鳥獣害対策が関係人口拡大の取り組みに!? 積年の知恵とデジタルの力で「誰でもできる農業」と「住みやすい農山漁村」を実現するには|マイナビ農業

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鳥獣害対策が関係人口拡大の取り組みに!? 積年の知恵とデジタルの力で「誰でもできる農業」と「住みやすい農山漁村」を実現するには

鳥獣害対策が関係人口拡大の取り組みに!? 積年の知恵とデジタルの力で「誰でもできる農業」と「住みやすい農山漁村」を実現するには

農山漁村地域では人口減少と高齢化の進展が著しく、農業をはじめ、生活におけるさまざまな活動が困難になりつつある。こうした状況を受けて宮城県では、2021年にデジタル技術を活用した市町村の取り組みを支援する「みやぎ農山漁村デジタルトランスフォーメーション推進事業」を始動。モデル地区に選ばれた七ヶ宿町では「鳥獣害対策」を基軸に町のありたい姿に向けた取り組みを進めている。同町の三上広信さん、本事業を担当する農山漁村なりわい課の高橋真由美さん、事業策定を伴走支援した日本総合研究所の福田彩乃さんが、その成果と今後の展望などについて鼎談した。

宮城県 農政部 農山漁村なりわい課 高橋真由美さん

1988年入庁。土木部建築宅地課、保健福祉部社会福祉課などを経て2021年より農政部農山漁村なりわい課で副参事兼総括課長補佐を務める。

七ヶ宿町 農林建設課 三上広信さん

七ヶ宿町出身。1994年に七ヶ宿町役場に入所。教育委員会、総務課、観光課などを経て、2020年より、現部署にて農林係の主幹および農業委員会事務局で主幹を務める。

聞き手:株式会社日本総合研究所 福田彩乃さん

一橋大学経済学研究科修了。JAグループのシンクタンクを経て、2020年に株式会社日本総合研究所(以下、日本総研)に入社。現在は創発戦略センターのコンサルタントとして、農業経営に関する調査や支援に動く傍ら、農村DXの推進に注力している。

農村DXとは
日本総研が提唱する、農村全体をデジタル化して、儲かる農業と住みやすい農村づくりを実現するためのコンセプト。「デジタル技術を農業生産だけに利用するのではなく、農村づくりにも活用し、組織や社会システム自体を変革し、新たな価値を生み出すこと」と定義され、スマート農業の次の一手として注目を集めている。

ビジョン策定を支援して、市町村によるデジタル化を推進

福田さん:まず、昨年策定したみやぎ農山漁村デジタルトランスフォーメーション(以下、DX)推進事業の概要と開始の背景についてお聞かせください。

高橋さん:デジタル化は都市部で着々と進んでいますが、いわゆる中山間地などの農山漁村地域では人口減少や高齢化が顕著で、集落機能の低下や生活インフラの脆弱化など、農業を取り巻く情勢は一層厳しさを増しています。そうした意味では、農山漁村地域こそ、デジタル技術を導入して、農作業の効率化や省力化のほか、地域活性化に向けた付加価値の創出が必要です。

農山漁村なりわい課は、従来の農業・産業振興に加え、人の知恵や地域資源を総動員して農山漁村を振興し、なりわいの創出につなげることを目的に2019年に新設された部署です。2021年には農山漁村地域が抱える課題と将来のありたい姿を明確にしたうえで、デジタル技術の活用でそれらの課題を解決へ導くことによって、市町村によるDXの推進、それに伴う農山漁村地域の方々の意識醸成をはかることを狙いとして本事業がスタートしました。今後、支援対象の市町村を徐々に増やしていこうと考えています。

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事業をスタートした経緯を語る高橋さん

福田さん:初年度の昨年は、七ヶ宿町などがモデル地区に選定され、私たち日本総研が伴走支援させていただきました。鳥獣害対策のDXをテーマに、県のDX推進事業へ自ら手を挙げられましたが、どのような問題意識があったのでしょうか。

三上さん:七ヶ宿町では主にサル被害対策として、2001年から県や国の支援を受けてさまざまな施策を講じてきました。これまでは電気柵やワイヤーメッシュ柵の設置などで、物理的な被害はなんとか食い止めてきましたが、それだけでは根本的な課題解決には至りません。捕獲後の事後対応や各団体間の連携、現場の省力化も含めてデジタル化できないかと考えていました。

