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結婚を機に農家へ転身。14代続く老舗農家に婿入りしたアメフト元日本代表、都市型農業の舞台へ

結婚を機に農家へ転身。14代続く老舗農家に婿入りしたアメフト元日本代表、都市型農業の舞台へ

アメリカンフットボールの元日本代表選手である岡田啓太(おかだ・けいた)さんは、結婚を機に妻の実家である老舗農家で就農。義父に農業を教わり、先輩農家から刺激をもらって、妻の協力を得ながら都市農業という名のコートで奮闘してきました。「農業が楽しいのは、地域との一体感があるから」と話す岡田さんに、東京で農業をする魅力やこれからやっていきたいことなどを聞きました。

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アメフト元日本代表、結婚を機に妻の実家で就農

東京・三鷹市で300年続く農家に婿入りした岡田啓太さん(35)は、アメリカンフットボールの元日本代表選手。高校、大学、社会人チームでトップ選手として活躍しました。現役時代の2016年に入籍。翌年の夏、妻の実家の岡田農園に就職し、義父、義母、妻、岡田さんの家族経営で農業をしています。

岡田啓太さん顔

岡田農園の岡田啓太さん。住宅街の一画にある畑にて

「妻との結婚を考え始めた時から農業を次の仕事として意識していたので、新しいことへのチャレンジが楽しみでした」と岡田さん。もちろん農業は初心者です。

就農後は農家の14代目である義父の源治(げんじ)さんと一緒に畑に入って、とにかく手を動かして体で農業を覚えました。大先輩である義父は農業歴約40年のベテランですが、常々口にするのは「農業は1年1回の勝負」。実際にやってみるとその言葉が身に染みます。だからこそ、毎日が勉強で一つ一つの管理が大事。中途半端なことをすると厳しく叱られるのは当たり前。就農6年目を迎えた岡田さんですが、「まだ見習い中です」と謙遜気味です。

岡田啓太さん農作業

岡田さんにとって次シーズンが農業7回目の勝負

三鷹市には、住宅街の中に農地が点在しており、農家の直売所があります。岡田農園では、計1ヘクタールの畑で、夏のトマト、トウモロコシ、枝豆、秋のダイコン、キャベツ、ハクサイなど、30種類の露地野菜を周年で栽培。朝収穫した野菜は人気で、近隣4カ所のコインロッカー式の直売所に並べると、10時には完売するほど。地域の人々と顔が見える関係。住宅街に囲まれた畑。「地域の人と距離が近いからこそ、中途半端な農業はできない」と岡田さんは仕事に対する責任を語ります。

岡田農園の直売所

地域にはコインロッカー式直売所が多数。常連客が多い岡田農園の直売所(画像提供:岡田啓太)

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農業男子の活動で深めた、地域と農業と自分の関係

岡田さんは、地域の農家では最若手の一人。自分から積極的に話しに行くことで、先輩農家からも温かく迎えられ、地域にもすんなりなじめたそう。そこでは、先輩農家から学ぶことがたくさんありました。「農作物そのものは単価が安いけれども、みなさんがいろいろなアイデアを持ち、付加価値のある農業にチャレンジしていることに刺激を受けます」と岡田さん。

岡田啓太さん横顔

付加価値のある農業にアンテナを張る岡田さん

自分も何かしなければと考えている中で、一つの契機となったのは、就農4年目に行われた「農業男子×総選挙」でした。JA東京中央会(東京都立川市)が主催する、14人の若手農業者の中から上位3人が東京の農業をPRする広報大使に選ばれるというイベントです。2020年10月、このイベントにJA東京むさしの推薦を受けて代表として参戦。当時は社会人アメリカンフットボールの現役選手でもあった岡田さんのキャッチフレーズは「体格もやさしさもヘビー級」。約2カ月にわたるインターネット投票の結果、2万票以上を集めて見事1位に輝きました。

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「メディアに取り上げていただいたり、いろいろな場に出向いて多業種の人から話を聞いたことがよい勉強になって成長できたと思います」と岡田さん。幅広い年代の人に声をかけてもらい、農業を知ってもらうことができ、地域との関わりがより強くなりました。

地域の人との身近さが、東京の農業の魅力

地域一体となって付加価値を生むことが、東京の農業の魅力。岡田農園でも、地域の子どもたちに畑に入って農業体験をしてもらったり、JA東京むさしと連携して学校給食に地場産の野菜を食べてもらったりして食料自給率を上げていく取り組みをしています。援農ボランティアの申し込みも増え、岡田農園でも3人を受け入れています。

岡田農園の季節野菜

収穫した野菜は地産地消(画像提供:岡田啓太)

農業が身近にあることは、地域の人にとっても価値があり、一緒に何かをしたいと話を持ちかけてくれることも多いと岡田さんは言います。農業を食育や防災、福祉につなげることも。お互いにアイデアを出しながらコラボレーションが生まれているそうです。だから、「いつもウェルカムで地域と共生共存していきたいです」と話してくれました。

「農業は楽しいです。それはこの地域でやっているからだと思います。しっかりコミュニケーションを取りながらやっていきたい」と岡田さん。高校、大学でアメフトのキャプテンを務め、時に100人近くの部員をまとめていた経験が生きています。常に周囲にアンテナを張り、自分の立場を考えて、地域性を尊重した農業をしていくことが、農家としての心構えだそうです。

フードトラック事業を立ち上げ、みせる農業を目指す

農業で更に何かできないか。妻と一緒に考えたのが、東京の農業をPRするフードトラック。企画書を作り義父にプレゼンして承諾を得ました。婿として農業に入った岡田さんにとって、妻は話を聞いてくれる大事な理解者だと言います。

フードトラックTOKYO・FARMER’s・KITCHEN

キッチンカーはアメリカンな雰囲気(画像提供:岡田啓太)

2021年10月、「TOKYO FARMER’S KITCHEN」という名でキッチンカー(移動販売車)事業をはじめ、地域の農家や畜産家の食材を使ったサンドイッチを販売。規格外の野菜を買い取ってフードロスの削減にも取り組んでいます。東京都と神奈川県で営業許可を取り、イベントを中心に出店。出店依頼も増えてきたそうです。

イベントに出店するフードトラック

キッチンカーでイベントに出店(画像提供:岡田啓太)

岡田さんが目指しているのは、「みせる農業」。責任を持ってしっかりやって、地域に認知してもらうことで、活動の場を広げていこうとしています。「農業に学ばせてもらっている」と話す、これからがますます楽しみな35歳です。

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