化学肥料の高騰に国の指針・・・今こそ有機質堆肥の検討を
いつまで続くのかわからない、化学肥料の高騰。
そもそもの原因は、世界的な穀物需要の増大で肥料が多く使われるようになったことにありますが、化学肥料の原料輸出国であるロシアからの供給停止、エネルギー不足、輸送コスト増大、昨今のインフレや円安の進行などが、価格上昇に拍車をかけています。
肥料価格の高騰は2008年にもありましたが、今回はその水準をはるかに上回る勢い。収束したとしても、化学肥料の原料を輸入に頼る日本では、またいつ価格が上昇してもおかしくありません。
農林水産省のみどりの食料システム戦略では、環境保全のため2050年までに化学肥料使用量の30%低減を目標としていますが、昨今の化学肥料の高騰で待ったなしの状況になりつつあります。
その解決策になるのが、国産の有機質堆肥の活用です。
有機質堆肥とはどのようなもので、どのように使えばいいのか。
馴染みがないため、二の足を踏んでいる方もいるでしょう。そこでお話を聞いたのが、有機質堆肥を製造している株式会社赤城オーガニック(群馬県前橋市)。
赤城山麓にある本社工場を訪ねると、常務取締役の金俊成さんと事務所の皆さんがあたたかく出迎えてくれました。
土の中から変えていく 数々の実験で実証された有機質堆肥の可能性
「化学肥料を使わなくても、おいしい農作物が作れることを広めたい」。
金さんが本気でそう思うようになったのは、ここ数年の実地試験の結果からでした。
赤城オーガニックの主力商品は、豚糞と茶粕を主原料とした粉状の「ファームリッチ」と粒状の「コープリッチ」、コーヒー粕を追加した粉状の「アースリッチ」です。有機質は動植物などの天然素材ですが、有機質肥料と有機質堆肥では性質が異なります。肥料は発酵していないもの、堆肥は発酵させたものです。
金さんは「有機質は発酵によって、土壌改良に役立つ資材になるんですよ」と、前述の試験結果を見せてくれました。
まずは、2021年夏。群馬県立勢多農林高校で、慣行農法(畜産堆肥と化学肥料を使用)と同社の有機質堆肥「アースリッチ」で栽培したトマトの比較を行いました。
アースリッチ施用区のトマトの糖度は、慣行農法と比べて1度高いという微々たる違いでしたが、注目すべきはその食味です。試食をした生徒たち全員がおいしいと評価したのです。同高では、ホウレンソウ、小松菜、大根、チンゲン菜などでもテストしていますが、慣行農法の作物をおいしいと答えた生徒は、一人もいませんでした。
同校では、食味だけでなく、草丈や重量を比較する実験も行いました。
10aあたりに窒素16㎏、リン10㎏、カリ14㎏、堆肥2000㎏を施肥した「対象区」、粉状のアースリッチ600kgのみを施肥した「粉状区」、そして粒状のアースリッチ600kgのみを施肥した「粒状区」の3区画で、収穫された小松菜の草丈と重量を比較しました。
すると結果は御覧の通り明白に。アースリッチのみを施肥した区画のほうが、草丈も重量も大きかったのです。
生徒さんの考察によると「有機質堆肥を施用した土は腐植が多く保水力・保肥力が高まったためと考えられます」とのことでした。
また、直近の試験では、金さんも驚く結果が出ました。
2022年4月、試験用に借りた群馬県昭和村の畑は、何十年も不作が続く土地でした。しかし、アースリッチで土づくりをしただけで、追肥なしでもホウレンソウが見違えるほど立派に育ちました。これまで鶏ふんや化学肥料など様々試していたそうですが、どれも効果がなかった中で、アースリッチはしっかりと成果を上げました。
金さんは、「かつては、肥料会社として栄養分(N・P・K)に振り回されたこともありました。しかしこれらの試験を繰り返す中で、土を良くすることが最も大事なのだと思いました」と話します。「いまは土が良くなければどんなに栄養を与えてもだめなんだと確信しています」。