「鳥獣害対策」を地域住民が連携するきっかけに

福田さん:計画の策定に向けて、昨年9月から一緒に課題整理をして町のありたい姿と解決策を打ち出し、ビジョンを描くお手伝いをさせていただきました。現場の皆さまにお話を伺う中で、鳥獣害自体よりも猟友会や農家、町の情報共有がスムーズに行われていないことに課題をお持ちだということがわかりました。「地域外の人も巻き込んで、事後対策から事前対策へ転換することで関係人口が拡大していくまち」をありたい姿の構想として描かせていただきましたが、実際に計画を立てた立場で感じたことをお話いただけますか。

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七ヶ宿町の取り組みを伴走した日本総研の福田さん

三上さん:当初は鳥獣害被害防止に限ったDX化を想定していましたが、町内のあらゆる方と意見を交える中で、猟友会や農家などいろいろな分野との関連が根深い問題であることに気付き、ありたい町の姿を目指す手段の一つとして鳥獣害対策を据えることになりました。今回の計画の中では、3つのありたい姿を描きました。

まず、安心安全で鳥獣害によって営農意欲が削がれず農業生産や生活に集中できるまち。次に、他分野との連携による効率的で効果的な対策が行われているまち。そして、鳥獣害対策を通して関係人口が拡大するまちです。

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町のありたい姿について熱弁する三上さん

高橋さん:デジタル技術で農山漁村を変革していくのは、あくまでも地域の方々です。地域の方々が前向きにデジタルを活用できる環境を整えるために、皆さんに将来のありたい姿を、いい喧嘩をしながら描いていただくことができました。ここから、短期、中期、長期のビジョンでDX化をはかっていくことが大切ですね。

デジタル環境を整備して、市町村の自走をサポート

福田さん:今後、県では七ヶ宿町のDX計画に対してどのような支援をされるのでしょうか。

高橋さん:鳥獣害に限らず、私たちもスマート農業推進の観点から計画を後押しする目的で、今年度、RTK基地局の整備やスマート農業の機械導入費の支援などで事業を推進していきます。

三上さん:昨年度、町では補助金を活用しまして動物用発信機を購入しました。また、今回の支援で基地局が建つので、農村DXの加速化に繋がるのではないかと考えています。

福田さん:今までは鳥獣害を抑える、減らすところに注力していましたが、今後は発想の転換をして、都市部の人たちに鳥獣害対策が新たな学びや発見となるように発信していこうとしていますね。ここでの町の意図について教えてください。

三上さん:我々が描くステップでは、最終的に鳥獣害対策をゲームと同じような体験としてできるようにすることで、関係人口を増やすことに生かしていきたいです。それには通信施設やデジタル技術が本当に不可欠ですね。

福田さん:最後に県としての抱負をお聞かせいただけますか。

高橋さん:農山漁村なりわい課では、今後も「誰でもできる農業」「住みたくなる(住みやすい)農山漁村」を実現するデジタルトランスフォーメーションの事業を進めていきます。業務委託により福田さんに手掛けていただいた、七ヶ宿町のありたい姿やDX計画を先行事例として、対象市町村を増やしながら横展開をはかっていければと思います。

取材後記

農山漁村地域のDX化とスマート農業を推進し、「誰でもできる農業」「住みたくなる(住みやすい)農山漁村」への変革を目指す宮城県。農山漁村なりわい課による本事業は、モデル地域に選ばれた市町村によるDX計画策定のプロセスを、民間企業の力を借りて支援するものだ。七ヶ宿町では、地域住民たちによるワークショップでの忌憚のない意見交換により発想が飛躍してワクワクする計画になった。DX化の実現には、地域が自らありたい姿を考え、自走することがいかに重要であるかが、改めて感じられた。
同課では事業の成果である事例を横展開するために、全体会議を設置してセミナー等を開催している。DXを進めたいが地域に向けてどのような支援をすればよいのかわからないという自治体にも参考になる取り組みだ(ライター/さとうともこ)。

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儲かる農業があり、かつ住みやすい農村を実現する|農村DX(農村デジタルトランスフォーメーション)
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