「二十世紀梨」の産地にニューフェースが誕生!今後は「なしおとめ」にも注力
「香住梨」の誕生は1929年に遡ります。新たな農業振興を目指し、県の農業試験場の委託試験地となった下浜集落で「二十世紀梨」の苗木の植栽・栽培が開始されたのが始まりです。その後、「香住果樹園芸組合」が設立され、栽培技術の研究や共同選果、共同販売が行われるようになり、“兵庫県下一の二十世紀梨の生産地”としてのポジションを確立しました。
現在は青梨である「二十世紀梨」を中心に早生梨の「なつしずく」、晩生梨(赤梨)の「新興」や「王秋」などが栽培されています。また、消費者ニーズの多様化やよりおいしい果実が求められる現状を鑑み、2015年に兵庫県の育成品種「なしおとめ(但馬1号)」を導入し、生産に力を入れています。
「二十世紀梨」は、ほどよい甘味とジューシーさで贈答品としても喜ばれ、香美町を代表する特産品となっていますが、「なしおとめ」はそれを上回る糖度(12~13度)と芳醇な香りが特徴です。8月中旬から下旬にかけて収穫ができる早生梨の有望品種として、若手生産者が中心となって栽培面積の拡大を進めています。
2018年度には「八百一 伊勢丹京都駅店」で販売を実施。消費者の認知もじわじわと拡大し、新たな香住梨ブランドとして大いに期待されています。
若手生産者のもとで梨作りの農作業体験を計画中
香美町・香住地域の産地では、新たな香住梨ブランドである「なしおとめ」をはじめとする梨作りに意欲的に取り組んでくれる方、香美町に住み農業を通じて地域を盛り上げてくれる方、「香住果樹園芸組合」に加入して生産者間の交流や新技術の研究、技術研鑽に意欲のある方を求めており、地域をあげたバックアップを計画しています。
梨作りに取り組む農家では、春先から摘蕾・摘花を行い、4月中旬に人工授粉、5月上旬に摘果を実施。5月中旬から下旬には日焼けや病害虫から守るための小袋かけを行い、6月には更に大袋をかけて梨の実をより厳重に守ります。7月下旬から8月上旬には早生品種の梨が収穫できるようになり、9月上旬から下旬には中生品種の梨が、10月中旬から11月下旬にかけて晩生品種の梨の収穫が続きます。
また、これらの作業の合間には薬剤散布や剪定、冬場の梨棚のメンテンナンスや土作りなどもあり、年間を通じてさまざまな仕事があるのが梨農家の特徴でもあります。
『香美町香住なし生産地域就農・定着応援プラン』では、こうした梨栽培の作業工程の一部を体験していただく〈農作業体験〉を計画しています。産地を守ろうと若手生産者が立ち上げたグループ「香住まったナシ」の田門健太(たもんけんた)さんの園地でも受け入れを予定しており、「袋かけなどの作業を一緒に行いながら、梨作りの面白さや難しさ、多岐にわたる作業工程などを直接お伝えできたらと思っています」と穏やかに話します。
技術指導×農地の確保でも新規就農者をバックアップ
〈技術指導〉や〈農地の確保〉についても、町・県・JA・園芸組合などが一体となって新規就農者を支援します。
〈技術指導〉では先述した「香住まったナシ」や「香住果樹園芸組合」の指導員が県の関係機関や農協と連携し、剪定講習会などを行ったり、防除暦や会報などによる情報提供でもバックアップ。ベテラン農家から工程に応じた栽培技術を学ぶことができます。また〈農地の確保〉については、梨農家にアンケートを行い、新規就農者への園地譲渡などを検討している方々の把握を進めています。その結果が分かり次第、関係機関と情報共有しマッチングを図ります。
「まずはE-mailやお電話などでお問い合わせをいただいた方とビデオ会議などでの面談後、梨農家とマッチングを行います。現地での農作業体験などの機会を設け、不安や疑問などを払拭した上でスムーズに新規就農できるようにサポートしていきます。移住に伴う各種相談も関係部署と連携するので、是非お問い合わせください」と話すのは新規就農希望者の窓口となる香美町・農林水産課の宮脇渓汰(みやわきけいた)さん。
「冬はスキーやスノーボード、夏は海水浴にキャンプなど、一つの町でさまざまなレジャーが楽しめるのはちょっとスゴイと思いませんか? 梨農家専業で経営する以外にも民宿×梨農家で生計を立てる方もいれば、梨栽培が軌道に乗るまでスキー場、水産業などでのアルバイトを並行して行うという働き方も可能です」と教えてくれたのは、県の新温泉農業改良普及センターの方々です。
では、最後に「なしおとめ」の栽培方法の確立や若手農家組織の立ち上げ・育成に尽力された他、「香住まったナシ」のアドバイザーを務める黒野幹彦(くろのみきひこ)さんと、田門さんから新規就農希望者のみなさんにメッセージをいただきました。
「自然が相手の農業は簡単ではないのですが、起業して経営者になれるのが面白いところ。果樹栽培は収穫までに一定の時間が必要なので、その間にどう生活するかをしっかり計画することも大切だと思います。私たちが手塩にかけて育てている「二十世紀梨」は見た目でも差がつく品種なので、きれいに仕上がると本当に嬉しいですね。この地域は特に梨肌にうるさいと言われていて、強いこだわりが品質への高い評価につながっていると思っています。ここに暮らす人は、口下手で最初は取っつきにくいと思われるかもしれませんが、みんな根は優しくて面倒見のいい人ばかり。梨作りを始めたいという方を地域で支えていきますよ」とエールを送ってくれた黒野さん。
また、田門さんは「農業がしたい…ではなく、梨を作りたいという熱意が何よりも重要です。自分で植物生理学や梨の生長過程について情報収集するなど、学ぶ努力は欠かせません。自分が好きな梨の品種が見つかれば、栽培へのモチベーションが上がるかも。私は赤梨の「王秋」の形が好きで、ひと目見て栽培しようと決めました。ぜひ一度、農作業体験に来ていただき、私たちの梨を見てください」と続けます。
この記事を見て、香美町・香住地域や香住梨に興味を持たれた方は、香美町・農林水産課にご連絡ください。
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香美町 農林水産課
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