なすに発生するハダニとは?
ハダニは体長0.5~1mm程度の虫であり、8本足であることから分類上はクモの仲間とされています。約70種類ほどのハダニの中でも、なすに寄生するのは主に「ナミハダニ」と「カンザワハダニ」の2種です。
特徴的なのはその繁殖力の高さであり、1回の産卵で100個以上の卵を産み付けると言われています。10日前後の短いスパンで世代交代を繰り返し、気を抜くとあっと言う間に蔓延してしまうので十分注意しましょう。
気温が高く乾燥した環境を好む傾向があり、日本では特に7~9月にかけて大量発生しやすいです。5~10月に旬を迎えるなすにとってハダニは大敵と言えます。
ハダニは主になすの葉裏に生息して、葉の栄養素を吸汁(きゅうじゅう)します。吸汁された部分は白く変色するため、葉の表面に出来た白い斑点模様が被害初期段階のサインです。白く変色した葉は光合成が出来なくなるため、枯れ落ちてしまいます。ハダニは寄生していた葉から吸汁出来なくなると次の葉へ移動するため、放置してしまうと被害は拡大する一方です。
落葉してなすの実に十分な養分が行き渡らなければ、収穫量の減少にもつながります。早い段階で対処することを心がけましょう。
なすにハダニが発生する原因は?
ハダニは気温が高く湿度が低い環境を好むため、なすを栽培している環境がこの条件に当てはまると蔓延しやすくなります。
目安としては気温20~30℃、湿度50%未満であればハダニにとって生息しやすい環境です。雨の少ない地域やビニールハウスの中でなすを栽培する場合は特に注意が必要となります。
また、ハダニは風にのって移動してくるケースが多いことも覚えておきましょう。ハダニはクモのように自分で糸を出すことが出来るため、風を利用して高所や遠くへ移動します。
屋外栽培の場合は完全に進入を遮断することが難しいですが、防虫ネットを活用する、作業前後に衣服をはたくなどしておくと良いでしょう。
なすのハダニ対策に有効な農薬は?
ハダニはその特性上、物理的な対処で駆除することが難しい害虫とされています。ハダニに有効な農薬を組み合わせ、正しく使用することが効果的です。
ただし、ハダニの生育ステージによって効き目が変わる農薬もあるため、適切な農薬を選ぶことが重要になってきます。
おすすめはダニオーテフロアブル
日本曹達株式会社が開発したダニオーテフロアブルは新規有効成分アシノナピルを含む農薬で、有効性・安全性など様々な面で優れた評価を得ています。速効性にも優れているため、ハダニ被害が出はじめてからの使用にもおすすめです。
ダニオーテフロアブルの特長は?
耐性を獲得したハダニにも有効性が高い
ダニオーテフロアブルに含まれているアシノナピルはIRACの作用機構分類でグループ33に属し、カルシウム活性化カリウムチャネルモジュレーターに分類された唯一の成分です。
これは既存の農薬に対して抵抗性がついてしまったハダニに対しても有効であることを意味しています。
そのため、ダニオーテフロアブルは、既存の農薬に対して抵抗性を獲得し、効果の低下が著しいハダニ類に対して、有効性の高い貴重な農薬の1つと言えるでしょう。
有用昆虫や天敵に対しての影響が極めて少ない
ダニオーテフロアブルはその名の通りハダニに特化した農薬であり、ミツバチ・マルハナバチ・マメコバチといった有用昆虫や、カブリダニ類・タイリクヒメハナカメムシ・タバコカスミカメ・コレマンアブラバチ等の天敵に対しての影響が極めて少ないことが大きな特長となっています。
なす栽培においては総合防除・ IPMでの活用に適している農薬です。
また、農薬は登録を取得した作物のみに使用が限定されているため、どれだけ優れた効果を持っていても作っている作物が対象となっていなければ使用することが出来ません。
その点でもダニオーテフロアブルは登録作物の種類が豊富であるため様々な作物に対して使用可能です。
なので、ダニオーテフロアブルはハダニ類に対して選択的な高い効果と有用昆虫や天敵に対する安全性を兼ね備え、安心して使える農薬と言えます。
いかなるステージにおいても高い効果と速効性
卵・幼虫・成虫などハダニの特定の成長プロセスにのみ有効な農薬も多いですが、ダニオーテフロアブルはいかなるステージにおいても高い効果と速効性が認められています。
例えばある試験では、一般的なハダニ殺虫剤が高い効果を発揮するまでには平均5時間程度のタイムラグがある条件で、ダニオーテフロアブルは3時間程度で効果を示したことが明らかになりました。
幅広い使い方に対応
また、ダニオーテフロアブルは経口・経皮のどちらでも効果を発揮するという点も大きな特長です。なすの葉に散布してもハダニに直接散布しても有効なので、幅広い使い方に対応しています。
ダニオーテフロアブルの使い方は?
