隊員と市役所の間に支援団体を設置。移住&就業のハードルを下げる
長門市が「地域おこし協力隊」の募集を始めたのは10年前。これまで29名を受け入れ、最長3年の任期を終えた21名が卒業。そのうちの9名が協力隊での経験を生かした仕事に就いています。また、卒業生の約7割が退任後も長門市に居住するなど、「地域おこし協力隊」は文字通り地域振興の一翼を担っています。

長門市の観光スポット『千畳敷』
長門市企画政策課課長の村上公章さんは「隊員と市役所の間に中間支援団体を置いていることがポイントなんです」と、同市の地域おこし協力隊の強みを話します。支援団体というワンクッションがあることで、知らない土地に住んで働くというハードルが下がり、地域に溶け込みやすくなるそうです。

企画政策課の村上さん。「地方の強みは、活躍できるステージの多さです」
今回募集する【和牛振興事業】であれば「一般社団法人アグリながと」が、【林業事業】であれば「一般社団法人リフォレながと」という組織が、技術習得や資格取得、生活面のサポートや活動費の管理まで支援します。
長門市が誇る『長州ながと和牛』等の高品質な牛を育て、その魅力を発信!
長門市は山口県内でも有数の黒毛和牛の産地で、市内の畜産農家73戸が『長州ながと和牛』を始めとした高品質な肉用牛の生産に取り組んでいます。肉質の良さからニーズが高まっている『長州ながと和牛』ですが、経営者の高齢化や担い手の減少による労働力不足が大きな課題です。

『長州ながと和牛』等の子牛の哺育を担当します
「増頭したくても人手も牛舎も足りない」という農家が多く、その対策として長門市では2023年10月に開所予定の「キャトルステーション(生まれた子牛を預かり、共同管理下で哺育・育成する施設)」を核とした畜産業の活性化に向けたプロジェクトをスタート。それに合わせて和牛振興に携わる地域おこし協力隊を募集します。
「隊員の主な業務は、預かった子牛の管理です。もちろん、餌やりひとつとっても専門的な知識や技術が必要になりますが、それはOJT(On the Job Training)で指導して身に着けていただくので、心配はいりません。いずれは『長州ながと和牛』のPR活動などにも携わってもらいたいですね」と長門市農林水産課農業振興班の高下純平さんは期待を寄せます。

農林水産課農業振興班の高下さん[左]とアグリながとの中村さん・木下さん[右]
心強いのは、キャトルステーションを運営する「一般社団法人アグリながと」が全面的なサポートをしてくれること。「畜産や酪農の経験者はもちろん、ただ牛が大好きという方も広く歓迎します」という事務局長の木下泰造さんや、「良い牛を育てられるように一から教えます」と話す指導者の中村貴史さんが日々の業務をバックアップ。また、「家畜人工授精師」などの免許取得の受験費用は活動費として長門市がカバーしてくれます。
新しく始まったばかりの和牛振興プロジェクトを一緒に盛り上げてくれるメンバーを、みなさん心待ちにしています。
充実した研修制度を生かし、将来は「自伐型林業家」に!
自然豊かな長門市は、総面積の実に75%が山林です。しかし、所有者不明の山も多く、林業に携わる人も年々減少しています。
そこで長門市では、管理できる人材を増やし、山の資源を守ることや、林業を成長産業にすることを目的に、地元の森林組合などとタッグを組んで2020年に「一般社団法人リフォレながと」を設立。そのタイミングに合わせて森林施業を担う地域おこし協力隊の受け入れもスタートしました。

季節ごとに異なる木の香りに包まれて作業するのが気持ち良いそうです
長門市での林業の地域おこし協力隊の特徴は、将来的に「自伐型林業家」として独立できること。「自伐型林業家」とは、山主から委託を受け、山林を管理する自営スタイルの林業で、比較的低コストで起業しやすいメリットがあります。また同協力隊では、着任するとすぐに鳥取県の『にちなん中国山地林業アカデミー』で約半年間の研修に派遣されます。

農林水産課林業振興班の行實さん。「自伐型林業の隊員は現在4名。大都市圏からの参加者も活動しています」
「アカデミーでは林業に関する基本的な技術や知識を学び、使用する機械などの資格を10個程度取得します。その間の給与も支払われますし、地域おこし協力隊で技術習得などに学校での長期研修を用意している例は全国的にも珍しいんですよ」と長門市農林水産課林業振興班の行實一樹さんは話します。

隊員の久保田さん。「自伐型林業は経営的な視点も大切。学ぶことは多いですよ」
そんな自伐型林業の協力隊第1期生として、市所有の山林で作業道の開設や間伐などをの研修を行っているのが久保田寛之さんです。久保田さんの前職は何と農林水産省の職員。水路の改修など土木整備の担当として13年間働きましたが、転勤が多いことや、自分の思い描いていたキャリアプランにギャップを感じていたことなどから、奥様の地元に近い長門市の地域おこし協力隊に応募。仕事を通じて山の環境を改善できる林業に魅力を感じ、広島市から移住したと話します。
「隊員の意思を尊重したリフォレながとのサポートもあって、円滑に活動をスタートできました。資金や制度面では市役所の方、技術的なことはアカデミーや森林組合、地元の林業家の方たちにお世話になりました」と話す久保田さん。林業のやりがいは、自分の作業で山の変化を実感できることだといいます。また、陽が出ている間しかできない仕事だからこそメリハリがつき、家族と過ごす時間を持ちやすくなったそうです。
2024年春に任期を終える久保田さんは、市役所などと連携し、長門市で山林管理を任せてくれる山主を探している最中です。後に続く隊員の良きロールモデルになれるよう、今後の活躍に期待が高まります。
長門市は、結婚や子育て支援などの制度も充実。「畜産」や「林業」の仕事に関心のある方はもちろん、自然環境を重視して移住先を探されている方は、一度チェックしてみてはいかがでしょうか。
◆お問い合わせ・ご相談
長門市役所 企画政策課 政策調整班
〒759-4192 山口県長門市東深川1339番地2
TEL:0837-23-1116
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◇長門市定住支援
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