フランチャイズモデルへの参加で、新規就農のハードルを低く
2023年2月に設立されたクールコネクト株式会社は、農業のノウハウを全く持たない初心者でも挑戦しやすい「農業フランチャイズモデル Cool Connect」を提供しています。現在は群馬県と埼玉県を中心に15軒の法人・個人がフランチャイズ契約を結び、オクラや大根の露地栽培を行っています。
代表の神戸翔太さんは、当初全く別分野の会社を経営していました。新規事業の一環として出身地の群馬県で農業を始めると、「面白くて夢中になりすぎて、本業の方をたたんでしまいました」と語ります。「農業の可能性は未知数。未経験者でも後発でもシェアを取っていける、夢のある仕事です」
「農業フランチャイズモデル Cool Connect」の仕組みは、新規就農を希望する法人や個人へ、クールコネクトが経営機能を一括提供するというもの。土地や資金がなくても、クールコネクトの農地でいわば「店長」的な立場で作業をすることで、収入を得ることができます。栽培ノウハウはもちろんのこと、肥料やトラクターなども必要に応じてクールコネクトが提供します。
「出身地の群馬には高齢で続けられなくなった個人農家が多く、地目変更をするくらいなら自由に使って、と言ってくれるケースがたくさんあるんです。私たちはそうした土地をどんどん借り受けて耕作し、自社の農場にする。最低1年間、弊社のメンバーとともに働けば、基本的なノウハウや経営感覚が身につくでしょう。圃場に毎日は来られない兼業農家もいますが、当社のメンバーが必要な手入れや収穫を行っているので大丈夫です」
まずはワンシーズン経験し、自分に合う農業のスタイルを模索【事例1】
7月からフランチャイズ契約を結び、60aの圃場で作業する大崎超さん。「飲食業がコロナで打撃を受け、将来も長くできる事業はないかと探して農業に出会いました。個人で独立したいちご農家が賞を取ったりしているのを見て、やりがいのある業界だなって。みんなポジティブできらきらしていますよね」と話します。
生産だけでなく事業としての農業に関心があった大崎さんは、その後、営農型太陽光発電の会社で責任者を務めます。しかし農地の取得は難しく、収益化に苦労しました。そんな時に知ったのが神戸さんのフランチャイズモデル。これならアイディア次第でさまざまな事業のスタイルを確立できると感じました。
前職を退職した大崎さんは現在、「店長」としてオクラ栽培に専念しています。「まずは確実に売れる品目をやってみようというのが神戸さんの方針。1年だけでも経験すれば、農業で成功体験を味わい、確実に収入も得られるのがこのモデルの良いところです。未経験者が一人で始めようとしてもトラクターや肥料や資材等の初期費用を回収するのに何年もかかるし、情報収集も難しいですから。オクラは三期作できるので、失敗しても次はこうしてみようと神戸さんと相談しながら考えていくことが、今は面白くてしょうがないですね」
現在、いちご農家の元でアルバイトをしているという大崎さんは、今は自分の農業を模索し、いずれは旧知の仲間とともに法人を持ちたいと考えています。「引き続きフランチャイズ契約は続けるつもりです。関係はずっと続きますよ」
農家と一緒に事業を行っていく、新世代のJAのような存在に
神戸さんは「私は何でも屋ですね」と笑います。「遊休農地の取得と整地・耕作、就農希望者とのマッチング、数トン単位での肥料の購入、ホテルや社員食堂など販売先の開拓。フランチャイズ契約がない個人農家からも買い入れを行っています。私は将来、クールコネクトを新しい形のJAのような存在にしたいのです。農家と一緒に事業を行う新世代の組織を目指します」
クールコネクトが現在栽培しているのは、オクラ、人参、じゃがいも、カボチャ、ブロッコリーなど9品目。「確実に売れるオーソドックスな野菜から挑戦すれば、失敗を恐れずに自信を付けられます。そしてフランチャイズの仲間が増えれば、ノウハウと労力の共有や貸し借りもできるようになります。クールコネクトが組織として大きくなればなるほど、関わる全員がwin-winの関係になっていきます。全員が経営者として対等なんです」
