未経験でも農業への転職は可能?
結論から言えば「農業界への転職は未経験者であっても十分可能」です。そして他の業界に比べて、学歴(大卒以上など)や年齢(20代・30代など)といった募集条件があまり厳しくない点も転職希望者にとってありがたい点です。
一番必要なのは「農業の世界で生きていくという強い意志」と言っても過言ではありません。それを有している皆さんに、転職にあたって必要な知識と準備すべきことなどをお伝えします。
未経験者が知っておきたい農業の現状
自分が目指す業界の現状はどうなっているのか、まず理解しておきましょう。
端的にお伝えすると、農業界は深刻な人手不足が続いています。また高齢化が進み、後継となる若い人材が求められています。
新たに農業の道を志している人にとっては追い風の環境です。その背景となっている事実をいくつかご紹介します。
農業に就業する人口について
農家・農業に就業している人の数は、2015年に約176万人でしたが、2020年は約136万人と5年間で約40万人も減少しています。減少率は20%を超えているのです。
機械化の進展によって農業界も省力化が進んでいることは事実ですが、それを差し引いても産業として良い状況ではありません。ですが、これは農業界への転職をするという場面で考えると恵まれた売り手市場と言えるでしょう。
2015年 | 2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
基幹的農業従事者 | 175.7 | 158.6 | 150.7 | 145.1 | 140.4 | 136.3 | 130.2 |
引用:農林水産省「農業労働力に関する統計『基幹的農業従事者(個人経営体)』」
新規就農者について
では、その中で新規就農者の数はどう変化しているのでしょうか。実はこちらも減少傾向にあります。
2015年にはおよそ2万3000人(49歳以下の若年層)が新たに農業・農家の世界へ第一歩を踏み出したのですが、その後は徐々に減少し、2020年には約1万8400人となっています。高齢化が顕著なのが日本の農業の大きな問題であり、次代を担う若い世代が求められているのです。
2013年 | 2014年 | 2015年 | 2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
新規就農者 | 50.8 | 57.7 | 65.0 | 60.2 | 55.7 | 55.8 | 55.9 | 53.7 |
うち49歳以下 | 17.9 | 21.9 | 23.0 | 22.1 | 20.8 | 19.3 | 18.5 | 18.4 |
引用:農業労働力に関する統計『新規就農者数』
農業界への転職者数について
新規就農者の中で減少幅が大きいのは「新規自営農業就農者」。実家が農業を営んでおり、その地盤を引き継ぐ人のことです。
一方で農業法人などに入社・転職する「新規雇用就農者」や自営する「新規参入者」は前年より増加しています。
全体の農業人口は減っていますが、新たに農業の道へ進む人は増加傾向にあります。全体の男女比も1:1程度の割合、年齢が上がると男性比率が高くなりますが、実は女性の参入者も多いのです。
引用:農林水産省「2020年新規就農者調査」
農業就業者の平均年齢について
農家・農業従事者の平均年齢は調査によると2015年が67.1歳だったものが、2020年には67.8歳となっています。0.7歳ほどではありますが上昇傾向にあります。
一般の企業に勤めている方にとってはかなりの高年齢に感じるでしょうが、これが農業界の実態です。
日本社会全体の少子高齢化はもちろんですが、農家の子供が親の仕事を継がないケースが増えていることも高齢化が進む要因となっています。
2015年 | 2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
基幹的農業従事者 | 175.7 | 158.6 | 150.7 | 145.1 | 140.4 | 136.3 | 130.2 |
うち女性 | 75.1 | 65.6 | 61.9 | 58.6 | 56.2 | 54.1 | 51.2 |
うち65歳以上 | 114.0 | 103.1 | 100.1 | 98.7 | 97.9 | 94.9 | 90.5 |
平均年齢 | 67.1 | 66.8 | 66.6 | 66.6 | 66.8 | 67.8 | 67.9 |
引用:農林水産省「農業労働力に関する統計『基幹的農業従事者(個人経営体)』」
補助金制度について
