「ハラール」に関する基礎知識
ハラール認証を取得したいと考えたときに、まずはハラールとは何かということと、その前提にあるイスラム教の文化について、ある程度知っておく必要があるでしょう。なぜハラールは重要なのか、基礎知識について紹介します。
ムスリムについて
ムスリムとはアラビア語でイスラム教徒のこと。中東・アフリカ・東南アジアなど、人口が増加している地域に多く、全世界で約19億人、世界の4人に1人がムスリムと言われています(2020年時点)。
近年、日本にはムスリムの多いインドネシアやマレーシアからの訪日観光客が急増。日本政府観光局(JNTO)によれば、コロナ禍前の2019年には両国合わせて90万人以上が訪れていました。また、日本には推定20万人以上のムスリムが在住していると言われています。
イスラム教とは
イスラム教は現在のサウジアラビアのメッカで7世紀初頭に発祥しました。預言者ムハンマドがアラー(神)から啓示を受けたことによって始まったと言われ、仏教・キリスト教と並ぶ世界三大宗教の一つに数えられています。
イスラム教は神がムハンマドを通じて人々に啓示したとされるクルアーン(コーラン)を聖典とする一神教です。偶像崇拝を排除しており、祈りをささげる際にも仏像やキリスト像のような対象物がないのが大きな特徴です。
イスラム法とは
現在のイスラム諸国では、近代的な法律が制定されていますが、それとは別にイスラム法という独特の戒律があります。成文化された法律ではなく、いわば日本人にとっての道徳のようなものですが、実社会ではその戒律が人々の社会生活を強く律しています。衣食住など全ての生活領域、出生・結婚・死亡など個人のライフイベントでもさまざまな規定を与えており、それによって独自の文化を形成しています。
イスラム教徒の「ハラール」とは
ハラールとはイスラム法で「許されたもの」、つまり「神から許しを得られたもの」を意味しています。有毒なものでない限り、基本的に神が創造したものは全てハラールです。その一方で「禁止されるもの、または行為」は、ハラームと呼ばれています。
ムスリムは神が良いとしているもの、ハラームの要素がないものを食さなくてはなりません。ハラールではない物を口にすることは神に対する罪を犯すことになるため、ハラームの行為を絶対しないよう注意して毎日の生活を送っています。
ただ、それでは現代のような多民族社会・国際化社会では困ることが多いので、マレーシアやインドネシアでは国が食品のハラールを制度として成文化し、ハラール認証の歴史が始まりました。
ムスリムが食べることを許されている食材
水、野菜、果物、穀物(米・小麦など)、豆類、魚介類、海草類、牛乳、卵などは基本的に許されており、これらはハラールフードと呼ばれています。
肉類は羊肉をはじめ、牛肉・鶏肉などは原則としてハラールフードとされていますが、それにはイスラム法にのっとった食肉処理がされている必要があります。ごく簡単に言うと、電気ショックなどによる気絶処理(スタニング)をしないで、お祈りの言葉を唱えながら、と畜する方法です。
日本では、通常、牛肉でも鶏肉でも気絶処理後に、と畜したものが流通しているため、ムスリムに提供するためにはこれを避けて、イスラム法に基づくハラールフード専用の処理をした食肉にしなくてはなりません。
ムスリムが食べることを禁止されている食材やもの
ハラームの食材として最も有名なのが豚肉です。イスラム法で豚肉は不浄とされており、肉そのものはもちろん、豚のエキスや成分が含まれる調味料や添加物なども避ける必要があります。当然、ハム・ソーセージなどの加工食品、豚骨スープ、ラード(豚脂)などもNGです。
豚肉料理を作ったものと同じ調理器具を使うことや、少しでも接触した食材を食べることも許されません。その他、豚に限らず、あらゆる動物の血液、そして死肉などもハラームの対象になります。
アルコール飲料もハラームになっており、料理酒も使えませんが、微量の添加物としてなら許される場合もあります。
「ハラール認証」とは? 簡単に分かりやすく解説
