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地域の農業は“パートナーシップ”で! 農福連携を土台にした課題解決の方法

地域の農業は“パートナーシップ”で! 農福連携を土台にした課題解決の方法

過疎や高齢化に悩む地域、地域で働きづらさを抱えて生きる人々、地域を農業で活性化させたい農業関係者や企業。この3者のそれぞれの課題を、農福連携を土台として「パートナーシップ」で解決しようと、地域の農業関係者たちが立ち上がり団体を設立した。中心となるのは鹿児島県・大隅半島最南端の町で半世紀前から農福連携に取り組む社会福祉法人白鳩(しらはと)会。農福連携の先駆者が町の多様な人々と共に目指すものとは。

「ジャガイモノウフク」から始まる地域課題の解決

鹿児島県の大隅半島、九州本島最南端の佐多岬のある南大隅町は自然豊かな土地だが、高速道路や鉄道はなく、過疎の進む町だ。産業の中心は農業で、特産のジャガイモは全国に出荷されている。その収穫時期には、普段農業に従事しない町民や農家の親戚たちも総出の忙しさだ。高齢の住民が多い地域にとって、収穫作業の負担の重さは課題になっていた。

そこで2021年3月、収穫の時期を迎えたジャガイモ農家を、町内にある「花の木農場」のメンバーが手伝うことになった。花の木農場は社会福祉法人白鳩会が運営する農場で、主に知的障害のある利用者たちが農業生産に携わっている。利用者たちはそれまで、ボランティアで地域の草刈りなどに参加したことはあるものの、地元の農家の手伝いをすることはなかった。しかし、農家の人手不足を解決したいという町役場からの声掛けもあり、利用者が施設の外の個人農家で働く「施設外就労」を試してみることに。名付けて「ジャガイモノウフク」だ。

掘り起こされたジャガイモをコンテナに入れていく利用者たち

2021年は無償ボランティアとして、2軒の農家でそれぞれ1日ずつ農作業を行う実証実験を行った。高齢の農家が2人がかりで運ぶ重いコンテナも、普段農作業で体を鍛えている花の木農場の利用者なら1人で運べる。こうした手伝いが、農家にとても喜ばれたという。
それを受け2022年は3軒のジャガイモ農家と業務委託の契約をし、有償で作業することになった。

ジャガイモがたくさん入ったコンテナを積み上げる利用者

社会の変化に適応して農福連携も変わる必要がある

ジャガイモノウフクで農家の手伝いをした利用者たちが所属する社会福祉法人白鳩会は、1973年の創業当初から農福連携に取り組んでいる。町内の耕作放棄地などを集積し、白鳩会とその関連団体の農事組合法人根占(ねじめ)生産組合が保有する「花の木農場」は38ヘクタール(2022年3月現在)。そこでは主に知的障害のある利用者が生活の支援なども受けながら農業生産に携わっている。

花の木農場の様子

白鳩会の成り立ちについて詳しくはこちら
社会福祉法人が過疎地に広大な農地を持つ理由~地域とつながるノウフク#2~
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九州最南端の町で、半世紀近く前から農福連携に取り組む社会福祉法人白鳩会。過疎の町で広大な農地を保有し、大規模に農業関連事業を展開。一方で「触法障害者」と呼ばれる障害ゆえに犯罪に手を染めた人の受け入れを行い、更生に導いて…

白鳩会理事長の中村隆一郎(なかむら・りゅういちろう)さんは、父である先代から2019年に白鳩会の経営を引き継いだ。創業時とは大きく障害者福祉のあり方も変わった現在、これまで以上に地域に目を向けた農福連携に取り組もうとしている。

白鳩会理事長の中村隆一郎さん

「我々の支援の対象となる人がどんな人なのか考え直す時期に来ています」と中村さんは白鳩会の新たな課題を口にした。創業以来花の木農場では、障害のある人々が働くための農業の環境を利用者とともに作ること自体を“支援”としてきた。しかし今では多くの企業が障害者雇用を進め、かつて花の木農場で農業生産に従事していたような人々が他の業種でも働くようになった。また、障害のとらえ方も複層化しており、引きこもりなどの生きづらさや働きづらさを抱えている人々も受け入れていきたいと中村さんは言う。

