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水田の作物を食い荒らすジャンボタニシ。その生態から防除法までを徹底紹介!

斉藤 勝司

ライター:

水田の作物を食い荒らすジャンボタニシ。その生態から防除法までを徹底紹介!

安定して質の高い農産物を生産するには、作目に害を及ぼす有害生物を確実に防除することが求められます。そのため病害生物それぞれに有効な防除技術が開発されていますが、近年はジャンボタニシが大きな問題になっています。水稲をはじめ、水田で栽培される作物を食い荒らしているため、ジャンボタニシの食害でお悩みの方も多いのではないでしょうか。そこで本記事では、ジャンボタニシの生態から防除方法、防除にあたっての注意点などを詳しく紹介します。ジャンボタニシの食害でお困りの皆さん、この記事を参考に防除に取り組んでみてください。

水田作物を食い荒らすジャンボタニシはどこからやってきたのか?

ジャンボタニシは、その名前から日本在来のタニシ類と混同しそうですが、正式にはスクミリンゴガイと呼ばれるまったくの別種で、南米のラプラタ川流域原産の巻貝です。1981年に食用を目的に台湾から輸入されて以降、各地で盛んに養殖されるようになりました。一時期は500か所もの養殖場ができましたが、日本人の嗜好に合わなかったことから需要は伸びず、養殖業者は相次いで廃業。大量のジャンボタニシが捨てられ、野生化してしまい、水稲をはじめ、レンコン、イグサ、ミズイモなどの水田作物を食い荒らすようになりました。

水稲の場合、田植え後、2~3週間の柔らかい苗が被害にあいやすく、ジャンボタニシの多い水田ではほとんどの苗がなくなってしまうことさえあるほどです。一旦増えてしまうと根絶させることは大変難しく、ジャンボタニシは難防除の代表的な有害生物と言えるでしょう。

ジャンボタニシの食害を受けた水田(農林水産省「ジャンボタニシ防除対策マニュアル」より引用)

ジャンボタニシはどのような巻貝か? 在来のタニシと異なる生態

在来のタニシ類が問題視されなかったのに、ジャンボタニシが有害生物になったのには、その生態が関わっています。在来のタニシ類は水田や用水路に繁茂する藻類を食べるほか、水中を漂う植物プランクトンをエラで漉しと言いて食べる濾過食であることから、水田にいても作物に害を及ぼすことはありません。一方、ジャンボタニシは雑食性で、植物質、動物質を問わず、生息地で得られる有機物なら幅広く食べるため、作物に大きな害を及ぼしてしまうのです。

ただし、寒さには弱く、活発にエサを食べるのは水温15~35℃の時期に限られます。14℃以下になると活動を停止し、水田や用水路の地中に潜って越冬します。そのため日本での分布は九州から関東にかけての温暖な地域に限られ、北陸、東北、北海道では今のところジャンボタニシの発生は確認されていません。今後、地球温暖化によってジャンボタニシの生息に適した地域が広がれば、これまで確認されていなかった地域に分布を広げるかもしれません。

ジャンボタニシと在来のタニシ類の見分け方

水田に侵入すると急速に被害が拡大するため、ジャンボタニシを見つけたら速やかに駆除することが求められます。ただし、在来のタニシ類4種(マルタニシ、オオタニシ、ナガタニシ、ヒメタニシ)は水田の作物に害を及ぼさないだけでなく、近年、個体数を減らしており、絶滅が心配される野生生物をまとめた「レッドリスト」にも記載されているものもいて、ジャンボタニシの駆除にあたっては在来のタニシ類と見分ける必要があります。

ジャンボタニシは巻貝特有のらせん状の貝殻の下部(口が開いた層)の厚みがあり、全体的に丸いのが特徴です。在来のタニシ類はらせん状の貝殻の上部の厚みがあり、前提的に細長いのですが、マルタニシはその名が示す通り、丸みのある形をしているのでジャンボタニシと見分けるのは難しいです。

引用:農林水産省:スクミリンゴガイ防除対策マニュアル(移植水稲)

見た目だけで見分けるのは難しいジャンボタニシですが、在来のタニシ類は産卵せず、小さな稚貝を産むのに対して、ジャンボタニシは毒々しいピンク色の卵を産みます。しかも、卵は水中では呼吸ができないため、水に沈まないように、数十から大きなものだと2000~3000個の卵が集まった卵塊を稲株、雑草、用水路のコンクリート護岸に産み付けます。ピンク色の卵塊を見つけたら、すでにジャンボタニシは侵入している証拠と言えます。

ジャンボタニシは危険! 不用意に触らないで!

