残ってしまった野菜の活用に、ソーラーフードドライヤー
ソーラーフードドライヤーは、その名の通り“太陽光で食品を乾燥させる道具”です。晴れた日に、野菜を洗ったり切ったりしてセットすれば、通常の2〜3倍の速さで干し野菜が作れる優れモノ。
このソーラーフードドライヤーについて話を聞いたのは、阿部由佳(あべ・ゆか)さん。埼玉県比企郡ときがわ町の農家民宿「楽屋(らくや)」を拠点に、半農半コミュニティカフェを目指し、暮らしと仕事をつくるワークショップ屋「さるつぼ」を主催しています。
阿部さんのワークショップでは、ソーラーフードドライヤーのDIY講座を開催しています。
阿部さん
太陽光を利用するソーラーフードドライヤーのメリットは、まずエコであること。そして電気代やガス代などがかからないので経済的です。
日本では冷蔵庫のない時代から、海藻や野菜を天日干しした乾物が保存食として作られてきました。その代表と言えば、切干大根でしょう。生のダイコンよりうまみや甘みが凝縮され、煮物など多彩な料理に使われています。今では青菜など、かつてポピュラーではなかった乾燥野菜も店頭で見かけるようになりました。
阿部さん
家庭でも、消費しきれなかった野菜を捨ててしまうのはもったいない話。また、生産者であれば、出荷するには小さすぎたり大きすぎたりする規格外の野菜などは、生ゴミとして廃棄するとフードロスであり、収入面でマイナスです。干し野菜にすれば保存できるほか、加工品としての販売も考えられます。販売に届け出や許可が必要な乾燥野菜もあるので、その詳細は保健所に確認することをおすすめします。
ソーラーフードドライヤーの仕組み
阿部さんがソーラーフードドライヤーなどの非電化アイテムについて学んだのは、「非電化工房」で1年間、住み込みの弟子として修行した時。非電化工房は「エネルギーとおカネを使わなくてもホドホド豊かに生きられる」をモットーとする、栃木県那須町の自立共生塾です。本格的なDIYも教わったとのことで、卒業制作では金属加工の工程も含まれる「非電化冷蔵庫」に取り組んだそうです。修行終了後の2018年4月、阿部さんは地元の山形県で初めてのワークショップを開催。以降、全国各地で活動してきました。
ソーラーフードドライヤーの仕組みをかんたんに説明すると、太陽の直接光と反射光を箱の中に取り込み、熱を蓄え、箱内で緩やかな上昇気流を発生させ、食品の乾燥を促すというもの。
阿部さん
冬場、特に寒い地域では食品を短時間で乾燥させるのは厳しいものの、夏場はあっという間です。干し網やざるを使った天日干しでは時間がかかってしまいカビの心配があるトマトも、1日でドライトマトに!
使用中は、2〜3時間おきにドライヤーの向きを太陽の方向に合わせることも大切ですね。
そのほか、天日干しをする際の心配事と言えば、突然の雨や強風。その点も、箱型のソーラーフードドライヤーであれば、乾燥中の食材がびしょぬれになったり、飛ばされたりすることがありません。そして、今回紹介しているものは箱の部分に木材を使用していますが、金属加工ができる人は金属製のもの、簡易版を求めるのであれば段ボール製のものも作れるそうです。
省エネ・フードロス削減の糸口に(まとめ)
電気を使わないソーラーフードドライヤーは、私たちの身近にある問題のひとつを解決する糸口になるのではないか、という印象を持ちました。特に先進国の課題である「農産物のフードロス」を個人や家庭レベルでも減らせる道具であることは間違いなく、保存食は災害時にも有効活用できます。
阿部さん
地球温暖化の影響とも言われる異常気象が世界中で観測され、ニュースなどでその映像を目にする機会が増えました。それに伴い、個人でもできるエコ活動に取り組む人も増え、家庭内の節電のほか、マイバッグやマイボトルなどを持ち歩く人が少なくありません。さらに、ソーラーフードドライヤーでフードロスを減らす、日常生活に非電化アイテムを取り入れるというのも、一つの手ですよ!
ソーラーフードドライヤーワークショップについて詳しくはコチラ(さるつぼホームページ)
画像提供:さるつぼ(阿部由佳)