農薬を一切使わずに野菜を育てたらどうなるか、そんな実験も行いました。
2019年夏に小松菜のプランターで、アースリッチ、有機入り化成肥料、化成肥料の無農薬栽培の試験を実施。アースリッチ施用区は葉の一部が食害にあった程度でしたが、他のプランターは茎だけを残して食べ尽くされたという結果が出ました。
これらの実験に裏付けされるように、有機質堆肥には農家をサポートする様々な可能性が秘められています。
「私たちが有機質堆肥をすすめる理由は、化学的なものを減らしてもおいしい野菜や果物が作れるからです。農作物は食べておいしく、環境にやさしいほうがいいですから」と金さんは言葉に力を込めます。
研究施設が前身 こだわりの有機質堆肥の背景にあるもの
赤城オーガニックは、1967年に設立された実験牧場が前身です。群馬県と共同で畜産堆肥の研究を行っていました。
よりよい堆肥を作るためには良質な有機物を仕入れる必要があると判断した当時の社長が、1989年に廃棄物処分業の許可を取り、食品工場から出される廃棄物をリサイクルしながらよりよい有機質堆肥づくりに努めてきました。
「その姿勢を受け継いで、慎重に廃棄物を選んでいます」と話す金さん。着手したらとことんやらないと気が済まない性格が、この世界へ駆り立てました。
2004年に同社に入社して以来、時には農学博士ら専門家の意見を仰ぎ、有機質堆肥づくりに試行錯誤を重ねてきました。
「微生物(菌)の働きによって有機物が分解されることが発酵ですが、完全に分解されたものを畑に施用しても土づくりの効果は出ないとも言われます。当社の有機質堆肥は7〜8割まで分解されたもので、堆肥を土に混ぜてから菌に働いてもらうことを狙っています」と金さんは話します。
原料は、豚糞や鶏糞、飲料工場から出される茶やコーヒーの粕、食品工場の食物残渣など。廃棄物はいつも同じ状態ではないため、それぞれの特性を把握して発酵させることで、安定した品質で仕上げる技術を持つことが同社の強み。赤城山麓で日夜発酵を重ねた堆肥は、温かい土の匂いと手触りがします。
おいしい農産物を、有機でつくる。モニター生産法人の募集を開始します
「先述のホウレンソウはごくまれな事例で、有機質堆肥は使い続けることで土の状態がだんだんよくなっていく長期的な資材です。これから苗を植える、種を播く畑の土づくりに使ってみてほしいと考えています」と金さん。現在赤城オーガニックでは、有機質堆肥を使って感想を寄せていただける、モニター生産法人を募集しています。
各種商品がありますが、土壌はそれぞれ違うので、小さい区画でテストをしながら使っていくといいでしょう。
堆肥の形状は、緩効性の粒状は栽培期間の長いトマトなどの果菜類、即効性のある粉状は短期間で収穫するホウレンソウなどに適しています。どの商品を使えばいいか迷っている方は、赤城オーガニックが親身に相談に乗ります。
「慣行農法からの切り替えは、農家さんにとって勇気のいることですよね。私は、よりよい農作物をつくるために、志があってもなかなか一歩を踏み出せなかった方を全力でサポートしたいと思っています。まずはお気軽にご相談ください」と金さん。
安全でおいしい農産物が作れるように、ビジネスパートナーとして全力でサポートできる会社になりたいと目標を掲げます。
今こそ、おいしさで選ばれる持続可能な農業を、赤城オーガニックと共に本気で目指しませんか。
モニターに関心のある方、土壌について相談したい方は、お気軽にお問い合わせください。
【お問い合わせ先】
株式会社 赤城オーガニック
住所:群馬県前橋市富士見町赤城山405番地2
電話:027-288-6522