前述しているように、農業は就業人数の減少や高齢化問題などに直面している状況を打破するため、新しい担い手を増やすことが重要です。
農林水産省が「農業次世代人材投資資金」という補助金制度を導入しているのはそのためです。これには就農前の研修を後押しする「準備型(2年以内)」、就農直後の経営を確立する「経営開始型(5年以内)」があり、最大の交付金額は年150万円です。
各自治体においてもさまざまな支援制度があるので自分が就農を希望する地域については調べておきましょう。
未経験者が知っておきたい農業の仕事事情
趣味ではなく、仕事として農業の道へ進む人にとって得られるお金や休日などの条件は欠かせない情報ですね。いわゆる一般企業とは異なる部分も農業界にはありますので、しっかりと確認しておきましょう。
ここで紹介するのはあくまで平均値です。各法人、各現場によって条件はさまざまですので、実際の転職活動では自身で確認することをお忘れなく。
働き方について
農業の世界へ足を踏み出す場合、大きく2つの就農方法があります。農業法人などに入社して従業員として働くのが【雇用就農】、自らが事業主となって畑や牧場を始めるのが【独立就農】です。
当然ですが、未経験の人にとっていきなりの独立就農はハードルが高く、失敗した場合は借金を抱えてしまうなどのリスクもあります。「いつかは農場の経営者に」という夢を持っている方も、まずは雇用されて農業を一から学ぶことをおすすめします。
年間休日や1日の労働時間について
農家は畑や田圃の作物、牛豚鶏などの家畜を扱いますが、いずれも生き物です。長期間放っておくことはできません。そのため、農家・農業に携わる人の休日は一般の企業と比べて少ない傾向にあります。年間休日は70日前後が一般的と言えるでしょう。
休日の取得はシフト制が一般的です。また1日の労働時間は夏季は約10時間、冬季は約7時間程度が平均となります(畜産や酪農の場合は1年を通してあまり差はありません)。
平均年収について
正社員、アルバイトやパートなど雇用形態にもよりますが、2020年の調査によると、全農業経営体の平均年収は約123万円です。個人経営体は約117万円、法人経営体の場合は約323万円となっています。
転職をするにあたっては、安定した収入を得られやすいという点から考えても、法人として経営している場所を選ぶのがおすすめです。もちろん面接などの際に給与や住宅など各種手当、社会保険に関しては確認しましょう。
2019年 | 2020年 | |
---|---|---|
全農業経営体 | 118.8万円 | 123.3万円 |
個人経営体 | 113.6万円 | 117.5万円 |
法人経営体 | 287.7万円 | 323.4万円 |
引用:農林水産省「農業経営に関する統計(1)『農業所得の動向(1経営体当たり)』」
農業に転職したい人の特徴や理由
農業界への転職を目指している人にはどんな傾向があるのでしょうか?
動機自体が重要なわけではありませんが、自らの思いと重なる部分があれば転職への励みになるかもしれませんね。未経験で農業への転職を果たした先輩の理由から代表的なものをいくつかご紹介しておきます。
人間関係に疲れてしまった
転職理由でよく耳にするのが「人間関係に疲れてしまった」という声。同じ会社の上司や先輩、同僚、また取引先との人付き合いに疲れてしまう人は多いはずです。
もちろん農業でも法人なら一緒に仕事をする上司や同僚がいます。自営でも全く人と関わる必要がないわけではありません。
しかし、作物を育てる・動物を育てるといった仕事にシンプルに没頭しやすいという点から農業に憧れを抱く人が多いのではないでしょうか。
田舎に憧れがある
人が多く、周囲はビルだらけ、常に何かにせかされているような気持ちになる都会を離れて田舎に憧れている……そんな思いから農業への転職を目指す人も多くいます。
澄み切った広い青空、吹き抜ける心地よい風、楽しくさえずる鳥たちの声。そんな環境の中で働き、開放的な気分に包まれながら日々の生活を送りたいと考えている方の夢に応える一面を農業が有していることも確かです。
地元に貢献したい
就職で地元を離れてしばらく生活している内に改めて故郷の魅力を知って、Uターンを志したという方も多くいます。農業が盛んな地域であれば、地元への貢献という意味合いもありモチベーションを高くもって働くことができるでしょう。
実家に戻ったり、親に何かあった場合でもすぐに対処できる距離で生活できる場所を選ぶといった、将来を見据えて農業への転職を選ぶケースもあります。
農業に転職する5つのメリットとは?
農業を始めるとどんな生活が待っているのでしょうか?
