北海道でもドライバー不足は深刻
北海道から道外に輸送される農畜産物は年間350万トンに及ぶ。このうち260万トンがホクレンの扱いだ。その輸送形態は多い順にトラックが130万トン、JR貨物が80万トン、船便が50万トン。北海道は他県よりもトラックによる幹線貨物輸送から海運や鉄道の輸送に切り替える「モーダルシフト」が進んでいるのが特徴だ。
それでもトラックの利用率が最も高く、ゆえにホクレンが懸念するのはドライバー不足だ。鉄道貨物協会が2014年5月に公表した「大型トラックドライバー需給の中・長期見通しに関する調査研究」によると、2030年は2020年と比べて大型トラックドライバーが18%減少すると予測されている。ホクレンは少し多い20%減になると見込んで、対策を打ち出してきた。
野菜の取扱量のうち約3割でレンタルパレットを利用

ホクレンが推奨するレンタルパレット
その一つがパレットに荷物を積んで保管や輸送、荷降ろしをする「一貫パレチゼーション輸送」だ。2015年から道内のJAで普及を進めている。それまでは野菜や果物を運ぶのに、段ボール箱に入れた状態のまま荷積みや荷降ろしをするのが一般的だった。これは人手と時間を要する。代わりに産地の段階でパレット上に段ボールを積んでおけば、フォークリフトでトラックへの積み降ろし、倉庫での保管や移動ができる。一例を挙げれば、10トントラックにタマネギを満載するのに要する時間は人手だけなら2時間半。一方、パレットなら30分と5分の1で済む。
ホクレンがその普及に当たって採用したのは、大きさが1100×1100ミリの通称「11(いちいち)型パレット」。木製とプラスチック製の2種類のレンタル品である。用途はいまのところタマネギ、バレイショ、ダイコン、ニンジンなどの重量野菜が中心。野菜の取扱量のうち約3割でレンタルパレットを使うまでに広がった。
段ボール箱の規格統一、貨物輸送など課題多く
一貫パレチゼーション輸送の推進は荷役にかかる作業の負担や時間の軽減に貢献する一方、新たな課題を生んでいる。その一つは11型パレットの大きさに合わせた規格の段ボール箱を普及させることだ。規格において段ボール箱が11型パレットに合わず、積んだ際に枠からはみ出れば、輸送中に段ボールや中身の青果物が破損する恐れが出てくる。対策として、一部の野菜については11型パレットに合わせた規格の段ボール箱を普及させる。
JR貨物のコンテナの規格にパレットの規格が合っていないことも課題だ。11型パレットを入れると、コンテナ内の両側に隙間(すきま)が生じる。激しい揺れによって積んでいた荷物が横から落下したり、上部が隙間に倒れて下段が潰れたりする恐れがある。対策としてラッピング資材で積載物ごとパレットを包装したり、横の空間に緩衝材を入れたりしている。
おまけにJR貨物からは1コンテナ当たりの積載重量が決められている。パレット1枚のおおよその重量はプラスチック製が25~28キロ、木製が30~40キロ。一つのコンテナにパレットが6枚入るので、その総重量はおおよそプラスチック製が150~168キロ、木製が約180~200キロとなる。この分だけ荷物が載せられなくなり、結果的に段ボール1箱当たりの輸送代に跳ね返ってくる。
もう一つの課題はパレットの回収率を上げることだ。レンタル品なので返さなければならない。ホクレンによると、他産業における回収率は98~99%。一方、ホクレンが使い始めたレンタルパレットの回収率は「87%だったり95%だったりと年によってまちまち。いずれにしても他産業よりは低い」という。
回収率が悪ければ、レンタル料金の値上げやパレットが供給されない事態につながりかねない。ホクレンは全農と連携して卸売市場に返却するよう要請を続けている。
フレコンの課題は規格を全農に合わせるか
最後にホクレンによるコメの輸送について触れたい。取扱量のうち7割はフレキシブルコンテナ(以下、フレコン)での輸送である。JA全農の取扱量のうちフレコンの割合は5割なので、他県より進んでいるといえる。
今後の課題の一つはフレコンの規格でJA全農と足並みをそろえるかどうかだ。ホクレンが推奨してきたフレコンは容量が1020キロなのに対して、JA全農が普及させているのは1080キロ。フレコンの規格を統一することで、経費の削減が期待できる。このためホクレンはJA全農フレコンの1020キロによる運用試験を実施するなど、規格の統一を検討している。