ハラール認証とは、イスラム教と食品衛生の専門家を擁する「ハラール認証機関」が、販売したい食品や製品を検査してハラールであることを保証する制度です。
日本のようにムスリム以外の消費者が大半を占める国では、豚を利用した食品、アルコール飲料やそれを使った食品などが多数、流通しています。したがってどの食品がハラールか、そうでないかを消費者個人が判断するのは非常に困難です。
そのため、認証機関が専門家の目でその判断を行い、認証されたものは「ハラール食品」「ハラール製品」として認証マークを付けて流通できるようにします。この認証マークは、豚やアルコールなど禁止されているものが製品に全く含まれないことを保証するとともに、品質から製造環境・過程まで全てがイスラム法にのっとっており、認証基準を満たしたものであることを示します。ハラール認証のマークが付いていることで、ムスリムの消費者が自分で成分などを調べることなく安心で安全な製品だと認識でき、購入するか判断するための材料になるのです。
ハラール認証を取得できる対象分野
食品には、一般的に認証取得が必須となるものと、そうでないものがあります。例えば、水、野菜、果物、魚などは、加工していない素材のままの状態であれば、あえてハラール認証を受ける必要はありません。
一方、化粧品やパーソナルケア用品、医薬品(内服薬・外傷薬)、健康食品などは、肌に直接付けたり、体内に摂取したりするので、原料にハラームの成分が含まれていないことが求められます。
また、製品そのものだけでなく、物流・加工・レストランなど、食品・製品が製造・提供される環境もハラールであるかどうかチェックを受ける必要があります。
「ハラール認証」の歴史
ハラール認証の開始時期は国ごとに異なります。先駆けとなったマレーシアでは、政府によるハラール証明文書の付与が1974年にスタートし、その後、徐々に規定などが整備され、現在はマレーシア政府が運営するJAKIM(ジャキム:イスラム開発庁)が認証を行っています。マレーシアはイスラム教が国教ですが、多民族・多宗教に加えて、経済が発展して輸入品や加工品が増えたため、どれが安全な食品・製品なのか分かりにくくなりました。
そこでムスリムが安心して食品や製品を購入できるよう、国がチェックをする認証制度を作ったのです。
これに続いてインドネシア、さらにその他の東南アジア諸国、アメリカ、EU、ブラジル、オーストラリアなどでもハラール認証制度が開始され、現在では世界中に300以上のハラール認証機関があると言われています。
日本のハラール認証制度の現状と問題
日本では2010年代にムスリムの訪日観光客が増え、この頃にいくつかの認証機関が設立されるなど、ハラール認証への意識も高まっていきました。現在では、一般社団法人やNPO法人、宗教法人、株式会社などが認証取得を支援しています。
問題は統一基準がなく、認証取得にかかる期間も費用もそれぞれ異なっていること、認証ビジネスを行うのに許認可も届け出も必要がないため、誰でも始められることです。したがって、どこの機関の認証が最も信頼できるのか不明であり、機関によってその認証が通用する国・しない国がまちまちです。
そうした事情からトラブルが生じることも少なくなく、時間とお金を費やして取得しても有効期限があるため、監査や更新のために随時、費用が発生します。
日本のハラール認証業界は海外と比べてまだ歴史が浅く、整理されていないため、今後しばらくは変化が激しいだろうと言われています。
ハラール認証のメリット
ハラール認証は、その商品がハラールの規格に合っていることを意味しています。そのため、ムスリムの消費者は安心感を得られ、選択の幅も広がります。また、提供する企業側にとってはイスラム圏市場へのアクセスを得られることにもつながります。
イスラム諸国へ輸出する際には有利になる
東南アジア・中東・アフリカ全域に広がるイスラム諸国は、日本や欧米諸国とは逆に人口が大幅に増加しており、市場が拡大しています。この成長するイスラム圏への進出は、国内の市場縮小に悩む日本企業にとって大きなビジネスチャンスになり得るでしょう。
