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障がい者や高齢者が生きがいを実感できる農園へ。「ディスカバー農山漁村(むら)の宝」選定者インタビュー

障がい者や高齢者が生きがいを実感できる農園へ。「ディスカバー農山漁村(むら)の宝」選定者インタビュー

農業従事者の高齢化や後継者不足により、日本の農業は危機に瀕しています。地域農業において担い手の確保は最重要課題であるものの、いまだ明確な解決への糸口が見つかっていないのが現状です。そうした中、「農業」と「福祉」が連携し、双方の課題を解決する農福連携で地域農業活性化に取り組む農園が注目されています。第7回「ディスカバー農山漁村(むら)の宝」に選定された石川県・株式会社笠間農園の笠間 令子さんの活動から、農福連携がもたらす日本の農業の明るい未来と、農業と福祉、両者が得られるメリットを紹介します。

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強い農林水産業、美しく活力ある農山漁村の実現のためにー。「ディスカバー農山漁村の宝」とは

日本の基幹産業の一つである農業は、全国各地の農山漁村によって支えられています。しかし、地域資源や活躍する人材が広く知られる機会はあまりなく、日本の宝とも言えるそれらが埋もれてしまっているのが現状です。
そこで農林水産省では、農山漁村の有するポテンシャルを引き出すことにより、地域の活性化や所得向上に取り組んでいる優良な事例を選定、全国への発信を通じて他地域への横展開を図るため「ディスカバー農山漁村(むら)の宝」として選定しています。

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「ディスカバー農山漁村(むら)の宝」特設WEBサイトはこちら

2022年に9回目を迎えたディスカバー農山漁村の宝では、 「美しく伝統ある農山漁村の次世代への継承」、「幅広い分野・地域との連携による農林水産業・農山漁村の再生」、「国内外の新たな需要に即した農林水産業の実現」のいずれかに該当する取り組みを全国から募集。強い農林水産業と美しく活力ある農山漁村の実現に向けた光り輝く活動は、ふるさとの底力をわたしたちに知らしめています。

2022年11月7日、第9回の選定が決定!詳細はこちら

今回は、2020年に第7回ディスカバー農山漁村の宝に選定された石川県内灘町(いしかわけんうちなだまち)の笠間農園が取り組む農福連携を紹介。農業が抱える担い手不足と福祉分野にまつわる諸問題を、両者が支え合うことで解決へと導く笠間さんの活動には、地域農業に光をもたらす大きな可能性が秘められていました。

高齢者のいきいきとした働きに感じた、農福連携の可能性

ホウレンソウや小松菜を一年を通して市場に出荷する石川県内灘町の笠間農園は、昭和50年代から続く野菜農家です。河北潟干拓地(かほくがたかんたくち)として知られるこの地域は、昭和46年度に国営河北潟干拓土地改良が完了。当初は水田利用が目的でしたが、減反政策により、昭和52年から土地利用計画が畑に変更された経緯があります。昭和54年から暫定営農が始まり、昭和56年からは酪農団地の入植開始。昭和61年から本格営農となり、現在に至っています。

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「粘土質の干拓地では畑作が難しかったが、義父はキャベツやスイカ栽培に尽力し、農園を支えてきました。その頑張りと魅力を目の当たりにした主人は大学卒業後、就農を決意しました」

と、笠間農園の歴史を語る笠間 令子(かさま・れいこ)さんは石川県金沢市出身。医療機関で作業療法士として忙しい毎日を送っていましたが、子育てを機に一度、休職を決意。育児や家事の合間を縫って農園の手伝いをしたのが農業に携わるきっかけになったと言葉を続けます。

「農園で目にしたのは60〜70代の高齢者が元気に働く姿です。作業療法士として病院でケアしてきた年代の方々がいきいきと働く姿に、農作業はリハビリにぴったりという気付きがありました。高齢者の多くは人のお世話になる立場ですが、農業の現場では人の役にたち続けています。働く場所を作ることの大切さを知りました」

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笠間さんには作業療法士としてやり残したことがあります。交通事故で障がいが残った中学生を担当した際、母親が「将来、どうにか働けるように」と一生懸命リハビリをサポートしていました。農家に嫁ぐと告げた際、「農業なら障がいがあってもできるかもしれない!」と目を輝かせたそうです。その姿は今も笠間さんの心に強く残っていると話します。

「障がいがあっても活躍できる環境を提供し、農作業を通じて達成感や生きがいを感じられる農園を作ることがわたしの使命と考えました。それが農福連携に取り組んだきっかけです」

