師匠である先輩農家の背中を見て、メロン栽培を必死で学んだ2年間
2年数か月前、縁もゆかりもない共和町に着任した品田さんをサポートしてくれたのが、この道29年の大ベテラン、先輩農家の長門強さん(49)でした。その年はメロン栽培の全体像を把握するため、一緒に動きながら定植から収穫までの一連の作業を見せてくれました。また、2年目になると品田さんがひとりで働く様子をすぐ近くで見守れるようにと、自分の畑に農協や町が所有する2棟のハウスを移設。品田さんはその中で栽培に取り組み、まるでスポンジが水を吸収するように、知識や技術を取得していったのです。
独立したいまは「パニックの日々」。先輩農家のサポートで窮地を乗り切る
地域おこし協力隊(農業支援員)として3年を待たず2年で独立したことについて、「よくその決心がつきましたね」と聞いてみると返ってきたのは、「メロン農家になろうと決心したことに比べれば、大した決心ではありません」という答え。
それでも独立してからの日々は想像以上に大変だったようで、「これまでの2年間でメロンの栽培方法については自分なりに理解していたつもりでした。でも実際一人でやってみると教わったことの本当の意味を理解していなかったと気づくことが多く…。おそらく師匠(長門さん)が意図していることの30%もできていないのではと思います」。「メロンの成長に剪定が追い付かず、作業の優先順位のつけ方が分からなくなってしまって、毎日パニックに陥っています。師匠たちに助けを求めようにも、何から聞けばよいかすら分からない状況です」。そんな時にも品田さんを救ってくれたのは、やはり長門さんたち先輩農家でした。「みなさんよくハウスに顔を出してくれて。何人の方が来てくれたか分かりません。そこで状況を見てアドバイスをしていただき救ってもらっています。本当にありがたいです」。
改めて振り返れば、剪定の手を止めてでもこちらから師匠や先輩農家に相談しないといけなかったと話す品田さん。でも広いハウスの中でどんどんと成長を続けるメロンを目の前にすると、そんな余裕は全くなくなってしまったそうです。そんな品田さんの状況を知ってか知らずか、先輩農家の皆さんは品田さんのことを気にかけて、自分も忙しい時期なのにも関わらずわざわざ品田さんのハウスに来てくれていたのでした。
農地の取得は思いがけないところから。見てくれている人は必ずいる
農業を目指す人誰もが直面するのが、農地取得のこと。品田さんは2畝×100mのハウス10棟に加え、露地栽培でメロンを育てています。どのようにして土地を取得したのか話を聞いてみると…。「師匠の畑にある研修用のハウスに毎日通っていたのですが、ある日の道すがら農家の人に声をかけてもらいました。なにやら後継者もいないので廃業しようと思っているけど、土地と家、納屋をまとめて買い取らないかという話でした」。
突然降って湧いた驚きの話。ただし土地を譲ってもらうために出された最初の条件が、「伴侶を見つけること」。当時独身だった品田さんは、自分と同じ夢を抱いて一緒に頑張ってくれる人を探し出し結婚に至ります。「農業はひとりではできない。生活をともにする夫婦が基本単位」という考えがそこにはあったようです。メロン農家になる決心をし、ひとり共和町へやってきて一生懸命に頑張る品田さんの姿を見て、地域の先輩農家さんたちがなんとか品田さんが地域に根付く助けになろうと、表に裏にと手を回していてくれたのかもしれません。
迷わずに来てほしい。本気であれば必ず地域の先輩たちが支えてくれる
取材に訪れたこの日は、品田さんにとって特別な1日でした。自分が一から育てたメロンが初めて出荷されたのです。その数は16玉。「秀・優・良の等級では、秀が4玉で全体の25%でした。まだまだですね…」と悔しがる品田さん。それでもメロンが無事に育って出荷できたことには、この仕事ならではの代え難いやりがいや充実感があると、嬉しそうな顔で話してくれました。
品田さんはこれから2~3年で自分なりの栽培スタイルを確立したいそうです。「いろいろと親切にアドバイスしてくれる先輩農家さんたちですが、それぞれに細かなやり方が違い、どれが自分にとって一番いいのかを試しながら見極めていく必要があります。栽培スタイルを確立することで効率を上げ、規模の拡大をしていくことが中期的なテーマです」。
また、日本政策金融公庫の「青年等就農資金」や、農林水産省の「農業次世代人材投資事業」、町の「定住促進住宅取得等補助金」を活用して、事業のキャッシュフローや生活を安定させることもこれから重要になるとのこと。自分の後に続く移住者に対して、メロンの栽培技術について教えられることは少ないかもしれないけど、どのようにして自分が共和町で独立就農し、生活を回しているのかということについてはどんどん教えていきたいそうです。
「共和町には都会にはない景色があります。海も山も川も近く自然が豊か。バイクが趣味の自分にとっては走っていてとても気持ちがいい場所です。信頼している農家さんから、スイカやとうきびのおすそ分けをいただけるのも嬉しいですね。なんといってもすごく美味しいです!」と共和町の魅力を語る品田さん。後輩になる新規就農希望者へ向けて「やりたいという気持ちが少しでもあるなら、僕がそうだったように飛び込むことが正解だと思います。ここには信頼できる先輩農家さんがたくさんいます。どんな時も見捨てないでサポートしてくれるので安心して来てほしいです」というメッセージを送ってくれました。
■お問い合わせ先■
共和町役場 企画振興課 企画調整係
〒048-2292 北海道岩内郡共和町南幌似38-2
電話:0135-67-8795
FAX:0135-73-2288