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農家は気候変動に“適応”すべき? これからできることと必要なこと

農家は気候変動に“適応”すべき? これからできることと必要なこと

現在進行形で進んでいる気候変動。この100年で日本の平均気温は1.26℃上昇しているといいます。一見するとあまり大きな数字には見えませんが、天候へ対する影響はかなりのもの。しかも今後は更に異常気象や気象災害が増えていくことも予想されています。そんな気候変動に対して、農家は一体どうすればよいのでしょうか。

気候変動はすでに始まっている

ここ数年、夏に気温が40℃を超えることに驚かなくなったという人も多いのではないでしょうか。筆者は神奈川県川崎市で農業を営んでいますが、他の地域と同様、夏の暑さが作物に与える影響を身にしみて感じています。
もしこの先もっと暑くなってしまったら、僕の畑は、いや、日本の農業はどうなってしまうんだろう……。

そんな農家の不安をぶつけるべく、専門家を取材することにしました。今回取材したのは民間の気象情報サービス会社、株式会社ウェザーニューズ。一般の気象情報だけでなく、陸海空のインフラなど幅広い業界に気象情報を提供しています。
また同社は気候変動の問題にも積極的に取り組んでおり、農家にとっても気候変動は大きな問題であると捉えています。

一体私たち農家は何を考え、どう行動すべきなのでしょうか。気候変動リスク分析サービス「Climatenews(クライメートニュース)プロジェクト」担当の伊佐地芳朗(いさぢ・よしお)さんに聞きました。

気候変動による影響

──農業にとって天気は非常に重要な要素です。シンプルに作物の出来に影響するのはもちろん、農薬散布などの農作業にも深く関係しています。気候変動によって、日本の気象はどのように変化しつつあるのでしょうか。

この100年で日本の年間平均気温は1.26℃上昇しています。
真夏日(最高気温30℃以上の日)はこの100年で年間7日増え、猛暑日(同35℃以上の日)は年間2日も増加しています。
加えて大雨の頻度も増えています。ゲリラ雷雨の発生が問題になっているのはもちろん、台風の勢力も一つ一つが強力になっていて、農作物やハウス設備の大きな被害が予測されます。

──ゲリラ豪雨は本当に困ります。突発的な雨で一日の作業が台無しになってしまうことがあるんですよね。
このほかに、農家にとって気候変動はどのような影響があるのでしょうか?

いま盛んに栽培されている作物は、現在の気候に合うように作られた品種です。このまま気温が上昇していくと、栽培適地が変わったり、収穫量や品質へ影響することも考えられます。また暑い日が増えることで作業中の熱中症リスクが高まることもありえます。

──もし気候変動がこのまま進むとどうなるのでしょうか?

IPCC(気候変動に関する政府間パネル)という組織の想定によると、最も気温上昇が進んだケースの場合、2100年までに最大で5.7℃気温が上昇する可能性があります。東京では真夏日以上の高温になる日が現在の2倍以上に増え、最高気温40℃を超えるような異常に暑い日が続くような状況も想定されています。

──あくまで最悪のケースではというお話ですが、80年後の農家は非常に辛い環境での仕事を強いられていそうですね。他にも影響はありますか?

夏の期間が伸びたり、暑い時間帯が長くなったりすることも想定されています。早朝も暑さが引かず、かなりの気温になるだろうと言われています。

──夏の農作業は涼しい早朝に行うものですが、それすらも熱中症の危険が伴うようになるかもしれないんですね!

農業を守るには「適応」が必要

気候変動は社会の経済活動など、複雑な要因によって引き起こされる問題です。
ひとりの農家としてできることなどなさそうに思えてしまいますが、ただただ座視しているわけにもいきません。農業を守り未来へ伝えていくには何が必要なのでしょうか。

中長期的な適応と、明日からできる適応

──気候変動に対し、農家はどう備えるべきでしょうか?

気候変動の影響を想定し、新しい気候条件に備える“適応”が必要でしょう。
例えば将来起こり得るリスクを把握し、必要に応じて先進的な設備への投資や作物の品種改良をすることは中長期的にできる適応です。
他にも、日頃から異常気象や気象災害に備えた情報を収集し、適宜どうすべきか対策を取ることも短期的な適応になります。

──適応には短期的なものと中長期的なものがあるんですね。

そうですね。ここまで気候変動がもたらす悪い影響だけをお話ししてきましたが、メリットになる面もあります。例えば、気温が上昇することで、これまで栽培することのできなかった作物が生育できるようになる可能性もあります。こういった作物にいち早く対応して栽培技術を向上させることも適応になるでしょう。

南国のフルーツも栽培できるようになるかも?

