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生産物の価値を高めるデジタル技術活用 ~ブロックチェーンが生む可能性~

生産物の価値を高めるデジタル技術活用 ~ブロックチェーンが生む可能性~

丹精込めて作った生産物を高く評価してほしいと思うのは生産者にとって自然なことでしょう。今回はデジタル技術“ブロックチェーン”を活用し、生産物の価値向上を目指した事例をご紹介します。

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ブロックチェーン活用の意義

まずはブロックチェーンとはどのような技術なのかを簡単に説明します。
ブロックチェーンとは、中央集権型の管理者を置くことなく記録の正しさを証明する技術です。ブロックチェーンは、その記録を不特定多数の人が見られるようにしています。さらに記録の正しさを相互にチェックできるようになっています。詳細は省きますが、これはインターネットと暗号技術によって実現されています。これによって中央集権的な管理者を置かずとも記録の正しさが担保されるというわけです。

調理場整備の失敗

中央集権型の記録管理とブロックチェーン(日本総合研究所作成)

では、ブロックチェーンを使うことのメリットはどこにあるのでしょうか。その一つは、記録の透明性です。ブロックチェーンを使えば、記録の改ざんや誤記録のリスクが減ります。また、管理者によるデータの独占・寡占も難しくなります。それにより、半永続的な記録の透明性の維持が期待できます。

しかしながら、完全に管理者をなくしてしまうことはビジネスとして使うには少々不便でもあります。企業が活用する場合、管理者がいない仕組みを使うという意思決定を必ずしもできるわけではないからです。皆さんの中にも、「ブロックチェーンの記録の正しさは 管理者不在であっても技術的に保証されている」という説明を受けてどうも腑に落ちないと感じる方もいるのではないでしょうか。そこで、不特定多数ではなく特定多数で管理するコンソーシアム型ブロックチェーンという技術があります(これと対比する形で不特定多数で管理するブロックチェーンをパブリック型と呼びます)。コンソーシアム型では、特定多数の管理者を信任する必要はありますが、中央集権的な管理者を信任する既存の仕組みよりも記録の透明性はあるといえます。つまり「記録の透明性」と「管理者の分散」のバランスを取って、ビジネスとして使いやすい形としたブロックチェーンがコンソーシアム型となります。

調理場整備の失敗

パブリック型とコンソーシアム型のブロックチェーン(日本総合研究所作成)

トレーサビリティーへの活用で付加価値を訴求

このブロックチェーンによる記録の透明性を活用して、生産物の価値を高めている事例にはどのようなものがあるのでしょうか。最もわかりやすい事例はトレーサビリティーへの活用です。

例えば、世界的なコーヒーチェーンであるスターバックスは、店舗で使われているコーヒーの移動経路や、豆から袋詰めされるまでの工程をブロックチェーンに記録しました。そして、サプライチェーンの関係者や顧客がその記録を確認できる仕組みを作っています。スターバックスは、これらの方策により、透明性ある記録を通じて顧客が飲むコーヒーのストーリーを訴求することを狙っています。

また、フランスの小売チェーンであるカルフールは、プライベートブランドの有機オレンジのトレーサビリティーにブロックチェーンを活用しています。ブロックチェーンには生産者の名前や収穫日、有機認証に関する情報などが記録されます。透明性ある記録により自社ブランドの信頼性を訴求する狙いだといえます。

生活者の中には自らが購入した品のサプライチェーンにおいて、安全性や品質が担保されているか、環境配慮ができているか、倫理的な調達がなされているかどうか、などに関心を高めている人たちが増えています。スターバックスもカルフールも、ブロックチェーンを使ったトレーサビリティーによってそうした人への訴求を高めているのです。

トレーサビリティーによる付加価値の訴求に使われているという点において、ブロックチェーンは高付加価値の生産物との相性がよいといえます。日本でもこうした特徴を生かして、高付加価値の生産物への活用事例が生まれつつあります。例えば、近年グローバル展開と高付加価値化が進む日本酒における偽造防止などです。

次回は、実際にブロックチェーンを活用して生産物の価値向上に挑戦するSBIトレーサビリティ株式会社の代表取締役・輪島智仁さんに、実際にどのような価値が生まれているかお話を伺います。

書き手・日本総合研究所 木村 智行
株式会社日本総合研究所 創発戦略センター マネジャー
専門は、ブロックチェーン(トークンエコノミー)、新規事業開発、オープンイノベーション。トークンを活用したオルタナティブな経済モデルによる社会課題解決に取り組む。

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