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地産地消とは? メリット・デメリットや取り組み事例を紹介

地産地消とは? メリット・デメリットや取り組み事例を紹介

全国各地で取り組みが進む地産地消。地域農業の持続的な発展、国産農産物の利用促進など、社会課題の解決につながる施策としても期待されています。ここでは、地産地消のメリット・デメリット、取り組み事例などを紹介します。

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地産地消とは?

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地産地消とは、国内の各地域で生産された農林水産物を、その地域内で消費すること。例えば、直売所やマルシェでの販売、地場産品への加工、地場レストランなどの外食での提供、学校・高齢者施設・病院などの給食への提供、消費者との交流・体験活動による情報発信などの取り組みが挙げられます。単に食材を消費するだけにとどまらず、食料自給率の向上や農山漁村の振興、6次産業化につながるものであることが求められています。

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地産地消に取り組むメリット

生産者が地産地消に取り組むことで、農業経営にプラスとなり、地域生活や環境保全にも貢献することができます。具体的なメリットを見ていきましょう。

消費者のニーズを直接聞くことができる

地域内で販売することによって、生産者と消費者双方の顔が見え、話ができる関係が作られます。コミュニケーションが活性化されることで、生産者にとっては消費者のニーズをその場で聞いて、生産や販売に生かすことができます。直売所やマルシェで消費者と交流しながら販売し、情報を伝えることで消費者の食への理解を深め、食育にも寄与できます。

流通経費を抑えられる

消費地への流通コストを抑えることができ、そのぶんの手取りがアップして収益の向上が期待できます。地域内で配送や販売場所の提供が行われることで経済の循環が高まり、地域全体が潤うこともメリットとして考えられます。また、輸送距離が短縮されることで、環境への負荷を軽減することにもつながります。

直接販売により規格外品も売ることができる

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農産物をさまざまな商品形態で販売できることも利点です。例えば、市場に出荷することが難しい少量や多品目の農産物、調理品、不揃いや規格外品も販売することができます。これまで捨てざるを得なかった規格外野菜を地域で販売・活用することは、手取りアップはもちろん、社会問題である食品ロスの削減にも貢献できる取り組みです。

SDGsに貢献できる

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地産地消の取り組みは、SDGsの多くの目標に貢献します。例えば、目標8「働きがいも経済成長も」のターゲット8.9「2030年までに、雇用創出、地方の文化振興・産品販促につながる持続可能な観光業を促進するための政策を立案し実施する」のベースとなります。目標12「つくる責任 つかう責任」のターゲット12.3「2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食料の損失を減少させる」ことにも大きく関わっています。

地産地消に取り組むデメリット

地産地消には、地域内で生産・流通・販売を回していくからこその課題もあります。生産者が取り組む際にデメリットとなる点を見ていきましょう。

農業以外の業務能力が必要になる

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狭い地域の中で生産・販売を完結させるためには、品質管理やマーケティングなどの知識が必要になります。売上の拡大を目指すなら、販路開拓、流通加工、宣伝・販促などの工夫もしなければならず、そのための時間と経費がかかります。このほか、経理・会計・決済などのバックオフィス業務の負担が増えることも考えられます。

安定供給が課題になり得る

地産地消の推進にあたって、地場農産物の品目数や数量の確保も課題の一つです。特に、小売、外食、宿泊、中食、食品加工、給食などを担う実需者との取り引きでは、安定供給できる体制を整える必要があります。過剰供給をなくしてバランスを取っていくためにも、地域全体で取り組むべきテーマだと言えるでしょう。

地産地消の取り組み事例

地産地消のメリットを生かし、さまざまな創意工夫でデメリットを解消している事例があります。特色のある取り組みで地域活性化や豊かな住民生活に寄与しているケースを紹介します。

富山県富山市「ふれあい青空市 やまだの案山子」

名称 ふれあい青空市 やまだの案山子
形態 直売所での販売
所在地 富山県富山市
取り組み主体 特定非営利活動法人山田の案山子
売上高 4131万円(2019年時点)

山村・過疎地域での住民の所得向上と交流を目的とした青空市を2007年にNPO法人化。地域内の高齢者が自家栽培した少量、多品種の野菜やそれらを使った加工品を販売し、生産者に売り上げデータを通知することで、生産意欲向上と商品確保につなげている。地域内の生産者の減少が課題となる中、耕作放棄地を再生して山菜や野菜を生産することで安定供給に努めている。今後は、山菜料理・郷土料理のレシピ配布、料理教室などで若い世代に向けて食文化の伝承に取り組んでいくとしている。

