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期待高まるバイオマス産業~地域産業との融合で地域経済活性化を目指す~

期待高まるバイオマス産業~地域産業との融合で地域経済活性化を目指す~

バイオマス産業は、カーボンニュートラルの実現、枯渇性資源からの脱却、地政学的リスクへの対策といった近年の主要な社会課題の解決の観点で、各方面からの期待が高まっています。バイオマス産業と農林水産業は切っても切り離せない関係にあり、相互に盛り上げられる可能性を秘めています。例えば、農業で生じる残渣(ざんさ)や廃棄物をバイオマス資源として利用したり、農業用途で使いきれなくなった耕作放棄地をバイオマス資源の生産に活用したりするなどの取り組みが全国各地で始まっています。本稿では、地域一体となり、農林水産業とバイオマス産業を活性化させていくための視点をご紹介します。

多様な側面から期待が高まるバイオマス産業

2002年に発表された「バイオマス・ニッポン総合戦略」を皮切りに、バイオマスの利活用が推進されてきました。バイオマスは、カーボンニュートラルの実現、枯渇性資源からの脱却、地政学的リスクへの対策といった近年の主要な社会課題の解決に不可欠とされ、実際に、燃料、製品、肥料など各方面での需要も高まっています。その中で、各地域で分散的に生じるバイオマスを高付加価値な商材に変換し、地域経済活性化の起爆剤として活用することが期待されるようになってきています。例えば、2009年に策定されたバイオマス活用推進基本計画では、2025年までに全都道府県および600市町村がバイオマス活用推進計画を策定する目標を打ち出しています。

バイオマス活用による地域活性化には「地域産業との融合」が鍵

しかしながら、バイオマス活用推進基本計画の目標達成には既に黄信号がともっています。財政負担や事業性への懸念などから消極的な自治体も多く、2022年2月時点で計画を策定したのは、19道府県・74市町村にとどまります。また、現時点で各自治体のバイオマスの利用状況を見ると、その用途は燃料・肥料・飼料に偏り、医薬品・繊維・樹脂として活用されている事例は極めて少ないのが現状です。原料について、供給面で地域ごとにバイオマスの種類・量には当然偏りがあり、さらに需要面についても、地域の産業特性によって需要家が求めるバイオマスの用途が異なるという難しさがあります。

こうした状況を踏まえると、バイオマス利活用による地域経済活性化を達成するためには、各地域のバイオマスの量・種類や地域産業の特性を見極め、地域産業と融合していくことが重要です。具体的には、「(1)地域産業のアセット(資源)・商流などの活用」「(2)地域産業の価値向上」の2つの視点から取り組むことが有効であると考えられます。

視点(1)地域産業のアセット・商流などの活用

バイオマス産業が抱える課題の一つが、設備導入や輸送網構築に初期費用がかかり過ぎることで製品単価が高くなり、市場に受け入れられなくなるという構造です。この構造から脱するには、地域産業のアセット・商流の有効活用が鍵となります。原料調達過程では、地域内で分散して生じるバイオマスを、地域産業の静脈輸送用車両の空きスペースを活用して回収する方法が例として挙げられます。地域の既存事業の副次的な活動として低密度で生じるバイオマスを中密度まで高めることによって、一定の生産規模を確保することができ、バイオマス産業の収益性向上が期待できます。

また、生産・加工の過程でも、地域産業の設備・技術を転用できる余地があります。例えば、製紙工場で古紙などを粉砕する設備を、セルロースナノファイバー(CNF)製造の前処理過程に活用した事例もあります。小規模でも事業をスタートさせることで、素材・製品の用途開発が進み、さらには評価・認証の制度整備も進みます。そうして醸成された需要を見込む企業が新規に設備投資を行っていけば、より一層の単価減少・需要創出につながる好循環を生むことになります。

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バイオマス産業市場拡大の流れ(著者作成)

視点(2)地域産業の価値向上

バイオマス産業の価値を、地域産業の周辺価値と共に高めていく視点も重要です。例えば、1次産業における農作物のブランディングにつなげる、2次産業における製品の高機能化に役立てる、3次産業の宿泊施設・観光施設の体験価値向上に役立てるなど、バイオマスの利活用を起点に周辺産業の活性化も狙っていく視点です。

愛媛県では、木材や柑橘(かんきつ)果皮のバイオマス原料を、周辺産業の活性化につなげる取り組みを始めています。例えば1次産業では、柑橘加工時に発生する搾りかすを入れた餌で育てた「みかん魚」の生産・販売が盛んです。血合いの変色抑制、魚独特の生臭さ軽減などの効果から、養殖魚のブランド向上に役立っています。また、2次産業では、県と民間企業が中心となり、柑橘類の加工時に生じる果皮を用いたCNFを化粧品や食品に応用する研究も進められ、2021年4月に保湿クリームやボディーソープをはじめとした製品の販売もスタートしました。今後は、1・2次産業に加え、柑橘果皮由来CNFを用いた化粧品を宿泊施設で利用するといった3次産業への展開も期待されます。

地域産業とバイオマス産業が相互に高めあう姿を目指す

バイオマスの活用方法は、現在は燃料・肥料・飼料に活用方法が偏っている傾向が強いですが、このように地域産業のアセット・商流を有効に活用しながら地域産業の価値を高める視点を持てば、地域内のバイオマスを生かした地域経済活性化も実現可能と考えられます。そのためには、地方公共団体と企業が一体となり、バイオマス利活用の効果を最大化する地域独自の戦略を打ち立て、農林水産業をはじめとする既存の地域産業と新たなバイオマス産業が相互に高めあう姿の実現に向けて取り組んでいくことが重要です。

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バイオマス産業と農林水産業によるシナジー効果(著者作成)

書き手・日本総合研究所 福山 篤史

株式会社日本総合研究所 創発戦略センター コンサルタント
バイオ産業を起点とした地域の課題解決を目指し、ビジョン策定・実行支援および調査・コンサルティングを行う。

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