とはいえ、ご主人には障がい者を受け入れることで仕事の流れが崩れるのでは……。といった懸念がありました。障がい者とこれまで関わったことのないご主人は、何ができるのか、どう接すればよいのか戸惑いがあったそうです。

「農業は収穫した農産物が収入の全てなので、夫の心配は痛いほどわかりました。障がい者を受け入れることで収入が減っては本末転倒。経営者として売上を確保するのは当然の務め。ボランティアではなく、お互いのメリットになることを第一に考え、*就労継続支援B型事業所の受け入れをはじめました」

事業所スタッフと共に作業環境の整備や負担のない就労時間などを工夫した笠間さん。障がい者の受け入れに不安だったご主人でしたが、受け入れから約半年後、「なかなかやるじゃん」という言葉が笠間さんに向けられます。障がい者も農業で活躍ができ、担い手になることを確信した笠間農園は、障がい者や高齢者が働きやすい環境づくりを意識し、収量向上に努めています。

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*就労継続支援B型事業所
通常の事業所に雇用されることが困難であり、雇用契約に基づく就労が困難である方に対し、就労の機会や生産活動等の機会の提供、また、その他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練・支援を行う事業所及びサービス

農業と福祉分野をマッチングし、両者の課題解決へ

障がい者を受け入れるにあたって、笠間さんは自身の役割を「スタッフと障がい者の通訳」と話します。障がい者の中には就労時間が限られていたりトイレの回数が多いなど、さまざまな条件があります。また、農業は天候に左右され、予定していた出荷数が増えて忙しくなることも、虫食いが多いことも色々あります。これらの課題に令子さんが通訳となって間に入り、お互いを理解し気持ちよく働けるようにしています。

「収穫や軽量、袋詰め、箱詰めなど、農家が一連の流れでやっている作業を細かく分け、繰り返し作業を各々にお任せし、数人のグループで一連の作業を完成させます。手続き記憶を利用し繰り返し作業を行うことで、障がい者でも負担なく効率的に作業ができるからです」

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このほか、収穫目標数を定め、見える化することで達成感を得られるようにするなど、障がい者に働きがいとやりがいをもたらすよう工夫された笠間農園の取り組みは、農福連携のロールモデルとして全国への横展開が期待されます。

「農業の人手不足、福祉分野の就労問題をマッチングすることで両者が抱える問題を解決できると感じています。しかし、安定した仕事を提供することや希望する金額を稼げるようにすること、暑さ寒さに耐え、変化に対応する力を身に付けさせることなど課題は山積みです。」

と、農福連携の課題について話す笠間さんは、平成30年より石川県農福連携促進アドバイザーとして課題解決に向けて活動しています。徐々に理解が広まり、石川県が農福連携事業を始めた29年度から令和3年度まで、県内のマッチング数は90件と増加しています。

「作業療法士のような特別な資格がなくても、全国ではたくさんのアドバイザーが活躍しています。ディスカバー農山漁村の宝に選定いただいたことで農福連携の取り組みを広く知っていただき、地域農業の発展に役立てていただければ幸いです」

選定されたことで、これまでやってきたことが評価された喜びよりも、農福連携が日本の農業及び福祉分野で必要とされていることを改めて認識したと話す笠間さん。その活動は、自治体や福祉事業所の方々の協力なくしては成しえなかったと振り返ります。

「農福連携にはいろいろな人たちの協力が必要不可欠です。それぞれが知恵をしぼり、アイデアを出し合うことで、一歩ずつでも進めていくことができるはずです。農業がもたらす心身の健康と共に、福祉分野との共生に取り組んでいきたいです」

笠間さんは、金沢医科大学の医師の協力のもと、農業における活動量の測定や、北陸農政局による農業と睡眠の関係性を示す実証実験を行いました。農業の医学的な良い話をエビデンスとして示すことで農業がもたらす健康促進への理解が深まり、福祉分野や高齢者の就労につなげることが狙いです。

「農福連携に携わる人たちの活動は小さな花を咲かせるようなものかもしれません。でも、その花が全国に広がることで障がい者や高齢者が生きがいをもって働ける場所を作ることができます。今後は地元の小学生などを招いた収穫体験なども継続し、地域農業の発展にも努めていきたいです」

と、抱負を語る笠間さん。農業も福祉も“人と人との連携”が最も大切であることを示した笠間農園の取り組みは、農福連携の新しいかたちとして、全国に広がっていくことでしょう。

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