イスラム市場向けの食品市場の世界規模は、2兆ドルを超えるとも言われています。それに加えて日本の食は、健康的でおいしいと世界的に評価が高く、そのアドバンテージの上に立った食品の輸出は大きな収益を生み出す可能性があります。ハラール認証を得るメリットは、まさしくここにあるでしょう。
ムスリムへのアピール効果が高まる
もう一つ、ハラール認証のメリットとして大きいのは、ムスリムの人たちの心に「日本は私たちの文化に対して理解を示している」という印象を刻めることではないでしょうか。
食品に限らず、日本企業は品質の高さときめ細かいサービスを世界にイメージ付けてきました。そうした機能性に加えて、ハラールに対応していること、すなわち、イスラムの文化や制度に対して理解と親和性を訴求することは、ビジネスの面でも非常に重要です。
概してイスラム圏の国々は親日派が多く、日本に良いイメージを持っていると言われています。日本のファンをより増やすためにもハラール認証は大きな役割を果たすでしょう。
他との差別化につながる
企業にとって海外におけるイスラム圏の市場は大きな魅力ですが、国内でもムスリム市場は拡大しています。コロナ禍が落ち着いた後は、再びインドネシアやマレーシアなど、東南アジア諸国からのムスリム旅行者は増え、インバウンド需要は高まるはずです。フードビジネスに携わるなら、ぜひとも狙いたい市場でしょう。
そこでムスリムが最初に見るのは、やはり「ハラールマークの有無」になると思われます。飲食業や観光業にとって、ハラール認証を取得したメニュー・商品・サービスを準備して提供することは他との大きな差別化につながるのです。
ハラール認証のデメリット
デメリットとして、認証取得のコストなどが挙げられます。更新料など都度生じるものもありますので、費用対効果などを見極めておきましょう。
ハラール認証取得には費用がかかる
日本にはハラール認証機関が複数あり、どこを選べばいいか悩みます。
ハラール認証の取得には、決して少額ではない費用がかかります。事業規模にもよりますが、飲食店では数万から数十万円程度、工場やメーカー企業などでは数百万円になることもあります。また、有効期間があり、更新料も必要で、それらはハラール認証機関によって異なります。それだけのコストに見合ったリターンが得られるかどうかは慎重に検討したほうがいいでしょう。
しかし、国や都道府県などからハラール認証取得に関する助成金や、海外販路開拓のための助成金などのさまざまな支援制度も出ています。認証取得を検討している農家・企業はぜひ活用を検討してみてください。
ムスリム以外の客が遠ざかってしまう場合もある
飲食店や小売店などがハラール認証を取得した場合、その認証マークを店頭に目立つように掲示したり、パッケージや看板に載せたりするケースがあります。それはムスリムの人が見て非常に分かりやすいのですが、逆に一般の日本人客から見ると「ムスリム専門の店(または商品)らしい」と判断し、離れていってしまう事例もあるようです。ムスリムの人にとってハラールマークがあるのは便利ですが、自分で成分情報が分かれば大丈夫という人もいます。あまり認証にこだわり過ぎず、取得目的をはっきりさせ、対策を立てておくようにしましょう。
ハラール認証|4つのチェックポイントについて
ハラール認証では、主に4つのポイントが監査されます。もちろん、全てにおいてクリアできれば問題ありませんが、中には対策を立てにくいものもあるので、認証機関とよく話し合うことも大切です。
ポイント1.原材料
多くのムスリムがチェックするポイントが、まず豚由来の物(豚肉、ハム、ベーコン、ソーセージ、ラードなど)が入っていないか。次に肉がハラール処理をされた肉であるか、そして酒やみりんなどのアルコールを使っていないかといった情報です。
日本国内では流通している多くの食品・製品がハラームを含んでいるため、こうした原材料は抜くか、ハラール性が保たれる原材料に代替します。
ポイント2.保管状況・製造工程
製造ラインや保管場所がハラームに触れず清浄に保たれるかを確認します。過去にハラームを扱ったことがあるなど、清浄性に問題があると思われる場合、ハラール製品を取り扱えるよう洗浄する作業を行います。この「宗教洗浄」は、におい、味、色のない清浄な水で計7回行い、うち1回は土を混ぜて実施。作業は認証機関のイスラム法修学者と企業のスタッフ立ち会いのもとで行われます。
