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誰もが気軽に農業ができる世の中へ──全国労働力支援協議会が設立。生産現場の人手不足解消目指す

誰もが気軽に農業ができる世の中へ──全国労働力支援協議会が設立。生産現場の人手不足解消目指す

JA全農は3月4日、人手不足に悩む生産現場を支援すべく、全国6ブロックの労働支援協議会を取りまとめる全国労働力支援協議会(以下、全国協議会)を設立した。2022年度以降、地域内外のさまざまな人材が農業と関わることができる仕組みを構築し、生産現場の人材不足解消を目指した事業を展開する。この事業の先行モデルを発案した、全国協議会設立の立役者でもある全農労働力支援室のキーパーソンに、今後の展望や課題を聞いた。

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「大分モデル」ベースに、通年雇用の難題に解を見いだす

全国協議会設立はオンライン総会で決議。オブザーバーとして農林水産省や内閣府、JA全中などが参加し、生産現場の人材不足解消と農業関係人口の創出などを目指すべく、ブロック間での協力連携を強化していく方針を申し合わせた。

全国的な取り組みの軸となるのが、農作業受託を行うパートナー企業と連携した「労働力支援事業」だ。一時的に人手が必要な農家がいる場合、JAや全農がその要請を取りまとめてパートナー企業に依頼し、あらかじめ雇用契約を結んでいる人材を依頼のあった生産現場へ送り届けるという仕組み。2022年はすでに14道県で運用が決まっており、今後さらに水平展開していく方針だ。

同事業の起源となったのは、JA全農おおいたが2015年から始めた、農作業希望者と農家をマッチングする仕組み「大分モデル」。県域単位では難しいとされてきた「いつ労働者が来ても仕事がある環境づくり」を実現したとあって、九州ブロック間で横展開していき、このほど全国的な取り組みへと波及した格好だ。
「大分モデル」のかじを取ったJA全農耕種総合対策部労働力支援室の専任室長、花木正夫(はなき・まさお)さんは、この取り組みに踏み切った背景について、次のように説明する。

「当時、全農おおいたの園芸部門にいたのですが、あるベテランの白菜農家から搬出作業に要する労力不足を理由に引退を告げられたのが取り組みのきっかけです。白菜は10アール当たり7トンほどの収量があり、高齢者が畑から搬出するには大変な作業。このようなやめないといけない状況を外部の人の力で解消できれば、同様の理由で引退する人も少なくなるのではと考えました」

新たに人材を呼び込むにあたり、ネックとされてきた通年での仕事の確保は、閑散期には育苗センターや選果場での作業をあっせんするほか、繁忙期の異なる他県のJAと連携して働き場所を確保した。これにより、生産現場にとっては、繁忙期などの必要な時にのみ人手を確保でき、農業に興味がある人や移住先での仕事を探す人にとっては、通年で農業を経験できるという両者Win-Winの構図が出来上がった。

「多くの産地では、農繁期には人手を要するも、閑散期には労働者をつなぎとめられるほどの作業量はないのが現状。作業時期が気候条件によって左右されることも珍しくありません。しかし、自分が労働者側なら、通年で安定した仕事でなければやらないでしょう。自分がやらないことはおそらく、他の人もやらない。そのため、労働者の視点で働きやすい環境を作ることに最大限の労力を使っています」(花木さん)

産地に人が集まり、根付く仕組み

ここからは、「大分モデル」を踏襲した全国版「労働力支援事業」の枠組みを見ていこう。
まず、繁忙期などに人手を必要とする農家が、管内のJAや全農に作業を依頼する。これを受けて、JAは農家と作業内容や時期などの調整を行った上で、農作業委託契約を結んでいるパートナー企業へ作業を委託する。

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パートナー企業と連携した作業請負のスキーム

パートナー企業は、労働者の募集や労務管理も請け負う。対象は将来的な就農を希望している人はもちろん、主婦や学生、定職につかないミッシングワーカーなどさまざま。それぞれ日雇いでの雇用契約を結び、生産者方への送迎まで行う。

一方で、作業内容のレクチャーなどはJAが担う。具体的には、各県や団体で作成している農作業の方法をまとめたマニュアル動画を相互共有。労働者が事前に作業内容を把握し、明確なイメージを持って効率的に現場作業に当たれるようにする。

JAグループの機能を活用し、年間を通じた農作業請負も実施。閑散期には加工場や選果場などでの仕事も用意するほか、コロナ禍以降には地域・ブロック内外で働ける仕組みも設ける方針だという。

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収穫や定植のほか、加工場や選果場などで通年の仕事を用意する

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