施肥の合理化を期待してコンサルティング契約
木村さんに会うことになったのは、農業法人のこと京都(京都市)代表の山田敏之(やまだ・としゆき)さんへの取材がきっかけだ。売り上げが20億円に迫り、ネギの栽培や加工で国内有数の規模を誇ること京都は、肥料価格の高騰にどう対応しているのか。それを聞くのが取材の目的だった。
山田さんの話は、パートを増やして社員の残業を減らし、人件費を抑えているという内容が中心だった。経費を減らせば、肥料代が上がった分を吸収できるからだ。その中でふと思い出したようにこう語った。「施肥の内容を改善するため、コンサルタントと最近契約した」。それが木村さんだった。
こと京都の圃場の面積は、京都府内に合わせて35ヘクタールある。木村さんにその一つ一つを回って土壌を分析してもらい、施肥の適正化や土づくりについて指導を受けている。うまくいけば肥料をまく量が減り、ネギの品質や収量も向上する。そんな効果を期待して、木村さんと契約した。
山田さんの話の中でとくに興味深かったのは、木村さんが自ら経営していた農業資材の販売会社を譲渡し、コンサルティングを始めたという点だ。なぜ施肥設計を指導するため、会社を手放したのか。「彼は頑張っている」という山田さんの言葉に背中を押され、木村さんに取材を申し込むことにした。
販売と指導をともに手がけて気づいたジレンマ
「肥料を売らなければならないという気持ちがどうしてもあった。それをいったんリセットしてみたいと思った」。木村さんは肥料や農薬、マルチなどの農業資材を販売する会社を、2021年末に譲渡した理由についてこう語る。
販売会社を経営していたときも、肥料の使い方などを指導していた。指導とセットにしたほうが肥料を売りやすいのもあるが、理由はそれだけはない。