ジャンボタニシはすぐに駆除することが求められるとはいえ、不用意に素手で触ることは禁物です。というのも、貝には人体にも有害な広東住血吸虫という寄生虫が潜んでいることがあるのです。広東住血吸虫が感染して、脳に移行すると髄膜脳炎を起こすことがあります。その場合、約1~2週間の潜伏期を経て、激しい頭痛、発熱、知覚異常などの症状があらわれます。ほとんどの患者は自然に治りますが、まれに失明や知的障害といった後遺症を残すことがあり、死亡例も報告されています。また卵にはPV2と呼ばれる神経毒が含まれていますから素手では触れないようにしてください。

もし貝や卵に素手で触れてしまったら

有害な寄生虫が潜んでいても触れたぐらいでは大丈夫だと思うかもしれません。しかし、人間に感染する広東住血吸虫の幼虫は非常に小さく、体長は0.45ミリほどしかありません。気付かぬうちに感染する可能性がありますから、ジャンボタニシに触れる時は必ずゴム手袋を装着するか、ゴミ拾い用のトングを使ってください。

もし素手で触れてしまったら、すぐに石鹸で手洗いをしてください。神経毒を含む卵も同様で、削ぎ落したり、潰したりする時にも手で触れず、素手で触れたら速やかによく手を洗うことが重要です。

ジャンボタニシの卵はなぜピンク色なのか?

外敵から身を隠すことのできない卵は、通常、目立ちにくい色をしているものです。しかし、ジャンボタニシの卵は毒々しいピンク色をしています。こうした色になるのはカロテノイドと呼ばれる色素を含んでいるからなのですが、目立つピンク色なのはジャンボタニシにとって不都合に働かないのでしょうか。

前述したようにジャンボタニシの卵には神経毒が含まれています。このような毒をもつ生物は、あえて派手な体色を身にまとうことで外敵を遠ざける効果があり、こうした体色は「警告色」と呼ばれています。スズメバチが黄色と黒の縞模様なのも、毒を持つベニテングダケが派手な赤色をしているのも警告色であり、ジャンボタニシの卵がピンク色なのも天敵を遠ざけるという意味で理に適ったものなのです。

ジャンボタニシ対策~効果的な防除・駆除の方法8選

ジャンボタニシの被害を拡大させないために効果的な防除・駆除方法は次の7通りあります。

① 卵を見つけ次第、すぐに削ぎ落す、もしくは潰す
② 取水口、排水溝に網を設置
③ 石灰窒素の散布
④ 薬剤の散布
⑤ 浅水管理
⑥ 水揚げ後の耕うん、用水路の泥揚げ
⑦ 天敵を活用した生物的防除
⑧ ペットボトルや苗箱を利用した捕獲機の作成

それぞれ詳しく紹介しましょう。

①卵は見つけ次第、すぐに削ぎ落す、もしくは潰す

水田や、その周囲でジャンボタニシの卵を見つけたら、すぐに削いで水中に落としましょう。ジャンボタニシの卵は水中では呼吸ができないため、削ぎ落すだけで駆除は可能です。ただし、卵が黒っぽかったり、白っぽかったりすると、孵化直前で水中でも呼吸ができるようになっています。削ぎ落すだけでは殺すことはできないので、黒色、白色になっていたら、卵をつぶして確実に駆除するようにしましょう。

②取水口、排水溝に網を設置する

ジャンボタニシの食害を抑えるには圃場内にいる数を増やさないことが重要です。圃場内にいる貝は見つけ次第、取り除くほかありませんが、用水路にいる貝を圃場内に侵入させないことが重要で、取水口、排水溝にネットや金網を設置することをお勧めします。網目が粗すぎると小さな稚貝がすり抜け、逆に細かすぎると枯れ葉などのゴミですぐに詰まるため、網目は9mm程度が適当です。水稲の場合、5葉期を過ぎると食害されにくくなるので、田植え前の入水時から田植え後3週間までの設置が効果的です。網にかかった貝は踏みつけて潰すなどして確実に殺貝しましょう。

農林水産省「ジャンボタニシ防除対策マニュアル」

③石灰窒素の散布

石灰窒素の主成分であるカルシウムシアナミドは、水中でカルシウムとシアナミドに分解し、シアナミドが殺貝効果を持ち、ジャンボタニシの駆除に有効です。ただし、その散布は田植え前と収穫後では若干異なるので注意が必要です。

圃場(ほじょう)に水を張っていない状態だと、ジャンボタニシは地中で冬眠していて、いくら石灰窒素を散布しても効果はありません。荒起こし後、水を3~4cmほどはって、3~4日放置すると、ジャンボタニシが水中に出てきます。そこに10aあたり20~30kgの石灰窒素をムラなく散布することでジャンボタニシを駆除することができます。