何より注目してほしいのは、自身の頑張り次第で収入にも恵まれる可能性があるということ。雇用されて経験を積んで、独立就農を果たせば一国一城の主になれます。
責任が増えますが、やりがいはそれ以上に増すことでしょう。生半可な努力ではそこまでたどり着くことはできませんが、最終的な目標として掲げておくのも良いでしょう。
学歴や職歴などは重視されない
農業は他業界の一般企業と比べて、選考の際にあまり学歴が重視されない傾向があります。
もちろん、高校や大学、専門学校で農業を学んでいればその知識を生かせる場面もありますが、肉体労働を中心とした仕事を毎日行うことになるため、それに耐えられる体力や意欲が伴っていることがそれ以上に優先されるのです。
職歴に関しても同様で、研究などの専門的な職種への応募でなければ農業に全く関係ない仕事を続けていたとしても、採用選考で不利となることは少ないので安心してステップを踏み出しましょう。
規則正しい生活を送ることができる
農家の仕事は朝から夕方までというのが基本的な労働時間となります。
必然的にそれに合わせて生活を組み立てるため、早寝早起きの規則正しい毎日を送ることができます。深夜まで残業しなくてはいけないといったケースはほとんどありません。
そのため「転職して新しい仕事に慣れたら前より健康的に過ごせていて、ご飯も美味しく感じられる」という感想を話す人もいます。土に触れ、生き物に触れ、太陽が昇り暮れる自然の流れに従って日々を過ごす……農家の皆さんの生活が人間の本来あるべき形なのかもしれませんね。
努力次第で収入UPを期待できる
現在、農業を仕事に選んで得られる年収の平均は決して高い数字にはなっていません。
転職をして雇用就農を始めた場合は「給与」をもらうことになるため、安定した一定の収入を得ることができます。さらに、将来的に独立して事業が軌道に乗れば、大幅な年収アップなども期待できます。
「頑張っただけ返ってくる」ことは大きな励みになることでしょう。土地を広げて収量を増やす、無農薬のオーガニックにこだわる、高値で取引される作物を栽培するなど、できる工夫はいろいろあります。方向性を見極める目も重要となってくるでしょう。
農地がたくさんある
残念なことですが、後継者がいないなどの理由によって離農せざるを得ない農家は後を絶ちません。放置されて休眠状態となり、雑草だらけになっている土地も地方では珍しくないのです。
自治体によってはその農地を安く貸し出していたり、補助金などを使って手ごろな価格で購入できる仕組みを整えています。もちろん、初期費用は必要ですが農地を手に入れること自体はそれほど難しいことではありませんし、将来的に農地を広げることも十分可能です。
「いずれ農業で独立して事業を拡大していきたい」という希望を持っている人にとっては恵まれた状態にあるのです。
食に関する正しい知識や経験が増える
味はもちろん、見た目の色や大きさ、収穫量など、当然ながら農業を始めて経験を積むことによって、自らが育てる作物や食材についての知識はどんどん増えていきます。
やがて栽培育成や販売だけにとどまらず、加工によって付加価値のある新商品の開発・発売への道がひらけるかもしれません。自分が携わる農産物以外の関心も高め、学ぶことによって可能性はさらに高まっていくことでしょう。
家庭で作物を購入する際にもその知識は役立つため、自分が選んだ食材によって家族の喜ぶ顔も見ることができます。
農業に転職する5つのデメリットとは?
仕事が成功することで得られる喜びは大きなものですが、そこに到るにはさまざまな苦労を乗り越えなくてはなりません。農業には避けて通れない、ならではの苦労やデメリットがあるのです。
ここでは代表的な5つの事例を紹介しますが、これに限ったことではありません。転職活動を通して、農家の先輩たちにさまざまな苦労話を聞いておくと良いでしょう。
肉体労働が多いため、体力が必要
農家の仕事は楽なものではありません。重労働と言った方が正しいでしょう。特に育てている作物にとって大事な時季には休日を取得することが難しい場合もあります。
農業に携わって間もない人からは「肉体的にこんなにハードだとは思わなかった」という言葉も聞かれます。
近年、機械による省力化も進んではいますが、導入には多額のコストが必要になるという課題もあります。実際、作物も動物も人が触れて見て判断し、作業しなければならない部分も多いのです。
