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やりたい農業を実現するためのドローンへの期待と課題

やりたい農業を実現するためのドローンへの期待と課題

わが国では1960年代にヘリで田畑への農薬散布を行う航空防除事業が開始され、制度化や実施基準の整備を受けて大規模な防除が行われてきました。その後、1990~2000年には比較的小規模な無人ヘリ防除が台頭。ドローンは2020年頃より台頭し始めており、農業への航空機器利用はほぼ30年の周期で新たなソリューションが開発されていると言えます。今回は農村DX時代にドローンへ向けられる期待と課題を解説します。

農業と航空機の半世紀を超える関係

1960年頃よりコメの供給量を増やし安定させるため、有人のヘリコプターを用いた広域での航空防除が実施され始めました。1980年頃には農村に非農家世帯が増える混住化や、コメ消費量の低下、多様な作物・栽培法の混在化などを背景に、広域ではなく地域単位や圃場(ほじょう)単位での防除の必要性が高まり、小型で小回りの利く内燃機関を持つ小型無人ヘリコプターが台頭することになります。

複数の回転翼を有するマルチコプター型のドローンは当初、エンターテインメントや空撮などの用途で開発が進んでいました。飛行時の安定性の高さ、操作の簡易性、比較的安価に導入できる手軽さが特徴です。時代と共に多様化した農業生産者ごとのニーズに対応し、小型無人ヘリが実施していた防除や環境センシングといった機能をよりニーズに合わせて細かく対応させることや、目視外飛行が可能なレベル4飛行の解禁による総飛行距離の伸長が見込めることで、ドローンは中山間地域での資材輸送や鳥獣害対策などの用途で期待されています。

無人航空機、小型無人機に分類されるドローン配送の実証実験としては、高低差がある場所での活用を目指した中山間地域や都市部の高層マンションでの実証や、高速かつ安定した輸送力を生かした牛の受精卵輸送の実証が行われています。また固定翼と回転翼を併せ持つハイブリッド型のドローンでは、航続距離が50キロとなっており、長距離飛行が可能となっています。さまざまな実証により具体的に使用イメージが想起できるようになってきており、今後ラインアップが充実していくことで家電を選ぶような感覚で個々のニーズに合った機体を選択できるようになるでしょう。

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農業分野で活躍する航空機(農業用ヘリコプター)

農薬散布を例にしたドローンが得意とする環境

既に農業分野では目視内で自律航行させるレベル2飛行で圃場センシングや農薬散布などに利用されていますが、ドローンに向いているのはどのような利用環境でしょうか。例えば果樹園での農薬散布では、自走式の乗用型薬剤噴霧機がよく用いられます。乗用型薬剤噴霧機はある程度の面積を一度に薬剤散布できて便利な一方、走行速度や散布時の風雨への配慮が必要な点、重量が重くて軟弱地面や傾斜地では立ち往生や横転の危険がある点、生産物に干渉したり踏みつぶしたりと傷をつけてしまう可能性がある点に注意が必要です。対してドローンは可搬重量が小さく一度に散布できる農薬量は少ないものの、多少の悪天候でも稼働でき地面の影響を受けないといった良さがあります。

ドローンを作業の中で使う場合は作物状況や環境、天気等を把握するとともに、ドローンの長所短所を理解したうえで使用することが大切です。

手軽さを支える共通化

本年度はレベル4飛行に向けてドローンの機体登録の義務化と認証、操縦ライセンスの国家資格化、共通運航ルール策定といった法制度や体制の整備が着々と進みつつあります。本整備はルールにのっとることができる安心感がある一方で、機体を識別するリモートIDへの対応やメンテナンス水準をクリアするためのコスト負担や機体への影響、国家資格化した操縦ライセンスの適応範囲と従来の技能認定との適合などが懸念されます。

また、同じメーカーの機体間でもバッテリーやコントローラー、交換部品などのアクセサリーなど、機種やシリーズによって異なっている製品が多く見かけられます。開発者目線で考えると、オープンなエコシステムである自律航行制御用のArduPilot(アルデュパイロット)や、フライトプラン作成を行うMission Planner(ミッションプランナー)は誰でも使用することができる代表的なツール群ですが、複数台運用や統合的な情報連携を行うシステムは各社が用意する必要があります。

ユーザーの立場でも開発者の立場でも、ドローンの利活用を進めるためには共用/共通部分を増やし、手軽にニーズに合わせたドローンの利活用が実現できることが鍵と考えられます。

今後のドローンの発展と期待

レベル4飛行やその法整備に注目が集まる中ですが、係留ドローンは2021年に飛行規制が緩和されました。周囲の安全を損なわないよう十分な強度があるひもなどで係留することが条件にはなりますが、一部の許認可が不要になっています。係留用ケーブルと電源ケーブルをくっつけることでバッテリー搭載が不要なドローンも開発されています。またプロペラ風力を用いた倒立振子制御のツールも開発されており、推力としてドローンを捉えていくことで従来にはない機能が実現できることが期待されます。
 
自律航行するドローンだけでなく、係留し一定範囲を身軽に飛ぶドローンや推力として扱われるドローンの登場を期待しつつ、各農業生産者が自分のニーズに合ったドローンを選び手軽なツールとして利用することで農村DXが少しずつ進んでいくと考えます。

書き手・日本総合研究所 大原慶久
株式会社日本総合研究所 創発戦略センター スペシャリスト
専門は、知能化システム(ロボティクス・AI/IoT・ドローン等)、システムと人のインタラクションにて、高齢者介護、農業、交通等のSocial DX実現に向けたシステムの構想・事業開発に取り組む。

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