愛媛県今治市「JAおちいまばり さいさいきて屋」

名称 JAおちいまばり さいさいきて屋
形態 直売所での販売
所在地 愛媛県今治市
取り組み主体 JAおちいまばり さいさいきて屋
売上高 26億円(2019年)

高齢化による離農や後継者不足でJA共販への出荷者が減少する中、小規模農家や兼業農家の活躍、新規就農者の販路拡大などを目的に2000年に1号店をオープン。後に食堂やカフェを新設し、地域農産物のPRとロス削減にも貢献。パウダー工房で野菜・果物を乾燥粉末にするなど、売れ残りの少ない直売所を目指してきた。供給力を確保するためJA営農部や各生産部会とも連携。これからも新鮮で安心・安全な地元産食料を継続的に供給し、農業者と消費者の双方に貢献するとしている。

山形県高畠町「和田地区 自給野菜組合」

名称 和田地区自給野菜組合
形態 学校給食への提供
所在地 山形県東置賜郡高畠町
取り組み主体 和田地区自給野菜組合
提供給食数/日 小学校約170食、中学校約700食
地場産率※(野菜・果実) 68.2%(2019年度:重量ベース)

※地場産率とは、学校給食における地場農産物の利用割合。国が定める現行の目標では食材数ベースで30%以上とされている

子どもたちに安全・安心な地元食材を提供することを目的に、母親らを中心に組合を結成。無農薬野菜を栽培し、1964年から町内の学校給食に安定供給している。毎月の献立は栄養教諭が作成。調理員らが食材を決定し、組合に提示する。有機農業に注力する地区だけに、住民の食の安全・安心に対する意識は強く、組合員は子どもたちの成長を自分たちが支えるという強い思いで野菜を納入している。定例会で給食時間の様子が伝えられることが生産意欲の向上につながっている。組合員の高齢化で生産者が減っているため、地域全体で支えていくことが今後の課題。

沖縄県名護市「運天産婦人科・運天食堂」

名称 運天産婦人科・運天食堂
形態 病院食・食堂への提供
所在地 沖縄県名護市
取り組み主体 運天産婦人科・運天食堂
提供給食数/日 60食(うち病院30食、食堂30食)
地場産率 野菜における地場産率70%以上(品目数ベース)

病院施設の1階にキッズルームを完備した食堂(カフェ)を開設。同院の給食部門が、朝・昼食時間帯に病院給食と同じ料理を器や盛り付けを変えて提供する。減農薬農家やJAから仕入れる野菜は7割以上が沖縄県産。店内に野菜直販コーナーを設けて地元農産物の認知度向上にも貢献している。病院給食も3週間の朝・昼・夕食の料理が重ならないようにレシピを工夫。今後、県産畜産物をより多く取り入れるべく生産者と連携を進め、安心・安全で“元気の出る料理”を提供していくとしている。

兵庫県神戸市「株式会社ナチュラリズム」

名称 株式会社ナチュラリズム
形態 CSA※
所在地 兵庫県神戸市西区玉津町二ツ屋286-1
取り組み主体 株式会社ナチュラリズム
会員数 35人(2020年11月末現在)
農家数 6人

※CSAとは、コミュニティ・サポーテッド・アグリカルチャーの頭文字で地域支援型農業のこと。生産者と消費者が連携し、多様な人材の参加によって実現される新たな農業のモデルである

同社は有機農家と生産者チームを結成。農産物を集めて「CSAセット」として販売する。ピックアップステーションを拠点に、消費者が取りに行き、生産者が受け渡しを行うことで互いの顔が見える関係性を築く。野菜の対価は事前に支払われるため、農家は販売先を確保して収入の安定をはかる。新規就農者を育成し、同セットで販路の確保を支援する取り組みも。CSAの認知を広め、生産に専念できるスキームを構築し、就農しやすく、小規模農家が成長できる環境づくりを進めていくことが今後の展望。

地域資源との結びつきで、広く「食の魅力」が伝わる可能性も

地産地消の取り組みは多岐にわたり、食の安全・安心、食育、食文化の継承、地域活性化などに大きな役割を果たしています。生産者と消費者の交流をはかり、農と食への関心を高めることで、国内生産の拡大や食料自給率の向上にもつながります。直売所などを拠点に、多様な生産者が参加できる地産地消は、さまざまな地域資源と結びつくことで、農村に人を呼び込む魅力的なコンテンツになるでしょう。

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