかり稼ぐ「半農半X2.0」の実践者が増えてくれるといいなと期待しています。

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