日本の農業を変えたい、と理想を掲げるベンチャー企業はたくさんありますが、クールコネクトの大きな強みはメンバー全員が実際に農業を経験していること。「暑さで苗が枯れそう」「この状態に良い肥料は?」など、日々の「店長」たちの相談にはクールコネクトのメンバーが直接、すぐに返答しています。「農家は経営が不得手だし、経営者は農業の実際をよく知らない。その間に存在する僕らの役割は重要だと思います」
自身を通じて実証実験し、過疎地域の活性化を目指す【事例2】
東京で起業した西野翔さんも、クールコネクトのフランチャイズモデルに参加するひとりです。営業職や人材ビジネスを経験した西野さんは、酪農DXを手掛ける会社に転職して業界のさまざまな課題を知り、酪農家に弟子入り。同時に自身も酪農・畜産農家向けの採用支援コンサルティングを行う株式会社West Fieldを立ち上げました。一方では「やはり自分でも農業を体験してみなければ」という気持ちがあり、ネットで活動を知った神戸さんに連絡を取ったそうです。現在は週1回程度、群馬のオクラ畑に通っています。
「週1回で大丈夫なの!?と思いましたが、私が行けない日はクールコネクトのメンバーが手入れや収穫をやってくれるので安心です。アドバイスをもらいながら自分も実際に作業することで理解できたことがたくさんありました」
就農における自治体等への諸手続きを行う必要もなく、「農業参入の障壁ってこんなに低かったのかと驚いた」と言う西野さん。「世間では農家として独立するには数年かかると言われますが、実際には3日で出来る、と感じられた。これは多くの人に経験してもらう価値があるサービスだと思います。私は、今はトラクターの運転を練習し、オクラの後の冬野菜は何を育てようかと神戸さんと相談中です」
さまざまなビジネスを経験してきた西野さんらしく「どんなサービスも行き詰まるときは来る。その時には切り替えればいい。人と接するビジネスにも自然を相手にするビジネスにも、理不尽はあるものだから」と話します。
西野さんの出身地は千葉県の外房エリア。周囲には過疎地域が広がっていますが、クールコネクトのフランチャイズモデルを通じて地域を盛り上げる可能性を見出せないかと、自身を通じて実証実験中なのだと言います。「耕作放棄地が増えていますが、それは昔ながらの農業のやり方が悪いだけだと思っています。農業には可能性がめちゃくちゃありますよ」
いずれは自分の会社で野菜の開発を手掛けてみたいと語る西野さん。「あまり手をかけなくても順調に育つ“悪魔の野菜”みたいなものを(笑)。人類の未来を考えたら、これはITやインターネットの開発と同じような重要な仕事だと思うんです。一次産業はなくならない。作物を収穫するのは人間本来の生き残るスキルのようなものだと思うし、本来の生き方だと感じます」
各地の遊休農地を再生・活用し、地方創生につなげたい
神戸さんは「農業に失敗はつきもの。だからこそ、失敗してもどんどんチャレンジできる人なら大丈夫です」と話します。今後は日本各地へフランチャイズモデルを広げて、定番の作物をリレー栽培する体制を整えたいそうです。
「引退を考えている農家の方は、ぜひ相談してください。野菜の売り先に困っている個人農家や、UターンやIターンで農業を始めたいと考えている方も。異業種から農業参入したい法人も歓迎します。見学はいつでも受け付けています」
問い合わせ
クールコネクト株式会社
本社:東京都千代田区神田和泉町1-6-16 ヤマトビル405
群馬支社:群馬県伊勢崎市連取町3077-5 COMMON TSUNATORI1-1
HP:https://nou-gyo.com/
MAIL:info@cool-c.com