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地方自治体と進める「農村DX協議会」

地方自治体と進める「農村DX協議会」

農業振興のための施策として、スマート農業の加速と農業におけるDX推進が掲げられています。株式会社日本総合研究所(以下、日本総研)では、農業をはじめとしたビジネスと農村生活に関連する情報や機能をAI/IoT等のデジタル技術で一体化させて新しいサービスを開発し、農村におけるビジネスおよび生活の革新を目指す「農村デジタルトランスフォーメーション(以下、農村DX)」を提唱し、2019年には地方自治体を会員とする農村DX協議会(※1)を立ち上げました。日本総研が実施した調査(※2)から見えてきた地方自治体のニーズと農村DX協議会の概要をご紹介します。

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地方自治体のニーズは「情報提供」

農業・農村のDX推進にあたり、地方自治体が求める取り組み・支援を調査したところ、「先進的な地域の事例についての情報提供」(66%)、「農業者や地域住民の問題意識やニーズについての情報提供」(44%)が上位に挙げられました(図1)。

情報提供を求める地方自治体は、具体的にどのようなニーズを持っているのでしょうか。回答自治体に対して追加ヒアリングを行ったところ、「他の地域の取り組みについて情報収集ができていない」、「デジタルやDXの重要性は感じているもののアイデアがない」、「農業者や地域住民の問題意識・ニーズについては、自身の地域での課題を把握するだけでなく、先進的な取り組みをしている地域の現場の声が聞きたい」といった声が聞かれました。地方自治体には、先進的な事例を知り自らの地域の課題と照らし合わせて取り組みを検討したいというニーズがあることが分かりました。

関心テーマはスマート農業、周辺領域への広がりも

日本総研が考える「農村DX」のモデルのうち、地方自治体の関心が高いものを調査したところ、「スマート農機やドローンを活用し、農地やインフラをまとめてモニタリングする取り組み」(46%)、「スマート農業技術を活用した高齢者の農業支援」(46%)、「地域ぐるみでスマート農機などをシェアリングして活用する取り組み」(37%)といったスマート農業に関わるモデルが上位に挙げられました(図2)。

次いで、「地域内の目撃情報や捕獲情報を一元管理することによる効率的な鳥獣害対策」(33%)、「生産過程のデータなどを活用した農産物の付加価値向上」(29%)といったモデルが挙げられています。これらは、農業生産を行う上で関連してくるモデルであり、「農業生産の周辺領域」と言うことができるでしょう。

農業生産の周辺領域のモデルに関心のある地方自治体に対してヒアリングを行ったところ、中山間地域等スマート農業技術の活用が難しく導入が進んでいない地域ほど、鳥獣害対策や農産物輸送など、農業生産以上に地域の暮らしと大きく関わる領域でのDXの必要性を強く感じていることが明らかになりました。

また、暮らしに関わるDXの必要性を感じていても具体的な取り組みを実施している地方自治体は多くないこと、農業生産の周辺領域では農業分野を超えて他分野の関係者と連携する必要があるものの、地方自治体の農業関連部署にとっては分野を超えた連携のハードルが高いことも明らかになりました。

結果から得られる示唆

調査結果から、以下2つの示唆が得られました。

①先行地域の事例や現場当事者の声などの情報提供ニーズ

農業・農村のDXを推進するにあたり地方自治体が求めるものとしては、取り組みの検討に生かせる情報提供との回答が多く、その理由としてアイデア不足や現場当事者のニーズ把握の難しさが挙げられました。これまで日本総研が農村DX協議会会員等の地方自治体に行ったインタビューでも、DX推進は、情報収集、取り組みのアイデア検討、取り組みの具体化、取り組みの実施というプロセスで進められていることが明らかになっています。このことから、DX推進の入り口において、先行して取り組む地域の事例、現場当事者の声といった情報提供のニーズがあると考えられます(図3)。

②農村地域の暮らしにかかわる農村DXモデルに対する関心

「農村DX」のモデルの中では、スマート農業に関わるものへの関心が特に高く、次いで農業生産の周辺領域への関心が高いという結果になりました。一方で、農業分野だけでなく他の分野で地域に関わるステークホルダーとの連携が必要になるものの、分野を超えてDX推進を検討する場がほとんどないという声もあり、取り組みにおいては領域横断的な対話を支援するニーズがあると考えられます。

日本総研が運営する「農村DX協議会」

2019年に日本総研が設立した農村DX協議会は、全国の地方自治体とともに農村DXの具体的なアイデアや実現手法を検討し、各地域における農村DXの推進・実現を目指しています。2022年度は、上記の調査結果から得られた示唆を踏まえ、農村DXにつながる先進事例やアイデアの情報提供のほか、日本総研が農業分野をはじめとする様々な領域においてDXを推進してきた経験をもとに地域におけるDX推進のための対話促進を支援します。

農村DX協議会の会員は、都道府県および市町村を対象としています。また、中央省庁、農業関連団体等はオブザーバーとしてご参加いただけます。入会費・会費はありません。本協議会へのご入会を希望・検討される方は、以下の連絡先までお問い合わせください。資料を送付させていただきます。

創発戦略センター 農村DX協議会事務局
E-mail:100860-nousonDX@ml.jri.co.jp

※1 「農村デジタルトランスフォーメーション協議会」設立について

※2 調査の実施方法
・調査対象
全国の地方自治体(農業政策もしくは農業全般の担当部署、農業関連部署のない17自治体を除く)
・調査期間および実施方法
アンケート調査票を作成し、メールアドレスが確認できた483自治体にはメール送付(2022年4月15日~2022年5月9日)、それ以外の1,288自治体には郵送送付(2022年5月31日~2022年6月21日)
アンケート回収後、回答自治体の一部に対して電話によるヒアリングを実施
・有効回答数
(第1回)56(11.6%)
(第2回)632(49.1%)

書き手・日本総合研究所 多田理紗子
株式会社日本総合研究所 創発戦略センター コンサルタント
農業・食分野を中心に、新規プロジェクトの企画設計・実行支援および調査・コンサルティングを行う。

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