土地も資金も必要なく、新規就農の夢を実現
「農業の可能性は無限大。未経験者でも後発でもシェアを取っていける、夢のある仕事です」と語るのは、代表の神戸翔太さん。全く別分野の会社を経営していましたが、出身地の群馬県で農業を始めると「面白くて夢中になりすぎて、本業の方をたたんでしまいました」と語る若き経営者です。
「農業フランチャイズモデル Cool Connect」のビジネスモデルは、クールコネクト社が遊休農地などを借り受けて耕作し、それぞれの圃場を“店舗”のような形で就農希望者に提供するというもの。“店舗”のリーダーとなった新規就農者はクールコネクト社とフランチャイズ契約をする“店長”のような形で、ナスやオクラなどの農作物を出荷して収入を得られます。資金も土地の取得も必要なく新規就農の夢が叶い、クールコネクト社の生産指導員から直接ノウハウを学ぶことができるのです。肥料や資材、農機具などもクールコネクト社が一括して提供し、農作物はホテルや社員食堂などへ幅広く販売されます。
「渡りに船」。農家の廃業にあたり、若い世代へのM&Aが叶う
そんなクールコネクト株式会社が新しく着手したのが、農家の事業継承。2023年11月に群馬県伊勢崎市の米農家「内山農園」を事業継承しました。内山清さんは昭和33年から米作りひとすじ。JAのシステムに頼らず、独自に工夫をしてうまい米を作り、近隣のラーメンチェーン店や一般家庭など販売先も自身で開拓してきました。「おいしかった。また来年もお願いします」と喜んでくれる人々へ愛情を込めて作ったお米を直接提供する、やりがいある仕事です。
「JAのシステムには農家全体の生産調整をできるという利点もあるが、個々の努力が反映されにくい。米は本来、別々の田んぼで育てたものは別々に味わうことが一番良いはず。私が品質にこだわって作った米は、ちゃんと評価してくれる人々へ届けたかったということです」
内山さんの祖父は先祖代々の土地で農業を営んでいましたが、父は戦時中の事情によりサラリーマンに。内山さんは高校を卒業してから米農家となりました。「このあたりは米と麦の二毛作。5~6町ほどの土地を、自分でやったり、人に貸したり。しかし50歳を過ぎた頃に体を悪くして。代々の土地の一部が市街化調整区域となったこともあり、結局半分ほどに縮小して再開しました」
その後は体の調子と相談しながら米作りを続け、やがて麦をやめて米一本に。「しかし今年になって、30㎏の袋が持ち上がらなくなって、やめようかなと。家族からは、お父さん次第でいいよと言われて。そんな時に出会ったのが神戸さんでした」
神戸さんは2023年2月にクールコネクト社を立ち上げ、内山さんの隣の畑でオクラを作っていました。「孫のような世代の若者がなんとか工夫しながら収量を上げていた。話を聞くと、彼の会社では米の卸もやるそうで。うちの米を売ってくれないかと言われて、最初は3トン。すぐに売り先が見つかって、結局全量をお任せした。さらに話を聞くと、彼は米農家のM&Aにも興味があると言う。これは渡りに船だと思ったね。でも、最初は半信半疑でね」
すべてが揃っている状態なのに廃業するなんて、もったいない
内山さんは地域の農業委員を15年間務めました。「いろいろな問題に取り組み、行政に一生懸命に要望を出してきたのに、ぜんぜん予算が付かないし増えない。これも、廃業を考えた理由の一つですね」
内山さんの周囲には廃業した農家がすでに多くあります。行政には事業承継のスキームがあるものの、実際には使いにくい仕組みであり、最終的には単なる廃業で終えた人が多くいるのです。その後は、残った農機具や道具、作業小屋などの整理や処分が大変です。内山さん自身にも、一部の農地といくつかの道具だけが欲しいという相手が現れましたが、「何もかも一切合切、まとめて買い取ってくれる形でなければ」と断ったそうです。
神戸さんは「これが農家の事業継承における、一番の問題点です」と語ります。「要するに、土地や道具を含む事業丸ごとを適正な価格で売り買いするテンプレートがないんです。だから農家自身があちこちに声をかけて、いろいろなものを少しずつ売ったり、譲ったり。そして結局、それができなかった農機具は廃棄物になり、土地は遊休農地になるだけ。農家側にとっては、事業を辞めたらゼロになるだけ、というのが現実です」。神戸さんは、内山さんが使っていたトラクターや冷蔵庫、作業小屋はもちろん、苗箱やスコップなど小屋にあるもの一切合切もすべて引き継ぎました。
「うちは言い値で買いますよ。あれは欲しいこれはいらない、なんていう選り好みはしません。手に入った土地で、手に入った道具で、頑張って農業を継続させていきます。だって、すべてが揃っている状態なのに廃業するなんて、もったいないでしょう」
現在、土地の名義は内山さんからクールコネクト社に切り替え、土地のレンタル代や水利費は月々支払う形となっています。神戸さんは今後、内山さんから米農家としてのノウハウを学び、事業としては米農家のフランチャイズモデルの確立に取り組んでいきます。「まずはこれまでの販売先も大事にしながら、収量が増えたら加工会社に一気に卸す形にしようと考えています」
遊休農地が増える悪循環を、新しいビジネスモデルで一新したい
「神戸さんのやり方は、従来の日本の行政とは全く違う。実子が農業を継がないケースでは、農業をどう終わらせるかが大問題。そんな人たちにとって、クールコネクト社のこの取り組みは大いに参考になる。良い人に巡り合ったと思います」と内山さんは語ります。
一方では、先祖代々の土地を他人にゆだねることに抵抗感を抱く人も少なくないことも事実でしょう。「俺は自分の土地が市街化調整区域に入った経験もあり、時代の流れに逆らっても仕方がない、という考えを持っていた。だから神戸さんとの話も、これは渡りに船だと思えたんだ」
神戸さんが提示する新しい農業のあり方に、内山さんも期待を抱いています。「生産性を上げて、価値を上げて、世間から“農家の収入は高い”と認識されるようにならないと。米や野菜の値段は安いもの、という風潮が変わっていき、若い人が夢を描ける仕事にならないと、話にならないからね」
神戸さんは今後も、同じような課題に悩む全国の農家とのM&Aを進め、拠点を全国に広げていきたいと考えています。そして将来的に思い描くのは、新しい形のJAのような存在になること。「従来の仕組みのままでは、農家が減り、全国各地に遊休農地が増えていくだけの悪循環。私たちはそこにフランチャイズモデルを導入して事業承継し、企業の新規事業や副業での新規参入など、『週1回の作業で農業経営を実現させる』ことをコンセプトに新たな農業参入の形を作っていきます。見学や相談はいつでも受け付けています」
問い合わせ
クールコネクト株式会社
本社:東京都千代田区神田和泉町1-6-16 ヤマトビル405
群馬営業所:群馬県伊勢崎市連取町3080 -1
HP:https://nou-gyo.com/
MAIL:info@cool-c.com