土壌診断で年1~2万件の実績
どんな肥料を投入すべきかを農家に提案するには、まず圃場(ほじょう)ごとに土のサンプルを取り寄せ、土壌の状態を詳しく調べる必要がある。JA全農ぐんまでそれを担っているのが、群馬県みどり市にある土壌診断センターだ。
主な調査項目は6つある。土壌が酸性かアルカリ性かを示すpH(水素イオン濃度)値と、pH値に影響する石灰の量、葉緑素のもとになるマグネシウムの量、作物の生育に影響するリン酸とカリウムの量、そして施肥のタイミングや量を決める手がかりになるEC(電気伝導度)の数値だ。
できるだけ効率よく正確に調べるため、農家が土のサンプルを採取する際のマニュアルもある。例えば、1枚の畑の四隅と中央の計5カ所の土を取り、内容に偏りが出ないようにする。センターに提出する前に土を乾燥させておくことも重要。湿っていると、診断の結果が不安定になるからだ。
同センターでは畑の土のサンプルを提出した生産者に個別に結果を説明するだけでなく、地域の中心的な農家の圃場に組合員を集め、土壌分析にもとづく栽培の講習会を開いたり、農協の施設で施肥の説明会を開いたりしている。産地全体の生産性の向上を後押しするのは、農協にとって重要な役割だ。
土壌診断の件数は、毎年1~2万件の間で推移している。例えば、2017年度に分析した土は野菜の栽培ハウスが5820件で最も多く、次が屋外の野菜の畑で5184件。全体では1万9768件に達した。肥料農薬課の課長代理の尾内敏(おない・さとし)さんは「全国的に見ても分析件数は多いほう」と話す。
JA全農ぐんまの取り組みは長年の実績があり、地域の担い手の農家を中心に利用が定着している。しかも2021年に起きた農業の経営環境のとある変化で、土壌分析の必要性は一段と高まった。肥料価格の上昇と肥料不足への懸念だ。
オーダーメードの肥料で、投入量の削減に成功
肥料の国際相場は、2021年から上昇傾向が鮮明になっていた。新型コロナウイルスの影響を脱して世界経済が上向くとの期待から、穀物の需要が増えるとの予想が高まったことなどが背景だ。日本が肥料の原料の調達先にしている中国が輸出をほぼ停止したことで、肥料が足りなくなる恐れも浮上した。
そこで期待が高まっているのが、土壌分析による効率的な施肥設計だ。その点に関し、JA全農ぐんまはJA東日本くみあい飼料(群馬県太田市)がみどり市で運営している肥料の製造工場と連携しているという強みを持つ。
具体的には、土壌診断の結果で必要な肥料の内容が農家ごとに決まると、それに沿ってJA東日本くみあい飼料が肥料を配合しているのだ。商品名は「セルフブレンド」。中身が一律の既製品の肥料と違い、農家の依頼に応じて施肥設計してあるため、オーダーメードの肥料ということもできるだろう。
セルフブレンドの特徴は、土壌に不足している成分を重点的に投入できるのに加え、過剰な成分を省ける点にある。それにもかかわらず、