すす病とは? その特徴と原因
すす病とは、植物の葉や茎を黒いすすのような粉状の物質が覆う現象を指します。この黒い粉状の物質は、カビ(糸状菌)の一種であり、植物の健康に悪影響を及ぼします。
ここでは、すす病の特徴やその原因について分かりやすく解説します。
すす病の症状と他の病気との見分け方
項目 | 詳細 |
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病名 | すす病(ススビョウ) / Sooty mold(糸状菌) |
病原菌 | Asterina camelliae,Hypocapnodium camelliae |
病徴 | 葉の表面を中心に黒く汚れたようなカビが生える。 |
発生時期 | 春から秋 |
発生場所 | 施設・露地 |
備考 | 一般にすす病菌は植物の表面に生息し、内部には侵入しない。しかし葉面を広く覆うため、光合成を阻害し、植物体を衰弱させる。 |
出典:すす病|農研機構
すす病は、植物の葉、茎、花、果実などの表面に黒い「すす」(糸状菌)が生える病気です。初期段階の症状としては葉の表面がつやを失う程度ですが、進行すると黒い菌の膜で一面が覆われます。
更にすす病が進行すると、植物の外観が損なわれ、作物の品質が低下します。菌に覆われた部分は光が届かず、光合成ができなくなるため、植物の生育が抑制される可能性もあります。
すす病の特徴として、発生初期には黒いすすを拭き取ることができ、病気の痕跡が見られなくなる点が挙げられます。これが、他の病気と区別する際のポイントです。
すす病が発生する原因(画像あり)
すす病の原因となるカビは数多く存在しますが、植物自体に寄生することはありません。
すす病はカイガラムシ類、アブラムシ類、コナジラミ類などの害虫が排せつする甘露(かんろ)と呼ばれる物質を栄養源としてカビが増殖することで発生します。
甘露には病原菌が好む栄養素が含まれており、これを栄養源として病原菌が繁殖します。植物の表面を吸汁する害虫が多発すると、排泄物が増えるため、すす病菌が増加する原因になります。
すす病の発生時期
すす病は、カイガラムシ類、アブラムシ類、コナジラミ類が多発するほど被害が大きくなります。これらの害虫が多発する春から秋が、すす病の最も発生しやすい時期です。
具体的な害虫の発生時期は、以下の通りです。
すす病の原因となる虫類 | 発生時期 |
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カイガラムシ類 | 1年中発生 (5〜7月にふ化した幼虫が現れることが多い) |
アブラムシ類 | 3〜10月 (特に4〜6月、9〜10月に多発) |
コナジラミ類 | 6〜10月 |
また、すす病の発生条件としては、以下のような項目が挙げられます。
● 湿度が高い
● 日当たりが悪い
● 密植や過繁茂によって風通しが悪い
これらの条件が重なると、すす病のリスクが高まるため注意しましょう。
すす病の人体への影響
すす病にかかった植物の葉や茎に触れたり、手にすすが付着した場合でも、人体への影響はありません。
ただし、すすがついた手で食事をするのは避け、手はきちんと洗うように心掛けましょう。
すす病を発生させないための植物の管理法
すす病を発生させないためには、普段の植物の管理が大切になります。適切な管理法を行うことで、すす病の発生を防ぐことができるでしょう。
ここでは、すす病を発生させないための植物の管理法について、分かりやすく解説します。
密植を避け風通しをよくし、温度を下げる
すす病は、高温多湿の環境で発生しやすいため、植物を密植せずに風通しをよくし、温度を下げることが効果的です。
定期的に剪定作業を行い風通しをよくすることで、植物の葉や茎が乾燥し、すす病の菌が繁殖しにくくなります。適切な植物の管理法を実践することで、すす病の発生を未然に防ぎましょう。
ハウス栽培では湿度管理を徹底する
ハウス栽培では、湿度が高くなりやすいため、すす病が発生しやすくなります。湿度を適切に管理することで、すす病の菌が繁殖しにくくなります。
湿度管理を行うためには、ハウス内の換気を行ったり、植物の葉や茎を乾燥させたりすることが有効です。適切な湿度管理を行うことで、すす病の発生を未然に防ぐことができます。
すす病を発生させないための防除と予防法
すす病を発生させないためには、適切な防除が必要です。ここでは、家庭でも簡単に取り組める、すす病の防除法について詳しく解説します。
重曹を使ったやり方
すす病の原因であるアブラムシ類などを、無農薬で駆除するための一つの方法として、重曹スプレーが挙げられます。重曹スプレーは、手軽に自家製でき、野菜や果樹にも安全に使用できるのが大きな特徴です。
重曹スプレーの作り方 | |