ポイント3.従業員の教育
従業員がイスラム法とは何か、ハラールとは何か、どうしてそれに合わせた処理をするのかをしっかり理解した上で作業に臨んでいるかも重要なポイントとされています。企業の教育姿勢とムスリムに対する理解が問われるポイントです。
ポイント4.管理体制
海外の認証機関では、認証取得のためにはムスリムの雇用が必要とされることがあります。ですが、日本ではムスリムが少なく、雇うことは容易ではありません。そこで、認証機関によるセミナーなどを受けた管理者を置くことを、ハラール認証の条件としている場合もあります。
ハラール認証を申請するにあたって
日本の食文化を考えると、豚やアルコールが使えず、また製造・保管環境や輸送の面でも見直しを求められるハラール認証の取得はかなり大変なことのように思えます。しかし実際は比較的簡単に取得可能です。
ハラール認証基準は難しい?
ハラール認証を取得するには、原材料と製造プロセスにおいて豚由来の成分が製品に混入または残留しないこと、飲むと酔ってしまうアルコール成分が製品に混入しないこと、基本的にこの2点を、ハラール専門の認証監査員に科学的にチェックしてもらいます。
このチェックで問題が見つかっても、改善が見込める場合は改善して再度チェックしてもらうことができます。また事前にアドバイスをもらうこともでき、これによりほとんどの企業が問題なく認証を取得できています。
ハラール認証取得の前提条件について
ハラール認証を取得するには、必ずしも特別な条件があるわけではありません。ただし食品衛生上の一定基準に沿う必要があり、ISO9000s、GMP、HACCP、ISO22000などを取得していると、あらかじめ従業員が衛生について意識する習慣ができることから、スムーズに進むと考えられます。
また、これらのいずれかの取得を前提条件としている認証機関もありますが、もし取得していなくても同等レベルと判定されればハラール認証を申請できる場合もあります。認証機関ごとに問い合わせてみるといいでしょう。
ターゲットとなる国や地域を決める必要がある
ハラール認証は、それぞれの国によって認証基準が異なるため、1つのハラール認証で全てのイスラム圏国家の基準に適応することはできません。そのため日本でハラール認証を取得する場合は、まずどこのイスラム圏国家とビジネスをするのか、対象国を定める必要があります。その国の基準を事前に確認した上で、希望する認証の手続きを確認し、それに対応している認証機関で手続きを行う必要があります。
ハラール認証までの取得プロセス
日本ではイスラム教になじみが薄いため、ハラール製品のプロジェクトを企画したら、早い段階から専門機関に相談することをお勧めします。ここではごく簡単に取得プロセスを紹介していきましょう。
問い合わせ・相談
対象国を決めたら、その対象国のハラール認証を行っている機関に相談します。
申請
申請書類を作成し、認証機関へ提出します。機関ごとに必要な書類は異なりますが、会社概要のほかに、製品原料がハラールだと証明できる資料、製造工程の資料などです。
書類審査
提出した申請書類をもとに、書類審査が行われます。問題があれば、認証機関から指摘され、改善したうえで再度、資料を提出します。
現地監査
工場などの現地監査を受けます。監査は、イスラム法の専門家により、イスラム法的な観点と、食品衛生の観点でチェックが行われます。問題があれば、改善し、再度監査を受けます。
認定
すべての問題がクリアされれば認定を受けられることになります。
ハラール認証証明書発行・ハラールマーク付与
認定を受けるとその機関からハラール認証証明書が発行され、ハラールマークが付与されます。認証取得までの期間は国によって違いますが、マレーシアの場合は最初の相談から平均で半年、最長で1年程度を要します。
定期的な監査
認証取得後は定期的な監査を求められます。
日本のハラール認証機関について