──農家が将来的な天候の予測をして中長期的な対応を考えるのは難しいのではないかと感じているのですが。

天候の専門家であるウェザーニューズには、農家に代わって分析したデータを提供するサービスがあります。

気象情報サービスの活用で適応の精度を上げる

気候変動リスクを分析するには

──気象情報サービスですか。普段から目にするような一般的な天気予報とはどう違いがあるのでしょうか?

ウェザーニューズが提供している「Climate Impact(クライメート・インパクト)」は、独自に蓄積してきたノウハウと解析技術を生かすことで、気候変動がビジネスへもたらす影響を、オフィスや工場、店舗などの拠点に特化して分析し、評価するというサービスです。天気予報とは異なり、数年や数十年単位での気象情報を分析することができます。

専用ソフトでリスク評価を確認できる(画像提供:ウェザーニューズ)

──数年から数十年ですか! 確かにそこまで長い期間の天候を分析できるのは天候の専門家ならではといった感じですね。気になる農業分野ではどのような分析ができるのでしょうか?

農業で気になるのは自然災害や気温の問題だと思います。このサービスでは、将来的な地域ごとの大雨による自然災害や、気温上昇による農作物の収量への影響など、きめ細かなリスク分析が可能です。

──なるほど。でもお恥ずかしいことに、分析データだけを見てもしっかり活用できるか不安なんですよね。

確かに個人で分析データを読み取り、適応策を考えるのは難しいことだと思います。ですので分析データを積極的に活用してもらうため、自治体と連携を図っています。現在は栃木県那須塩原市と千葉県千葉市と協定を結んでいますよ。とくに那須塩原市は気温や降水量などに関する分析や、農作物への影響調査を行い、自治体が主体となって農家さんに向けた情報発信を行っているところです。

──農家ひとりでは不安なことだらけですが、自治体が主体となって広報や計画立てをしてくれたらかなり助かりますね。ただ全ての自治体がすぐに動いてくれるわけではないと思います。個人でもできることはないのでしょうか?

高性能気象IoTセンサーの「ソラテナ」を使えば、自分だけの天候データを分析することができますよ。

自分だけの観測データ分析

──高性能気象IoTセンサーというと、かなり大掛かりな装置をイメージしてしまいます。

ソラテナは重さ1キロほどでコンパクトな装置です。電源がない圃場(ほじょう)でも太陽光パネルを使うことで任意の場所に設置できます。1分単位でピンポイントに気温や風速、湿度など8つの要素を観測してくれて、スマートフォンやパソコンからデータを確認することができます。農家の皆さんが大雨や強風が吹く前に対策をとるのに役立つと思います。

片手で持つことができるセンサー(画像提供:ウェザーニューズ)

風速を測ることで農薬散布のタイミングを調整している(画像提供:ウェザーニューズ)

ブドウ栽培でも活用されている(画像提供:ウェザーニューズ)

──強風が吹いてから慌てて支柱を補強したり、トンネルやマルチの様子を見に行ったりするのは大変ですものね。事前にわかるのであれば助かります。

気候変動を抜きにしても、農業にとって天気予報は欠かせません。地方で農業を営んでいる場合、アメダスなどの観測機が設置してある地域と、圃場のある地域では天気が違うというケースも少なくありません。しかも天気は毎分データが変わってしまうようなとても繊細なもので、農作業に加えその都度天気を確認するというのは結構な仕事量です。その点ソラテナは自動で観測できるので、かなり有用だと思います。

天候の推移をグラフで見ることができる(画像提供:ウェザーニューズ)

専用アプリで圃場の天気を直感的に確認できる(画像提供:ウェザーニューズ)

今すぐできる対策は?

──Climate Impactやソラテナの良さはわかったのですが、いきなり有料サービスを使うのは少し不安です。気軽に取り組めるものはありませんか?

ウェザーニュースアプリをぜひ試してみてください。基本的に無料で、1平方キロごとの天気を見ることが可能です。全国に1万3000カ所の観測網があり、ユーザーからの天気報告も予報に活用しているので、天気予報の精度にはかなりの自信がありますよ。

──ウェザーニュースアプリ、実は僕も使っています。とくに雨雲レーダーが便利ですよね。

そうですね。雨雲レーダーで、降雨のタイミングなどを正確に把握できるので、天気が怪しいときにどこまで農作業をするかの判断材料として使っていただければ。
もちろん週間天気も見ることができますし、1時間ごと・5分ごとの天気や気温、降水量や風向き、風速など細かくチェックすることができます。
天候に関するニュースやライブ番組なども配信しているので、農作業以外のときも活用してもらえると思います。

リアルタイムで雨雲の動きがわかり、かなり便利(画像提供:ウェザーニューズ)

おわりに

僕たちが経済活動をしている以上、気候変動は避けられません。
仕事の損失をできるだけ抑えるためにも、気候変動に適応した農業をすることが非常に大切になってくるでしょう。筆者もまずは明日からできることに真摯(しんし)に取り組んでいこうと思います。

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