ただし、10aあたり20~30kgの散布で、4~6kgの窒素を投入することになるので基肥の窒素量を調節して、過剰施肥にならないよう注意が必要です。石灰窒素はイネの生育に悪影響を与えるため、栽培期間中は散布しないでください。

農林水産省「スクミリンゴガイ防除対策マニュアル」

収穫後の防除では、水温17℃以上の時期に3~4cm湛水して、1~4日放置します。ジャンボタニシが活発に活動するため、そこに石灰窒素を散布すればジャンボタニシを駆除することができます。ただし、石灰窒素には魚に対しても毒性があるため、漏水防止を行うとともに、圃場にはった水は用水路に流さず、自然落水を待ってください。水田が乾いた後、5~10cm程度に浅く耕うんして収穫後の石灰窒素による防除は完了です。

農林水産省「スクミリンゴガイ防除対策マニュアル」

④薬剤の散布

ジャンボタニシの駆除用として、メタアルデヒド粒剤、燐酸第二鉄粒剤、チオシクラム粒剤、IBP粒剤、カルタップ粒剤、ベンスルタップ粒剤が市販されています。それぞれの特徴は以下の通りです。

農林水産省「ジャンボタニシ防除対策マニュアル」

薬剤による防除を実施するに当たっては、必ず登録薬剤を使用して、使用時期、使用法、使用量、回数などを守ってください。いずれの薬剤も湛水状態で散布し、確実に効果を得るため、散布後、少なくとも3~4日間は水深3~5cmで湛水状態を維持してください。在来の魚、エビなどの甲殻類に影響が出ないよう、漏水を防止し、散布してから7日間は落水、かけ流しは避けてください。

⑤浅水管理

ジャンボタニシは水中でないとエサを食べることができず、水深が浅いと活動が制限されます。水深を4cm以下、できれば1cm以下に維持する浅水管理を行うことでジャンボタニシの食害をほとんど抑えられます。水稲への食害は柔らかい苗のうちに起こりやすい田植え後3週間は浅水管理を行うことをお勧めします。

ただし、浅水管理をしているようでも、水田に凹凸や傾斜があると深いところでジャンボタニシが活発に活動して集中的に食害が生じることがあるため注意が必要です。冬季にレーザーレベラーを用いて水田の均平を確認し、田植え前の代かきを丁寧に行うことで凹凸、傾斜をなくすることができます。コンバインの切り替えしでも水田に凹凸ができることもあるため、できるだけ切り返しを行わないようコンバインを操作してください。

降雨により一時的に水位が上昇して、その間に食害が発生することがあります。かといって、極端に水位を低くすると、田植え後の活着、初期生育に悪影響が及ぶことがあるため、水稲の生育を阻害せず、ジャンボタニシの活動を抑制できる適切な水位を保てるようにこまめに水管理を行いましょう。

⑥水揚げ後の耕うん、用水路の泥上げ

寒さに弱いジャンボタニシは水田や用水路の地中に潜って冬眠するため、水田を耕すことで貝殻を破壊し、用水路の泥上げをすることで駆除することが可能です。

地中の貝の破壊が目的ですから、トラクターの速度を抑えて、ロータリーの回転を速くして、土壌を細かく粉砕するように耕うんすることをお勧めします。黒ボク土の水田の場合、大半の貝が深さ6cm未満で越冬するため、深度6㎝ほどの浅起こしでも十分な駆除効果が得られます。活発に水稲に食害する大型の貝ほど粉砕されやすく、貝殻の高さが20mmほどのジャンボタニシに対しては一度の耕うんで約7割の貝を破壊することがで切ることが報告されています。たとえすべてのジャンボタニシを破壊できなくても、地中にいる貝を掘り起こして、寒風にさらすことによって駆除することが期待できますが、気温が0℃以下に下がらないと十分な駆除効果が見込めないので厳寒期前に実施することが重要です。

また用水路に堆積した泥の中に潜って越冬するジャンボタニシについては、泥上げを行うことで寒風にさらして殺貝することができます。こうした泥上げには越冬場所をなくすだけなく、雑草が繁茂するのを抑える効果もあり、翌年のエサをなくすことにもつながります。ただし、局所的に泥上げしても十分な効果は得られないため、地域全体で用水路管理の一環で泥上げを行うことをお勧めします。ただし泥上げに用いた重機に付着してジャンボタニシが拡散することがあるため、未発生地域への持ち込みを防ぐため重機の泥はしっかり洗い落としましょう。