東南アジアや中東から相互認証を受けている主な国内のハラール認証団体は下記のとおりです。認証プロセスや実績を公表している機関もあるので、それぞれのホームページを確認してください。
宗教法人日本ムスリム協会(JMA)/拓殖大学イスラム研究所
マレーシア、インドネシア(と畜は除く)、シンガポールの認証機関と相互認証を行っています。その3カ国への輸出実績もあります。JMAは国内向けにイスラム教徒フレンドリーの認定を行い、輸出向けのハラール認証は拓殖大学イスラム研究所が担っています。
NPO法人日本ハラール協会(JHA)
マレーシア、インドネシア(香料除く)、シンガポール、サウジアラビア(GACのみ)、アラブ首長国連邦(UAE)、カタールなどの認証機関と相互認証しています。UAEへの輸出実績もあります。
宗教法人日本イスラーム文化センター(JIT)
マレーシア、UAE、カタールなどの認証機関と相互認証しています。と畜場の認証の際は、本国から監査員が来日して監査を実施します。
NPO法人日本アジアハラール協会(NAHA)
マレーシアとシンガポールの認証機関と相互認証を行っています。2010年にハラール認証を開始し、これまでに45都道府県で約500件のハラール関連セミナーを無料で実施しています。
一般社団法人ムスリム・プロフェッショナル・ジャパン協会(MPJA)
マレーシアやインドネシアなどの認証機関と相互認証を行っており、この2カ国への輸出実績もあります。と畜場については、マレーシアの基準に従い、3カ月に1回の監査を実施。毎回マレーシアから監査員が来日して施設を監査します。
一般社団法人ジャパン・ハラール・ファンデーション(JHF)
マレーシアとシンガポールの認証機関と相互認証を行っています。食品・宿泊施設・レストラン系をメインとしており、2020年10月時点で29のホテル・レストラン、21の企業(主に食品企業)でのハラール認証実績があります。実績はホームページで公開しています。
エミレーツ・ハラールセンター(EHC)
UAEの認証機関と相互認証を行っています。2015年5月に設立され、UAEおよび湾岸諸国市場での事業の拡大を目指す日本企業を支援しています。
イスラミックセンター・ジャパン(ICJ)
カタールの認証機関と相互認証を行っています。ハラール認証担当スタッフは常駐していませんが、FAXかメールで対応、個別に相談を行います。
Prime Certification And Inspection Company Ltd.(PCIC)
UAEと相互認証を行っています。UAEのドバイに本社を持っています。
主な相互認証機関 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
マレーシア | インドネシア | シンガポール | サウジアラビア | アラブ首長国連邦(UAE) | カタール | |
JAKIM | MUI | MUIS | GAC、SASO | ESMA、EIAC | Ministry of Public
Health Ports Health and Food Control Section |
|
日本ムスリム協会(JMA)/拓殖大学イスラム研究所 | ○ | ○と畜除く | ○ | |||
日本ハラール協会(JHA) | ○ | ○香料除く | ○ | ○GACのみ | ○ | ○ |
日本イスラーム文化センター(JIT) | ○ | ○ | ○ | |||
日本アジアハラール協会(NAHA) | ○ | ○ | ||||
ムスリム・プロフェッショナル・ジャパン協会(MPJA) | ○ | ○ | ||||
ジャパン・ハラール・ファンデーション(JHF) | ○ | ○ | ||||
エミレーツ・ハラールセンター(EHC) | ○ | |||||
イスラミックセンター・ジャパン(ICJ) | ○ | |||||
Prime Certification And Inspection Company Ltd.(PCIC) | ○ |
農家がハラール認証を取得する最大のメリットとは?