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1. 重曹(小さじ1)と、食用油(20ml)をよく混ぜます。 2. 水(500ml)を加えて、さらによく混ぜ合わせます。 3. 台所用の中性洗剤(1~2滴)を加えて混ぜ、スプレーボトルに入れます。 |
重曹は、100円ショップやドラッグストア、ホームセンターで簡単に手に入ります。水と食用油は混ざりにくいので、台所用の中性洗剤を加えることで分離を防げます。
重曹スプレーの使い方 | |
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1. 重曹スプレーをよく振ってから、アブラムシがいる部分に吹きかけます。 2. しばらく放置し、アブラムシが窒息するのを待ちます。 3. 最後に水で洗い流し、落ちたアブラムシの死骸を取り除きます。 |
アブラムシの死骸を取り除く際には、植物の周りにあらかじめ新聞紙を敷いておくと、駆除後の片付けが簡単です。
また、重曹スプレーを利用する際の注意点としては、 重曹の成分が残ると、葉が変色する可能性があるので、しっかりと水で洗い流すようにしましょう。重曹スプレーとは別に霧吹きを用意しておき、きれいな水を吹きかけると良いでしょう。
アルコールを使ったやり方
アルコール度数の高いお酒に、唐辛子を1カ月以上漬け込んで熟成させた唐辛子スプレーは、アブラムシ類の駆除・防除に効果的です。
唐辛子スプレーの作り方 | |
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材料 | 作り方 |
●アルコール度数の高い酒(焼酎やウォッカ)250mL ●唐辛子15本(生または乾燥) ●ニンニク1~2片 ●ローズマリー10cm(ニンニクとローズマリーはオプション) |
1. 蓋(ふた)付きのビンに材料を入れ、冷暗所で1カ月以上保管する。 2. 長期間熟成させると、唐辛子やニンニクの成分がよく溶け出します。 |
唐辛子スプレーは化学薬品を使用しないので、自然農法を実践する人にもおすすめです。
唐辛子スプレーの使い方 | |
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●半年くらい寝かせたものを使用してください。アブラムシ類は年2回(4~6月と9~10月)大発生するので、秋に仕込んだものを4月に、春に仕込んだものを9月に使用しましょう。 ●アブラムシ類は、ふ化後1週間で卵を産むので、週に1回程度スプレー散布すると効果的です。 ●唐辛子スプレーの原液は濃度が高いので、40倍程度に希釈して使用しましょう。(原液5mLに対し、水200mL) ●スプレーを使う際は、自分にかかることがあるので、眼鏡やゴーグル、マスクを着用してください。 |
注意点は、唐辛子スプレーは殺虫剤ではないため、化学薬品ほどの劇的な効果が得られないことです。しかし、土壌に残留したり、生態系を壊したりすることがないので、環境に優しい防除方法です。
高圧洗浄機を使った落とし方
カイガラムシ類は、高圧洗浄機や散水シャワーのストレートモードやジェットモードを使って付着した部分に強く水を噴射することで、簡単に除去できます。水圧は、手に当てたときに少し痛いくらいが適切です。
ただし、水圧があまりにも強すぎると、植物の枝が折れたり、幹が傷ついたりすることがあるので注意しましょう。
水圧で吹き飛ばす場合、樹皮が薄く剥がれることがありますが、植物にとっては大きな負担ではないので、心配する必要はありません。
木酢液や竹酢液を使ったやり方
木酢液(竹酢液)は、木炭(竹炭)を作る際に発生する煙を冷やして液体にしたもので、液体自体は茶色くてくん製のような香りがします。
木酢液は、高い殺菌・殺虫能力を持っているので、植物に被害を与えないように必ず水で300〜1000倍ほどに薄めて使用するようにしてください。
木酢液自体は、ホームセンターや園芸ショップで購入できます。木酢液の具体的な使い方は、以下の通りです。
木酢液の使い方 | ||
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1. 木酢液を300~1000倍に水で薄めます。目安としては、2Lのペットボトルにティースプーン1杯ほどの木酢液を加えます。 2. 希釈した木酢液を霧吹きに入れ、葉の表面、裏面、茎にたっぷりと吹きかけます。 3. 水やりをする前に木酢液を吹きかけると、すぐに流れてしまうので、水やりの後、ある程度時間がたってからスプレーしましょう。 4. 濃度が濃すぎると植物を弱らせるので、注意してください。 |
また、木酢液の使用時の注意点は、以下の通りです。
木酢液の使用時の注意点 | ||
