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6次産業化とは? 事例やメリット・デメリット、成功させるポイントを紹介

6次産業化とは? 事例やメリット・デメリット、成功させるポイントを紹介

農林漁業者の所得向上はもちろん、少子高齢化や過疎化などの地域課題の解決策としても注目される6次産業化。本稿では、農林漁業者が新たに6次産業化に取り組むために知っておきたい事項を紹介します。

6次産業化とは

第1次産業を営む農林漁業者が、農林水産物の生産にとどまらず、それを原料とした加工品の製造(第2次産業)や販売・サービス(第3次産業)までを一体化した事業にすることを6次産業化と言います。1次・2次・3次の掛け算によって農林水産物(1次産品)の付加価値を向上させることが、6次産業化のコンセプトです。

農産物を加工品にする人

2010年12月、政府は農林漁業者の6次産業化を推進するために、「六次産業化・地産地消法」(※)を公布しました。農林水産省による事業認定や補助金などの支援策で、農林漁業者の所得向上と地域の雇用確保をはかり、農山漁村地域の活性化を目指しています。
※正式名称「地域資源を活用した農林漁業者等による新事業の創出等及び地域の農林水産物の利用促進に関する法律」

6次産業化の事例

6次産業化にはいくつかの事業形態があります。消費に至るまでの生産・加工・流通・販売をいかにつないで付加価値を向上させるかがポイントです。

加工品の直接販売

野菜が並ぶ直売所の店内

農産物などを加工品にして、消費者に直接販売します。加工品は自身で商品開発をして、自社または委託で製造して商品化します。直接販売の販路は、直売所や道の駅、マルシェのほか、自社直営店などです。直接販売によって消費者のニーズを把握して商品の改良や次の商品開発に生かすことができます。また、野菜・果物をカットしたものやペーストなどの1次加工品を飲食店などに販売する事例もあります。

加工品のネット販売

ネットショップで販売する人

農作物などを加工品にしてインターネットで通信販売します。ネット販売の主な手段としては、自農園のウェブサイトなどに販売サイト(ECサイト)を開設する方法、農産物に特化した産地直送サイトで販売する方法、インターネットショッピングモール(大手ECサイト)に出店する方法などがあります。全国に商品を販売することができますが、梱包や配送手配なども自社で行うことになります。

収穫体験

畑で収穫したサツマイモ

自農園で収穫などの農に関する体験を消費者にレクリエーションとして楽しんでもらうサービスです。主に「観光農園」の業態で、果物や野菜の収穫をはじめ、花きの観賞など、さまざまな作物で行われています。収益モデルは、入園料、収穫物の対価販売、園内での農産物や加工品の販売などさまざまです。農家が利用者に農業を教える「農業体験農園」などの業態もあります。

農園一体型レストラン

従来は一部区域のみで特別に認められていた農家レストランの農用地区域内での設置が、2020年から全国で可能になりました。農業者が自身の生産する農畜産物に加え、同一市町村内または農業振興地域内で生産される農畜産物を主な材料として調理して提供する場合は、農家レストランを農用地区域内に設置することができます。「農家レストラン」とは、農家が自身で育てた農畜産物や地域の食材を使った料理を提供する事業で、郷土料理、和・洋食、カフェなどさまざまな業態があります。

農家民宿

農家民宿(農林漁業体験民宿)とは、宿泊客に農林漁業の作業や加工、または料理教室や暮らしなどの体験を提供する宿泊施設を言います。農家民宿の開業には、旅館業法などの営業許可を取得することが必要ですが、「農山漁村余暇法」に基づいて一部の許可基準などが緩和され、一般の宿泊施設と比べて開業しやすくなっています。農林漁業者および農林漁業者が組織する団体などが(条件を満たせば非農林漁業者も)事業者として登録を受けることができます。

6次産業化のメリット

メリットとデメリットを考える人

農林漁業の6次産業化によって、生産者や地域にさまざまなメリットがあります。主なものを紹介します。

所得が向上する

農産物の市場相場の変動や生産資材の高騰などで農業所得が伸び悩む中、6次産業化に取り組むことで所得の向上が期待されます。生産・加工・流通・販売の一体化により、農林水産物の付加価値を向上させ、利益を生み出すことができます。また、加工、観光農園、農家レストラン、農家民宿などの事業に取り組むことで農業関連所得を増やすことができます。

生産物をブランド化できる

農山漁村に由来するさまざまな地域資源を活用して、生産物をブランディングすることができます。特に食品は、生産地の自然条件や地域の歴史・文化の影響を強く受けているため、ブランド化しやすいことがメリットです。6次産業化によって農産物を加工して多様な形で商品化でき、さまざまなルートで全国に広めることができます。知名度の向上は価格競争の回避につながります。

雇用の拡大につながる

農業生産だけの事業内容では、人件費の面で収穫などの繁忙期以外に人を雇用することが難しい状況ですが、2次産業、3次産業を一体化させることで通年雇用が可能になります。また、新規事業によって新たな仕事をつくることができ、地域の人口流出を食い止め、新たに
人口流入を促すことにもつながります。従業員が増えればジョブローテーションが可能になり、人材育成や働き方改革の促進も期待されます。