農業・農家への転職を希望している人は、今の段階から健康管理と体力作りを始めておくことをおすすめします。
収入や生産量が、天候や災害などに左右されやすい
農業は天候を始めとする自然条件に影響を受けやすい仕事です。
例えば、雨量が多すぎると土中に水分が溜まることで作物の根が腐ってしまいます。逆に晴天高温が続くと作物が成長するために必要な水分が不足して枯れてしまうことも。また、強風でせっかく順調に育っていた茎が倒れてしまうなど、天候の影響で今までの努力が水の泡になってしまうことも決して珍しくはありません。
そして自然による災害は農家の収益に直結するのです。天候は人間の力ではどうすることもできませんが、自然災害が訪れることを考慮して被害を最小限に抑え、安定した収益を毎年得られるような準備と工夫が必要と心得ておきましょう。
人間関係の悩みから解放されるわけではない
人間関係のストレスから脱却したくて農業への転職を希望する人が多いというのは前述した通りですが、当然、人と人との関わりが全くゼロの状態になることはありません。
雇用就農なら一緒に働く従業員が必ずいますし、独立自営の場合でも、収穫したものを買い取ってもらう取引先との良好な関係がなくては収益が得られません。
また経験が浅い新規就農者の場合、近隣の先輩農家との関係も大切にしたいところです。円滑なコミュニケーションを育むことができればさまざまなアドバイスをもらえることでしょう。
現状より関わる人の数は減るかもしれませんが、ただ畑や動物と向き合っていれば良いわけでないことを理解しておきましょう。
海外旅行などに行きづらくなる
何度もお伝えしていますが、農業・農家が相手にしているのは生き物です。そのためヘルパーなどの代役を準備できる場合を除いては、海外旅行を始め、長期で不在にするということができません。
農家を営んでいる家庭の悩みとして「家族で旅行に行ったことがない」という声がよく上がるのはそのためです。とはいえ、それが永遠に続くというわけではありません。
経営が順調に拡大すれば、社員やアルバイトを雇用して一定期間、仕事を任せることも可能になります。それまでの間は自分だけでなく、家族にも我慢をお願いすることになるかもしれません。家庭のある人はしっかりとその旨も話しておきましょう。
初期投資費用がかかる
独立就農の場合に特に重要なのが、一定の初期費用が必要ということです。調査によると新規就農者の1年目に必要となった金額の平均は569万円(機械設置:411万円、種苗肥料燃料:158万円)となっております。
それに加えて農地取得に費用が掛かる場合もあります。そして、今までの仕事を辞めるので住居費や食費など普通に生活するための資金も別に確保しておかなければいけません。
家族の人数にもよりますが、合計で1000万円ほどは必要という話もあります。高くそびえる費用の壁を少しでも下げるため、前述した農業次世代人材投資資金や各自治体の支援制度があるので有効に活用しましょう。
引用:全国農業会議所全国新規就農相談センターの「平成2016年度新規就農者の就農実態調査」
農業への転職を失敗しないため、準備しておきたいこと
転職前に準備が必要なのは当然のことです。農業という未知の分野へ進もうとしている未経験者の方には、より丁寧な準備を行ってほしいと思います。
農家として一人前となり成功するための第一段階です。しっかりと考え、転職してから進んでいくべき道のりをイメージできるようになっておきましょう。
農業への転職を失敗しないために準備しておきたいことをいくつかご紹介するので、ぜひ参考にしてください。
情報収集をおこなう
新たな仕事を始めるにあたって第一にしなければいけないのが「情報収集」。農業未経験の人であればなおさらです。まず栽培、育成のために必要な知識を得ておきましょう。
何度もお伝えしますが、相手にするのは生き物です。作物なら害虫や自然災害、動物なら病気が発生することもあります。事前に対処方法などを知っておくことが大切です。
そして、独立就農をする場合には経営のための知識も必要となるでしょう。良い物を作るだけでは収益は得られません。
農業の各団体が主催する就農セミナーに参加したり、先輩農家に話を聞くことも重要です。待ちの姿勢ではなく、自ら情報を求めてどんどん活動してください。
どのような農業をやりたいのか、ビジョンを明確にして計画を立てる
「自分は◯◯県で◯◯を育てて、◯年目で◯トン出荷して、◯万円の利益を出す」。そんなビジョンは出来ていますか?