2. 他の農薬とローテーションする
ダニオーテフロアブルを使用する際は、まずはフタをしたままよく振っておきましょう。基本的には展着剤を別途用意する必要はありません。
また、サビダニやホコリダニに対しては効果がないため、これらのダニ類への対処も必要であれば別の農薬とダニオーテフロアブルを組み合わせて使用しましょう。
ただし、ダニオーテフロアブルは銅を含む農薬や葉面散布肥料との混用や近接散布で防除効果が低下する可能性があります。混用をさけるのはもちろん、ダニオーテフロアブル散布後に銅剤を散布する場合は、最低でも10日間はあけてください。
銅剤を先に散布した場合は、ダニオーテフロアブルの使用をさけておくのが無難です。
ダニオーテフロアブルは浸透移行性がないため、葉に染み込んで広がっていくタイプではありません。効果的に使用するためには葉の裏表両面にまんべんなく散布するように心がけてください。
また、ハダニ類は薬剤抵抗性が発達しやすいので、ダニオーテフロアブルばかりを使用していると耐性がつき効果が低下してしまいます。
有効性を長持ちさせるためには、作用性の異なる他の農薬を順番に使用するローテーション散布がおすすめです。1年に1回の散布を守りましょう。
ダニオーテフロアブルを使用する際の注意点
ダニオーテフロアブルは作物や有用生物に対する高い安全性と適用作物の多さが特長ですが、薬害の発生を確実に回避することを保証するものではありません。
適用作物で新しい品種が開発された場合にも注意が必要です。初めて使用する場合は使用者側で責任を持ち、事前に薬害が出ても問題ない部分に少量散布して、薬害の有無を十分確認してから使用するようにしましょう。
また、安全のためには使用に際して使用量・使用時期・使用方法など厳守することも大切です。特にダニオーテフロアブルを初めて使用する場合は、病害虫防除所等関係機関の指導を受けながら作業にあたるのが良いでしょう。
散布の際は農薬用マスク、手袋、長袖・長ズボンの作業衣などを着用してください。作業後は直ちに手足や顔などを石けんでよく洗ってうがいをした上で、新しい衣服に着替えるようにしてください。
保管する際は直射日光をさけてなるべく低温な場所、食品とは区別して必ずかぎをかけて保管しましょう。子どもの手の届かない場所に保管しておくというのも農薬管理の基本です。
ダニオーテフロアブルに関してよくある質問
ハダニのどの生育ステージに効果がありますか
卵から成虫まで、すべての生育ステージで効果を発揮します。特に幼虫〜成虫に対して高い効果があります。
雨が降っても効果は落ちませんか
人工降雨装置を用いた試験において(散布→風乾→降雨→ハダニ接種)、効果に問題ないことが確認されています。
暑い(または寒い)時期でも効果は変わりませんか
温度条件を変えて(10℃、15℃、25℃、32℃)効果を確認しましたが、気温による効果変動は小さく、安定して高い効果を示します。
カブリダニ等の天敵に影響はありませんか
これまで、ミヤコカブリダニ、スワルスキーカブリダニ、リモニカスカブリダニ、チリカブリダニ、タイリクヒメハナカメムシ、タバコカスミカメ、コレマンアブラバチに対する影響を検討しましたが、いずれも実用濃度で影響は見られませんでした。
ミツバチに影響はありませんか
ミツバチに対して、実用濃度で成虫に対する影響はありませんでした。またマルハナバチ、マメコバチについても同様に実用濃度で影響は認められていません。
RACコードは何に分類されますか
殺虫剤・殺ダニ剤で唯一、グループ33(カルシウム活性化カリウムチャネルモジュレーター)に分類されます。
なすのハダニ被害にはダニオーテフロアブルの利用を検討しよう
ハダニの被害は農家にとって致命傷となり得る可能性もあります。しかし、発生する時期や条件が分かっていれば、予め対策を練るのも難しくはありません。
ハダニ対策に有効な農薬はいくつかありますが、新しい作用機構を持つダニオーテフロアブルは既存農薬に抵抗性がついているハダニに対しても有効です。使用方法や保管方法に気を付けながら大切な作物を守りましょう。