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ブドウ業界に新風!大型プロジェクト「パープルM」がついに始動

ブドウ業界に新風!大型プロジェクト「パープルM」がついに始動

栽培の手間と市場評価が必ずしも一致しない農業界。話題のブランド品種に高値がつく一方で、苗や栽培技術の海外流出も問題になっています。こうした課題を解決すべく、ノウタス株式会社がブドウに着目し、「もっと楽しく、もっとおいしく、もっと身近に、もっと無駄なく」をテーマにプロジェクト「パープルM」を始動。新品種の開発も視野に入れた壮大な展望とは――。プロジェクト発表会の模様とともに紹介します。

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農を楽しむ「アグリテイメント」事業

人や企業に「農を足す」

ノウタス株式会社は、オンライン果物狩りや、農業ワーケーション、観光農園DX、農家ファンづくり支援など、農を楽しむアグリテインメント(農+エンターテインメント)事業を行う農業ベンチャー。事業の一つである「オンライン果物狩り」は実にシンプルで、ウェブ会議システム「ZOOM」で消費者と農園をつなぐだけ。農園も消費者も、気軽に参加出来ることが特徴です。

ノウタス株式会社代表取締役の髙橋明久さん

手軽な「オンライン果物狩り」

「パープルM」プロジェクトの発表会でも、オンライン果物狩りのデモが行われました。東京と長野にある岡木農園をつなぎ、参加者が「甘くてなるべく大きめのブドウを」とリクエストすると、リアルタイムで農家がチョイスし、食べごろのブドウを収穫。後日参加者のもとに届けられるそうです。

参加者が選び、収穫の様子を見ることもできる

「パープルM」プロジェクトって何?

日本の農業課題に貢献したい

そんなノウタスが新たに取り組むのが「パープルM」と名付けられたプロジェクトです。プロジェクトリーダーは同社の事業開発担当であり、ジャニーズ事務所所属の村上信五(むらかみ・しんご)さん。
きっかけは、村上さんが出演する経済ラジオ番組のゲストとしてノウタスの髙橋さんが呼ばれたこと。そこから村上さんはブドウ農家や日本の農業の課題などを知ったと話します。

「こんなに苦労している農家さんの未来のために、僕も何か貢献できるものはないか」と思った村上さん。番組外で「若い担い手にも育てやすいブドウの新種とか開発できないもんですかね。ブドウの紫と(村上さんのメンバーカラーである)“パープル”と、『村上』『マスカット』のイニシャルの“M”を取って、“パープルM”みたいな」と話すと、髙橋さんが「実現しましょう!」と意気投合。プロジェクトの発足が決まりました。
「片手間でなく、きちんとした形で参画したいという中で、髙橋さんといろいろと話し、事務所にも説明して、ノウタスの社員として、プロジェクトのリーダーをやらせていただくことになりました」(村上さん)

プロジェクトへの熱意を語る村上さん

ブドウに愛着を感じてもらう「シェアツリー企画」

予定している企画の一つが、消費者にブドウへの愛着を感じてもらうための「シェアツリー企画」です。「農園のブドウをシェアして持っていただく企画です。木になるブドウを得られる権利を持つというイメージですね。マイツリーを持てばブドウの出来など気になると思いますし、おいしかったら人に伝えたくなると思う。こういった広げ方も考えています」(村上さん)
ノウタスの社員は農業にゆかりあるメンバーが中心になっており、その一人が実際に長野県でブドウ農家を営む、岡木農園の岡木宏之(おかき・ひろゆき)さん。現在、シェアツリー企画は、岡木農園のブドウの木をシェアする方針で企画検討が進んでいます。

無駄をなくす「粒売り」

プロジェクトを進めるに当たり、何度も農園に足を運んだという村上さん。専門家から話を聞くなど、勉強も重ねたそうです。
「ブドウを房で売るときは、一つでも傷があったり、規格に合わなかったりすると一般的な流通に乗らないと知りました。『そんなもったいないことありますか?』と。粒売り(房ではなく粒での販売)を浸透させたり、それでも売りづらいものは加工食品として利用したり、染色の材料にしたりするなど、一粒の無駄のない利用方法を模索しています」(村上さん)
加工食品については現在、企業との協議中で、今後の発表が待たれます。

発表会で振る舞われた岡木農園のブドウ。粒売りにすることで食べ比べも楽しめそうだ

また村上さん自身が、知人である岐阜県高山市の「木と暮らしの制作所 」に相談し、木工製品には向かない端材を利用した特別な木製の“宝箱 ”も制作中です。
「ギフトのバリエーションの一つで、コストはかかりますが、無駄をなくすという私たちの考え方に共感いただきました」(村上さん)

ハイブリッドな手法で新種開発

さらに「もっとおいしく」のための、ブドウの新種開発も進んでいます。
プロジェクトでは、交配による新種開発も行いますが、ブドウの交配は年に数日。そのため、プロジェクトでは遺伝子解析による新種研究も並行させます。現在は、交配技術と遺伝子研究の専門チームを発足させ、交配品種の選定など、具体的に動いているそうです。
「当然、時間もコストもかかります。正直、知れば知るほど『なんて軽々しく口にしてしまったのだろう』というくらい、非常にハードルが高い。けれど、専門家が集まり、可能性が高まっています。唯一無二の新種『パープルM』の誕生も現実味を帯びてきています」(村上さん)

おいしい果物を広く届ける

プロジェクトは、日本だけでなく、世界をも視野に入れています。「順次、活動を広げていきたい」と髙橋さん。
「僕もシンガポールへ出張して現地の方々といろいろお話しました。テスト販売も決まりましたので、今後はシンガポールの皆様の口に合うかを検討していきます。そうやって広げて、世界をぐるっと回って、最後は大阪の高槻(たかつき)に還ってこようかな、と。僕と髙橋が大阪の高槻市出身なので(笑)」(村上さん)

新品種や商品の開発、販路の拡大や、農業に関わる新たな形の模索など、「パープルM」の取り組みは多岐にわたります。最後に村上さんは話しました。
「『パープルM』は壮大なプロジェクトです。どこまでできるかわかりませんが、全てに前向きに取り組み、夢物語で終わらせず、長期的な視野で実現していきたいと思います」

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<編集協力> 三坂 輝(三坂輝プロダクション)

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