「不安定な収量の要因は何か」アドバイスの根拠を得られず悩む日々
北海道三笠市で水稲を中心とした「床岡ファーム」を営んでいる床岡達也さん(39)。先祖代々続く農家の5代目です。23歳から家の仕事を手伝うようになり、30歳を過ぎてお父さんから経営を引き継いだ途端に、大豊作と大凶作の年を立て続けに経験したそうです。
「これはまずいと思いました。収穫を安定させなければと真剣に考えるようになったんです」。床岡さんが畑を営む中山間地域は、他よりも収量が少ないということも気になっていました。「同じことをやっているのに、反収が2割くらい違うんです。5年で1年分の違いですから見過ごせません。ところが誰に尋ねても『昔からそういう地域だから』としか答えてもらえない。どうしたものかと悩みましたね」
「秋起こしをしてみたら?」とアドバイスをもらって取り組んだ結果、ある程度収量を上げることは出来たそうですが、以降は頭打ち。「なぜそれをすると良いのか?」と尋ねても「とりあえず乾かせばいいんだよ」というだけで明確な回答をくれる人はいませんでした。
“良い栽培方法”を数学的に教えてくれたBLOF理論
「その作業でなぜ変化が生まれるのかがわからないと、収穫を安定させることはできないと痛切に感じました」と、床岡さん。先が見えず「水稲についてイチから学び直すしかない」と決心します。芳しくなかった2018年の収穫を終えたタイミングで後輩からBLOF理論の講演に誘われたそうです。
「うちはずっと慣行栽培を続けていました。有機の話と聞いたので、正直あまり興味はなかったんですが、何か一つでも得るものがあればと思って参加したのです」
しかし、その講演のわずか4時間で、ずっと抱えていた悩みが一気に解決したそうです。「パーッと霧が晴れたようでした。自分の圃場の土では水稲自体が持つ能力を50%くらいしか引き出せていなかったんです。数字を使ってその対策方法を理論的に解説してくれるので、納得しかありませんでした」
BLOF理論とは、「細胞を作るアミノ酸」「生命維持に不可欠なミネラル」「生育・施肥を支える土壌」の3つの分野に分けて考察し、科学的・論理的に営農していく株式会社ジャパンバイオファーム独自の有機栽培技術です。
即行動をモットーにしている床岡さんは、帰宅してすぐにBLOF理論を取り入れるための準備を始めたそうです。「本当は秋から土づくりを始めなければいけないんですけどね。それでも2019年の春からでもできることとして、理論に沿った有機資材を使い始めました。その年の秋は課題としていた収量にそれほどの効果は出ませんでしたが、稲が明らかに固く丈夫になって、病害虫にも強いし、光合成能力も高くなっていることがわかりました。秋落ちもなくなり、食味も上がりと良いことづくしでしたね」
土壌作りから徹底した結果、収量に加え食味や栄養価もアップ
BLOF理論に確信を持った床岡さんは、2019年秋に土壌分析を行いその結果に基づいて石灰やミネラルを施すなど、本格的な取り組みを進めました。2019年より、2020年、そして今年と、どんどん土が良くなっていることを床岡さんは実感しています。
「人間に例えると、風邪をひいたら薬を飲めばいったんは治りますよね。でも身体が弱ければまた病気になってしまう。それと同じで、田圃や畑にとっての身体は土壌だということをBLOF理論が教えてくれました」。
2020年の秋には収量が上がると同時に、食味と栄養価も更に上がったそうです。「食べ比べるとその差は歴然です。全部がつながっているんですよね。土がその作物に合ったものになることで、根が広く強く張るようになります。すると作物は栄養分をどんどん吸収する。その結果が今なんです」。
床岡さんは有機だけでなく、慣行栽培を行っている水稲にもBLOF理論を応用しているそうです。「反収540キロが2年で640キロまで上がったんですよ」。自分がイメージしていた以上の成果が出ていることに「やった分だけちゃんと返ってくる。今は仕事が楽しくて仕方ないですね。うちの米はもっともっと良くなりますよ」と笑顔です。