一口に農業と言っても、稲作、畑作、畜産、酪農などがあり、畑作でも野菜や花の種類などは数え始めるとキリがありません。また栽培方法も畑や牧場の規模も農家によってさまざまです。
自分が目指す姿をイメージできていないと、どこにどんな土地を取得すべきか、どれだけの設備投資が必要かも把握できません。
大きな夢を持つことは自由ですが、それでお金を稼いで生活できなければ、農家を続けることはできません。ぜひ自分の夢と現実のバランスを取りながら、堅実なビジョンを設定してください。
自分の方向性に合う学習環境・方法を見つける
ビジョンを描けたら、それを実現するためのノウハウを学ぶ環境や方法を探しましょう。実際に稼働している農家の現場を見たり、先輩に聞いたり、作物や家畜に触れることも大事です。
その他、現在政府による全国新規就農相談センターが就農に関する窓口を開設しています。新規就農を我が地域で目指す人を応援してくれる自治体も数多くありますので活用しましょう。
また、人手不足に悩む法人や農家は数日にわたって実際に労働体験ができるインターンシップを積極的に行っているため、参加してみるのもおすすめです。
農業に関する知識を増やす
実際の現場を体験するといっても、通常の生活や仕事をしながら毎日行うことは困難です。そんな場合は、隙間時間を活用して農業に関する知識を増やしておきましょう。
農業全般の知識や農作物の栽培技術、農業経営に関して書籍やインターネットなどを活用しながら調べましょう。
最近ではSNSを使って生の情報をタイムリーに発信している農家の先輩も増加しています。興味・関心があることをチェックしておくことで、その後の農業体験へとつながったり、人手不足の農家を紹介してもらえるといったケースも実際にあります。幅広くアンテナを張って、情報と知識を蓄えておくことが大切です。
農業の転職が有利になる資格・免許を取得する
農業の現場で役立つ資格はさまざまですので、いくつか紹介しておきます。
まず【普通自動車運転免許】、これは必須の資格です。トラクターやコンバインで公道を走るために必要な【大型特殊自動車免許】も優先したい資格です。取得のためには普通自動車免許が「AT限定(オートマチック限定免許)ではない」ことが条件となることも覚えておいてください。
他にも【けん引免許】【毒物劇物取扱責任者】【危険物取扱者(乙種第4種)】【農業機械士】なども働く現場によっては重宝される資格です。就農前に取得する人が多いわけではありませんが、雇用就農を目指す上ではアピールポイントになります。
農業に転職する前に理解しておくべき4つの心得
転職すれば農家の1年生となるわけですが、本当の勝負はそこから始まります。自他共に認めるプロとして一人前となり、本当の意味での転職成功にたどり着くためにはたゆまぬ努力を続けなくてはいけません。
実際に転職を果たす前に、どんな意識をもっておけば良いのかを認識しておいてください。
農業を追求する気持ちを大事にする
農業も他の仕事と同様、とても奥深いものがあります。ちょっとした工夫で収穫量が大きく増えたり、一方で小さなミスによって大変な被害が出てしまうこともあり得ます。農業は自然条件の影響で、さまざまな課題に直面することを覚悟しておきましょう。
だからこそ探求心を持ち、常に新たな知識・情報を得た上で、その場の状況や変化に応じて適切な判断を下して行動することが大切です。
受け身にならず、自分から積極的に取り組む
転職した未経験者にありがちなのが受け身の姿勢になってしまうことです。自ら考えて行動をしなくては農家としての成長は遅くなります。
雇用されているなら職場の先輩たちに積極的に話を聞き、自営をするなら近隣の農家さんたちとのコミュニケーションを密にとりましょう。ことわざにもあるように「聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥」と肝に銘じて実践することが早い初心者卒業につながります。
地域の人や農家同士のコミュニケーションを大切にする
農業が盛んな地域は昔からそこで暮らしている人が多く、住民同士で密接な人間関係が築かれていることがほとんどです。就農すれば自分自身もその一員になります。
同じ農家との信頼関係を築くのはもちろんですが、他の仕事をしている人同士が集まって地域を盛り上げるための活動を行っている場合もあります。可能な限り、地域の行事などに参加することでより早く「仲間」となることができるでしょう。
農業は甘くない
「都会の喧騒を離れて、土に触れ、日の光と風を感じながらすくすく成長する野菜と向き合う」。なんて素敵な日々だろうと思えてしまいますが、農業を仕事とすることは、甘いものではありません。
どんなに暑くても寒くても、体調が優れない日でも、畑や牧場では生き物があなたを待っています。努力に努力を重ねても天候などの影響を受けて思ったとおりの収穫や利益が得られないこともあります。どんな現実が待っているかを肌で感じるためにも、転職前に実際の現場を見ておきましょう。
未経験者が農業へ転職する際の仕事の探し方
農業未経験者にまずおすすめなのは「雇用就農」と前述しましたが、転職する農家をどう探すかも紹介しておきましょう。
以前は紹介などで近隣エリアの人材を探す農家がほとんどでしたが、現在は農業専門の求人サイトを使って幅広く募集をかけることが増えています。これを利用しない手はありません。
農業の転職に特化した求人サイトを活用する
各地域のハローワークを訪れれば募集企業を探すことができます。しかし求人票の形式が統一されているため、詳細な情報まで知ることは難しいです。農業専門の求人サイトを活用するのがおすすめです。
まとめ
きちんと手順を踏んで、知識を習得して心構えを持ち、努力を続けることで、「未経験からでも農家になることが可能」です。
農家として成功することは決して簡単なことではありません。最初は苦労の方が多いでしょう。しかし、手を掛けた生き物がそれに応えてくれたり、野菜が無事に収穫を迎えた時は今までの苦労が吹き飛ぶような喜びを得られるはずです。
「農業をやりたい!」と意を決した方は臆せず、ここでご紹介したことを参考にして、ぜひチャレンジしてください。