農福連携の優良事例を全国に広げるノウフク・アワード
障害のある人など多様な人材が農林水産業で活躍する優良事例を表彰する「ノウフク・アワード2022」の授賞式が、2023年2月15日、東京都内で行われた。主催は、農林水産省をはじめとする4省庁およびJA全中、経団連ほか、民間企業等が参加する農福連携等応援コンソーシアム。農福連携に取り組んでいる優れた事例を表彰し、全国への発信を通じて他地域への横展開を図るため、2020年に賞を創設した。
3回目の今年は、全国から182団体がエントリーし、23団体が受賞。そのうちグランプリには、長年生きづらさを抱える人々を受け入れ、世界的に評価の高いチーズを生産してきた共働学舎新得農場(北海道新得町)、障害のある人の特性を生かし高い工賃を実現しているゆずりは会菜の花(群馬県前橋市)の2団体が選ばれた。
授賞式にはタレントでノウフクアンバサダーを務める城島茂さんも登壇。プレゼンターとしてトロフィーを授与し、受賞者にお祝いの言葉をかけていた。
ノウフク・アワード2022選定結果(農林水産省ホームページ)
続いて行われたシンポジウムでは、グランプリを受賞した2団体が農福連携の取り組みについて発表。共働学舎新得農場代表の宮嶋望(みやじま・のぞむ)さんは、メンバーそれぞれが違う生きづらさを持つ農場で世界レベルのチーズを作るようになった経緯などを紹介した。また、ゆずりは会 菜の花の管理者である小淵久徳(こぶち・ひさのり)さんは、施設に通う利用者が農業に取り組むことが、地域の農家の存続にもつながっていることなどを紹介。
この二つの事例の発表を受けて、審査員の一人で津田塾大学客員教授の村木厚子(むらき・あつこ)さんは、「これまで思い込んでいた枠を超えた発見や挑戦がある。ノウフクの現場には今それがあふれている」と講評した。
農福連携の現場から生まれる社会課題の解決方法も
また、最後に農福連携の現場におけるさまざまな課題解決をめざす「ノウフク・ラボ」の成果発表が行われた。現在ノウフク・ラボでは、「トイレ」「テクノロジー」「販路拡大」の3分野で、農業や福祉以外の他の業種とも協働しながらワークショップなどの活動を行っている。
トイレをテーマにした「トイレラボ」では、農福連携現場でのトイレ問題を洗い出すアンケートで、トイレがないことなどを理由に障害のある人が農作業を諦めるという意見もあったことを紹介。2022年には障害のある人も参加した「トイレキャンプ」で当事者の意見やアイデアを聞く取り組みなどを行い、今後は実際のトイレの開発につなげていくという。
その他、「テクノロジーラボ」では農作業の効率化や安全性の向上などをめざした技術開発が、「販路拡大ラボ」では一般企業との協働での商品開発が進んでいる現状が報告された。
ノウフクアンバサダーの城島さんはシンポジウムの最後に、この1年を振り返って農福連携の取り組みに関してコメント。ノウフク・ラボにも参加する中で、「着実に前に進んでいることが見えた1年だった」と活動を評価したうえで、「ノウフクの取り組みがスタンダードになって、『ユニバーサル』という言葉もなくなるぐらい当たり前の時代になることを願ってやみません」と締めくくった。