地域が活性化される

所得の向上や雇用の拡大によって、地域経済が活性化されます。また、観光農園や農園一体型レストラン、農家民宿などによってツーリズムが促進されることで、観光客などの交流人口を増やすことができます。さらに、6次産業化の進展に伴い、地域と継続的に関わりを持つ関係人口の増加にもつながり、事業の発展が促進され、地域が活性化される好循環が生まれます。

6次産業化のデメリット

6次産業化にはいくつかのデメリットもあります。事業を妨げる要因になることがあるので把握しておきましょう。

費用がかかる

まず、加工場や店舗などの施設・設備を整えるための資本金が必要です。日本政策金融公庫が2011年に実施した「農業の6次産業化に関するアンケート調査」によると、6次産業化における黒字化までの年数は、全体で平均4.1年で、最短0年から最長25年の開きがあります。また、業態別の黒字化までの年数は、直接販売で平均3.5年、農産物加工で平均4.3年、農家レストランでは平均3.1年となっています。事業立ち上げからの数年間は資金繰りが苦しいかもしれません。

専門知識が必要となる

農業生産の専門性とは異なる領域で、食品加工・製造・衛生、流通、販売、接客・サービス、さらに消費者にリーチするための宣伝・デザイン・マーケティングなどの知識が必要となります。これらの技術やスキルの習得には時間がかかり、専門知識を持つ人材の採用や外注委託には費用がかかるため、個人農家が事業に取り組む際の大きな課題になっています。

厳しい衛生管理が必要になる

2021年6月1日より、食品の製造・加工、調理、販売など食品を扱うすべての事業者に対して、衛生管理の国際的な手法であるHACCP(ハサップ)導入が義務化されました。一般事業者はHACCPに基づく衛生管理、小規模事業者はHACCPに沿った衛生管理をする必要があります。1次生産のみであれば対象外ですが、個人農家が加工などに取り組む場合もHACCPに沿った衛生管理の対象となり、その記録・保存・振り返りなどをすることになります。

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在庫が発生するリスクがある

在庫管理に頭を悩ませる人

商品を開発して通販や直売所などの販路に乗せても、計画どおりに売れるとは限りません。さまざまな原因によって、製造しても出荷できなかったり、販売先からの返品などで商品が在庫化したりすると、保管場所が足りなくなってきます。さらに、食品には消費期限があるため、それまでに売り切らなければコストの回収ができず、最悪の場合は廃棄処分するための費用がかかってしまいます。

6次産業化を成功させるポイント

6次産業化を成功させるには多角的な視点が必要です。自治体の窓口や専門家に相談するなどして事業の計画を立てることから始めましょう。

6次産業化セミナーに参加する

セミナー講師と受講生

6次産業化について学びが得られ、情報収集の場になるのが、6次産業化セミナーや研修です。都道府県ごとに設置された6次産業化サポートセンター(農山漁村発イノベーションサポートセンター)のほか、市町村などの自治体、関連団体、民間企業が主催するものもあります。テーマは、商品開発から、加工技術、販路開拓、ブランディング、品質管理や食品表示などさまざま。専門家の講義をはじめ、ワークショップ、先進事例の発表など、内容も多岐にわたり、同時に交流会や相談会が行われることもあります。多くのセミナーが無料で開催されています。

6次産業化プランナーに相談する

6次産業化プランナーは、農林漁業者の6次産業化に向けた事業化を支援する専門家です。民間企業の専門職、コンサルタント、中小企業診断士らが名を連ね、商品開発、販売、流通、加工、マーケティングなど、6次産業化の課題解決のアドバイスや総合化事業計画(後述)の認定に向けたサポート、フォローアップなどを行っています。都道府県ごとに設置された6次産業化サポートセンター(農山漁村発イノベーションサポートセンター)が、相談窓口となっています。

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総合化事業計画認定者になる

総合化事業計画認定者とは、農林漁業者等が6次産業化に向けて生産・加工・販売を一体化するための「総合化事業計画」を作成し、農林水産大臣に認定を受けた事業者のことです。対象となる事業内容は、新商品の開発・生産・需要開拓、新たな販売方式の導入・改善、生産方式などの改善です。認定事業者になると、6次産業化プランナーによる継続的な経営サポートが受けられます。また、資金面では無利子資金の償還期限・据置期間の延長、低利の短期運転資金の貸付け、新商品開発・販路開拓に対する補助、加工・販売などの施設整備に対する補助を受けることができます。

6次産業化で農業をビジネスに

6次産業化とは、生産・加工・流通・販売の過程で農林水産物の付加価値を向上させることです。そのために生産者がビジネスを創造して事業を経営していくことになります。ビジネスを成功させるにはいくつもの課題がありますが、専門家のサポートや多分野の客観的な視点を入れることで解決の糸口が見えてきます。

今、農山漁村や地域の価値が見直され、国内外の注目を集めています。自社の強みと地域資源を生かし、地域のさまざまな事業者と連携して6次産業化を推進することでビジネスを発展させられるかもしれません。

6次産業化の事例はこちら

<参考資料>
農林漁業の6次産業化(農林水産省)

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