今後の目標の一つが『米-1グランプリ』の決勝10組に残ることだという床岡さん。「三笠ではまだBLOFを採用している農家は3軒だけ。自分の米が評価されたらBLOFに取り組む人が増えて三笠や北海道の農業がもっと進歩すると思うんです」と、地域の未来を見据えて話してくれました。
目標収量から逆算された施肥設計。育った稲は「まるでゴリラ!」
九州、熊本県人吉市の荒毛正浩さん(61)もまた、BLOF理論に基づいた水稲作りを始めた一人です。
「家が農家なんですが、私は市役所勤務で農業振興課に勤めていました。有機栽培のことは40年前に知り『これは素晴らしい!』と思い、地域内での普及に取り組みつつ、10年前に出会ったBLOF理論にも感銘を受け、兼業しながら家の圃場でカルシウムやマグネシウム資材の施用などを実践していました」。
「有機は収量が伸びない」という通説を覆したいと考えた荒毛さん。「農業一本に本腰を入れよう」と一念発起し市役所を退職した後に、2年前からBLOF理論を用いた栽培に本格的に取り組み始めました。
分析して土壌を把握し、ミネラルや有機肥料、アミノ酸肥料などを土に還元して、あるべき土壌作りにこだわり、従来から行っている直播きで育った今年の稲は、近隣で有機をやっている農家仲間が一目見て「ごつかぁ!まるでゴリラのような稲じゃないか」と言うほど、大きく丈夫に育ちました。水稲栽培に携わって約30年の荒毛さんをしても初めての出来となっているそうです。
「稲の長さ、横への広がりも全然違うんですよ。土壌を改良したことで、根の張りが段違いの強さ。私の力で引っ張っても抜けませんからね。強い根が栄養をどんどん吸ってくれたんです」
不順な天候にも負けない、病害虫にも強い稲
今年8月、九州は大変な豪雨に見舞われました。農作物への被害も心配されましたが、荒毛さんの農園にはほとんど影響がなかったそうです。
「長雨の影響で日照不足は深刻でした。光合成がしにくい環境でしたが、土壌から得る栄養が不足した分を補ってくれました。いもち病が好む高温多湿な環境になってしまったため周囲には被害の出た農家もあったそうですが、うちの稲はなにせゴリラですから(笑)」。
BLOF理論に基づいて育った稲の強靭さは、病気やウンカなどの害虫にも有効のようです。「根の強さは台風などで心配される倒伏被害に対しても大事なポイントです」。荒毛さんの目は我が子が丈夫に育ったことを喜ぶ父親のようです。
有機初心者も安心のBLOFware®.Doctor
「農業の現場でBLOF理論を実践する際に役立っているのが『BLOFware.Doctor』です」と、床岡さん、荒毛さんは口を揃えます。
『BLOFware.Doctor』とはBLOF理論に基づく有機栽培を簡単に実践できるクラウドサービスです。株式会社ジャパンバイオファームがNTTコムウェア株式会社と共同で開発し、全国の農業協同組合や農業法人、生産者を対象に提供します。
「どんな有機資材をどれだけ使えば良いかが一目で分かる機能もあります。投入できる費用には限りがありますから、数年かけて徐々に土壌をよくする方法も選べます」と、床岡さん。
「栽培で迷ったときは直接アドバイスを受けられますから心強いですね。うちではソフトが算出した施肥設計に従って、初めて追肥を行ってみたのですが、稲穂のつきも素晴らしく、念願の収量目標も達成できる見込みです」と荒毛さんも太鼓判を押します。
有機栽培で成功したいと考えている方はぜひ一度試してみてはいかがでしょうか。
次回はいよいよ連載最終回。有機栽培をより効率的にするアイテムを紹介します。有機農業に取り組んでいる方も、これから取り組む方も必見です。
(取材協力/床岡ファーム)
北海道三笠市大里30番地1
食べチョクはこちら
(取材協力/あらけ農園)
熊本県人吉市下原田町荒毛
食べチョクはこちら
農園のブログはこちら
お問い合わせ
株式会社ジャパンバイオファーム
〒396-0111
長野県伊那市美篶1112
『BLOFware.Doctor』の詳細はこちら
お問い合わせはこちら(メールフォームが開きます)