ハラール認証を取得して製品の輸出や海外進出をするとなると、ある程度の規模の企業でなければ事業化は困難です。しかし日本国内のムスリム市場に向けたビジネスであれば個人農家でも可能です。
日本には外国人と日本人合わせて20万人以上のムスリムが暮らしているとも言われています。長期的に見ると観光客や留学生は今後も増加すると予想され、既に大空港のレストラン、大学の学生食堂などでは、多くのハラール食が提供・販売されています。
もともと野菜や果実などの農作物はハラール食で、そのままの収穫物には認証は不要ですが、加工食品は認証が求められます。ムスリムの人たちが商品を選ぶ際は、原材料の情報やハラール認証によって判断するので、6次産業化に取り組んでいる農家にとって、ハラール認証を取得することで新たな販路が開ける可能性があるのです。
ハラール認証を取得する前に! 確認したい注意点3つ
イスラム圏の人たちは生活習慣と同様、ビジネスに関しても一般的な日本の商習慣とは異なる感覚を持っています。日本人同士の場合と同じように考えず、ハラール認証取得に際しても目的を明確に、必要以上に腰を低くせずに厳然とした態度で臨むようにしましょう。
ハラール認証を取得する「目的」を明確にする
前述したようにハラール認証の取得には、認証機関のコンサルティング料も含めて多額の費用が必要です。それに見合うだけの集客・収益を得られるのか、また今後、ムスリム市場への販売を事業の柱にするのかなど、しっかり検討し、目的を明確にしてから認証取得に取り組みましょう。
ムスリムの人はハラール認証がなければ絶対に買わない、利用しないというわけではありません。使用食材の情報があれば自分で判断するという人もいます。要はその食品がハラールな物であるという情報が分かればよく、実際に情報開示をするだけである程度のムスリムの集客ができたという店もあります。事前に販売して反応を見るなどムスリム市場に対するテストマーケティングを行い、事業計画をきちんと作って取り組んだほうがいいでしょう。
ハラール認証機関とよく起きる「トラブル」を確認しておく
国内流通を目的とした場合のハラール認証機関を選ぶときには、後々トラブルが起こらないよう注意が必要です。なぜなら日本の商習慣を理解しているハラール認証機関は少ないからです。ちゃんと連絡が取れるか、食材・調味料の追加申請費用がかかるのか、間にさまざまな協会、協議会、コンサルティング会社などが介在していないか。また認証取得費用・更新費用・有効期限が明朗か、途中で認証基準が変わる可能性があるかといった特記事項が契約書に記されているかなど、しっかり確認するようにしましょう。
彼らは基本的に民間機関で、公共性の高い組織というわけではありません。ビジネスパートナーとして対等に付き合うようにしましょう。
ハラール認証マークの「大きさ」について検討しておく
ハラール認証マークの大きさを検討することも大事なポイントです。先述したように、ハラール認証マークの主張が強すぎると、一般の日本人客が離れてしまうこともあります。
完全にムスリム対象として販売を行うならそれでも問題ありませんが、そうでない場合、どのようにマークを露出させるかはしっかり検討したほうがいいでしょう。
ハラールを知ってビジネスチャンスを
大きく成長するムスリム市場。アジア地域のイスラム国の人口(2020年)は、インドネシア2.3億人、パキスタン2億人、インド2.1億人、バングラデシュ1.5億人など、合わせて8億人以上に上ります。巨大市場であることは間違いありません。
国内のムスリム市場も活性化しており、今後、イスラム文化を理解すること、ハラールについて知ることは、食のビジネスに取り組む農家や企業にとっても重要になっていくでしょう。