⑦天敵を活用した生物的防除

 貝殻の高さが20mm以上の大型のジャンボタニシでも、アイガモ、コイ、カメ類が捕食することが報告されています。水田や用水路にアイガモやコイを放すことで、ジャンボタニシの数を減らすことが期待できます。ただし、コイに関しては元々いなかった場所に放流すると、水田周辺の生物多様性をかく乱することにもなりかねません。ジャンボタニシの発生が確認されていない地域に予防的にコイを放流することは控えましょう。

⑧ペットボトルや育苗箱を使って捕獲器を作製

 水田でジャンボタニシを見つけたら、捕獲して殺すことは確実に駆除方法と言えますが、広い水田に広がっている数多くのジャンボタニシを捕獲して回ることは決して簡単なことではありません。そこで水田、用水路に捕獲器を設置してジャンボタニシを捕らえることをお勧めします。捕獲器は簡易なものでよく、市販されている籠網のほか、ペットボトル、育苗箱、段ボールで自作してもいいでしょう。

引用:松阪市ウェブサイト

薬剤を用いることなく、安価な材料だけで捕獲できますが、捕獲器を設置するだけでは十分に捕獲できないため、沈下性のコイのエサ、米ぬか、米こうじを同じ分量で混ぜたミックス餌を誘引剤として捕獲器に入れておくことが重要です。このミックス餌は誘引効果が高く、大量のジャンボタニシを捕獲することができますが、効果を長続きさせるため、水切りネットやお茶パックに入れて、捕獲器に入ったジャンボタニシで食べつくされないようにしましょう。またジャンボタニシはイネ苗よりもメロン、レタス、スイカ、ナスなどの野菜を好むことが明らかになっています。これら野菜くずをネットに入れて水田に浸けておくだけでも大量のジャンボタニシを捕獲することができますが、誘引効果は前述のミックス餌に比べると劣ります。

捕獲したジャンボタニシは焼却または埋却することで処理できます。可燃ごみとして処分する場合は十分に乾燥させた上で袋に包んで、居住地のルールに則って処分しましょう。

ジャンボタニシの防除を行う際の注意事項

ジャンボタニシは見つけ次第、駆除することが求められるわけですが、注意しなければならないことがあります。必ず下記の注意事項を確認した上で、駆除に取り組むようにしてください。

椿油粕の使用は農薬取締法で禁じられている

ジャンボタニシの駆除に効果があるとして、多くの生産者に椿油粕が使われたことがありました。しかし、椿油粕は特殊肥料として販売されていても、農薬として登録は受けていないため、ジャンボタニシの防除を目的に使用することは、農薬取締法で禁じられています。違反した場合、3年以下の懲役、もしくは100万円以下の罰金が科せられるため、ジャンボタニシ対策には登録のある農薬を正しく使用しましょう。

防除資材の購入費を助成しいている自治体がある

主食用の水稲を食い荒らすジャンボタニシの防除は、食糧を安定的に生産するためにも重要な課題です。そのため自治体によってはジャンボタニシの防除に補助金、助成金を出しているところがあります。補助額は自治体によって異なり、年度ごとに決められた予算内で、先着で補助するなどの制約があるため、防除に取り組むに当たっては、まず自治体に問い合わせることをお勧めします。また、補助金を受ける際に防除に取り組んでいる証拠として、薬剤を散布した水田や使用した薬剤の空袋などの写真を求められることもあるため、ジャンボタニシ防除に取り組んだ記録は残しておいてください。

ジャンボタニシは食べられるのか?

食用として日本に持ち込まれたのですから、駆除のために大量に捕獲したジャンボタニシを食べてみようと考えた人もいるかもしれません。十分に泥を吐かせて、臭みを抑えるために味噌や醤油などの濃い目の味付けで煮つけにすれば美味しく食べることができます。

ただし、ジャンボタニシには人間にも有害な寄生虫が潜んでいることはすでに紹介した通りです。寄生虫を確実に殺せるよう、しっかり加熱する必要がありますし、調理に用いた器具を介して寄生虫に感染されるリスクもあります。未加熱のジャンボタニシが接触した調理器具を熱湯消毒する手間を考えると、一般の人が手軽に調理するのは難しいと言わざるを得ません。

駆除に取り組めばジャンボタニシの害を防除できる!

水田の作物を食い荒らすジャンボタニシの生態から駆除方法、防除に対する自治体の支援、さらにはジャンボタニシを食べられるのかを詳しく紹介してきました。一度、水田に侵入すると旺盛な繁殖力で食害が拡大する厄介な有害生物ですが、ここで紹介した防除方法を実践すれば、その食害を抑えることができるでしょう。是非、この記事を参考に防除に取り組み、安心して農作物を生産してください。

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