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注意点 | 詳細 | |
皮膚には使用しない | 木酢液は園芸用なので、いぼ治療や水虫治療などには使用しないでください。 | |
金属の容器は避ける | 木酢液の成分は金属に反応して穴を空けてしまうこともあるため、保存する際はガラス瓶やプラスチック容器に入れましょう。 | |
子供やペットの手の届かない場所に保管 | 口をしっかり締めて、子供や動物が触れない場所に保管してください。 | |
希釈濃度を守る | 木酢液は濃い濃度で使用すると、微生物が死滅したり、植物が傷んでしまいます。夏の暑い時間帯に霧吹きで木酢液を吹き付けると、水分が蒸発し、濃度が上がってしまうことがあるので、涼しい朝や夕方に行うようにしましょう。 | |
アルカリ性と混ぜない | 木酢液は酸性(pH3程度)なので、アルカリ性のものと混ぜないでください。中和反応を起こすからです。 |
すす病に有効な農薬を使った防除と対策
すす病がよく発生する植物には、スミチオン乳剤、オルトラン水和剤などの殺虫剤を定期的に散布し、害虫の発生を抑えることが根本的な対策となります。
適切な殺虫剤を選び、作物に合わせて使用するようにしましょう。
スミチオン乳剤
項目 | 詳細 |
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農薬名 | スミチオン乳剤 |
農林水産省登録 | 第4962号 |
種類 | 殺虫剤 |
毒性 | 普通物 (毒物及び劇物に該当しないものを指していう通称) |
危険物 | 第4類第2石油類 III |
有効期限 | 5年 |
スミチオン乳剤は、簡単に使える殺虫剤です。使い方としては、水で約1000~2500倍に薄め、じょうろや散布用の噴射機に入れて散布するだけです。家庭菜園でよく栽培されている野菜や果樹に使うことができますが、庭の害虫対策にも使用可能です。
スミチオンは、浸達性があり、茎や葉の内部に侵入した害虫にも効果を発揮します。幅広い植物や害虫に対応できる殺虫剤で、薬剤が害虫に接触することで殺虫します。
接触毒の効果があるため、薬剤が付着した植物を食べた害虫にも効果を発揮する上に、卵から成虫までのどの段階でも高い殺虫効果が期待できます。
オルトラン水和剤
項目 | 詳細 |
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農薬名 | オルトラン水和剤 |
農林水産省登録 | 第13175号 |
種類 | 殺虫剤 |
毒性 | 普通物 (毒劇物に該当しないものを指していう通称) |
危険物 | 該当なし |
有効期限 | 5年 |
オルトラン水和剤は、葉や茎から吸収されて植物体内に広がり、広範囲の害虫に対して効果が持続する優れた浸透移行性を持っています。希釈倍数は、約1000〜2000倍が目安です。
目に見える害虫の退治はもちろん、薬剤散布後に発生・飛来した害虫にも効果があります。葉を巻いている害虫や、散布液がかかりにくい場所に生息している害虫にも有効です。
また、植物の汁を吸う害虫(アブラムシ、カイガラムシ等)や、葉を食い荒らす害虫(アオムシ、ハマキムシ等)にも優れた防除効果があります。
すす病に関するよくある質問
ここでは、すす病に関するよくある質問とその回答をご紹介します。
Q.すす病は他の植物にうつるのでしょうか?
すす病は、他の植物にうつる可能性があります。すす病の原因となるカビは、風や虫などによって他の植物にも広がります。そのため、すす病に感染した植物を見つけた場合は、早めに対策を行うようにしましょう。
Q.すす病は冬場でも発生しますか?
すす病は、高温多湿の環境を好むため、春から夏場にかけて発生しやすいです。
しかし、冬場でも室内での栽培やハウス栽培など、温度と湿度が一定の環境では発生することがあります。季節に関係なく、すす病の発生を防ぐためには、適切な植物の管理が必要です。
Q.すす病が繁殖するのに最適な気温や湿度はありますか?
すす病が繁殖するのに最適な気温は23~28℃、湿度は60%以上です。このような高温多湿の環境では、すす病の菌が急速に増殖するため、注意が必要です。
すす病の発生を防ぐためには、植物の周りの風通しを良くし、適切な水やりを行うように心がけましょう。
すす病を正しく理解して防除や予防に努めよう
すす病は、植物に被害をもたらす病気ですが、適切な対策を行うことで被害を抑えることができます。
普段から植物の周りの風通しを良くし、適切な水やりを行うことが大切です。
万が一、すす病が発生した場合は、重曹やアルコール、高圧洗浄機などを使った駆除法や、農薬を使った防除法で対策を行いましょう。
すす病を正しく理解し、適切な防除を行うことで、植物を健康に保つことができるはずです。