一方で、白鳩会がある南大隅町の現状も大きく変わってきている。「これまでの白鳩会は法人内部の規模拡大と経営体力強化に注力してきました。しかしこの50年の間、地域は過疎化し疲弊してきています。うちだけ元気が良くても、それは砂上の楼閣。地域が持続性を持ってこそ農場を継続できると考えています」と、中村さんは地域への支援も視野に入れた農福連携のあり方を模索すべきと語る。そんな中生まれた取り組みが、「ジャガイモノウフク」だった。

SDGsの17項目目「パートナーシップ」に着目するワケ

新たな農福連携の在り方の模索の中で、中村さんが重視するのが「パートナーシップ」だ。これはSDGs(持続可能な開発目標)の中の17番目の目標「パートナーシップで目標を達成しよう」から来ている。
「SDGsという言葉は、環境問題に関する文脈の中で聞くことが多いのですが、それは一部しかとらえていません。パートナーシップとは『複数のメンバーが課題を共有して解決に取り組む』ということ。福祉の現場では、我々だけでなくいろんな外部機関とつながることで利用者の生活の質の向上や改善につなげています。これと同様に、白鳩会や地域が抱える課題を世の中に発信していけば、協力したいというパートナー候補が増えていくに違いないと思いました」(中村さん)
農福連携が持つパートナーシップの力でさまざまな課題を解決できるのでは、と考える人は中村さんのほかにもいた。そこで、地元の自治体や農業関係の企業や関係団体、引きこもり支援の一般社団法人など多様なパートナーが集結し、コンソーシアム(事業共同体)を組むことになった。

「大隅半島ノウフクコンソーシアム」による共同農場構想

大隅半島ノウフクコンソーシアムは2021年5月に発足。地方における農福連携関連のコンソーシアムの立ち上げは全国でも珍しい。農業分野での労働力不足、福祉分野での販売力不足や障害者の低い工賃といった課題の解決のために、「農業のもつ多様な人材を生かす福祉力」を発揮することを目的として、大隅半島のさまざまな団体を結びつけるプラットフォームを目指している。2022年3月現在、農業法人6社、福祉事業所9社1団体、さらに6つの地方公共団体も参加している。
発足初年度は、農福連携の現場で有効とされるGAP(農業生産工程管理)やブランディングにつながるノウフクJASの研修会、また先進事例の視察などを行った。先ほど紹介したジャガイモノウフクも、このコンソーシアムの事業の一環に組み込まれた。白鳩会と農家のマッチングや契約の手続きには地元自治体やJAも間に入り、今後の横展開につなげる。

今後は、コンソーシアムの会員である農業法人からの提案がもととなり、「共同農場」の設立も計画している。あちこちの事業所に所属するメンバーが、所属先にかかわらず共に働くための農場だ。圃場(ほじょう)はコンソーシアム会員の農業法人が提供し、作った農産物は会員企業が買い取る予定。まさにコンソーシアムのパートナーシップの力を活用して、地域全体の農業を盛り上げようとしている。
「理念だけでなく、実際の資金を生み出すことが重要です。共同農場で会員が持つ販路に直結する作物を作れば売り上げにつながりやすい。そこに多様な人が集まって働いたり交流したりすることもできるということで、共同農場を試験プロジェクトとしてやってみようということになりました」(中村さん)
また、これらは地元の農業法人の労働力不足という課題の解決にも寄与することが期待されている。コンソーシアムの会員の中には引きこもりの支援を行う団体もあり、地域に潜在的にいる引きこもりの当事者の仕事とのマッチングも、活動の重要なテーマだからだ。多様な人々が集まり働く共同農場は、マッチングの場としても機能しそうだ。

ジャガイモノウフクの際、地元の人々とともに休憩する花の木農場の利用者

時代は変わり、これまでと同じやり方では、農業も地域も継続することが難しくなっている。だからこそ、多様な人や異業種とつながる「パートナーシップ」によって新たな視点やノウハウを取り入れることが必要だ。そんなパートナーシップの土台となる農福連携はもはや「農業×福祉」の枠を超え、地域課題を解決するための方策にもなりつつあるようだ。

画像提供:社会福祉法人白鳩会

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