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木酢液(もくさくえき)とは? 竹酢液との違いや効果・使い方を解説【家庭菜園のミカタ/木酢液編】

鮫島 理央

ライター:

木酢液(もくさくえき)とは? 竹酢液との違いや効果・使い方を解説【家庭菜園のミカタ/木酢液編】

美味しくて形のきれいな作物を作るためには、病害虫の防除が必ず必要になります。化学農薬を使って病気を予防したり、害虫を駆除することが一般的ですが、庭やベランダなど菜園と家との距離が近い家庭菜園では、なかなか使いづらいという人も多いのではないでしょうか。そうした方々には、木酢液を用いた害虫予防がおススメ。本記事では使い方、メリット・デメリットなどについて解説していきます。木酢液の効果や正しい使い方を知ることで、家庭菜園のほか日常生活にも役立てることが出来ますので、ぜひ参考にしてください。

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そもそも木酢液とは?

まずはじめに、木酢液は過去に農薬として登録されていましたが、現在は失効しており農薬としては認められていません。土壌改良材として使われることが多い木酢液ですが、使用する際はこの点を踏まえた上で使うようにしてください。

では、その木酢液とは一体どのような資材なのでしょうか。

木炭を作る際に発生する煙の成分を冷やして作る液体を粗木酢液といい、さらに不純物を除去し、蒸留したものを木酢液と呼びます。焚き火の煙のような、いぶした匂いがかなり独特で、この匂いが虫除けや害獣よけになると言われています。

成分のうち90%が水分ですが、有効な主成分として酢酸が多く、その他にもアルコールなど約200種類以上の成分が含まれています。酢酸が主成分というだけあってpH1.7~pH3.7と酸性が強く、取り扱いには注意が必要です。

木酢液と竹酢液は何が違う?

木酢液とよく似た資材に、「竹酢液」というものがあります。

竹酢液は竹炭を作る際に出た液体を蒸留したものです。木酢液との違いは原料が木か竹かといったものくらいで、基本的には同じような成分が含まれています。

ただ、竹酢液の方が木酢液よりも殺菌力が強いと言われているほか、採取量も木酢液と比べ少ないので、木酢液と比べてやや高額の商品が多いようです。農業で使う分には、どちらを使っても良いでしょう。

農業における木酢液の効果とは?

木酢液には土壌改良や虫よけなどさまざまな効果があると言われています。ここでは、主に農業における木酢液の効果について解説していきます。木酢液を使う前に、どのような効果があるのかしっかりと確認しておきましょう。

1.病気の予防

うどんこ病に罹患したキュウリの葉

木酢液には殺菌作用があるので、うどんこ病やモザイク病、いもち病などカビや細菌による病気を予防することが出来ます。いずれの病気も激発してからの治療は難しいので、こまめに散布することで、病気にならないような環境を作ってあげることが大切です。

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2.品質向上

木酢液を500~1000倍に薄めて散布すると、果物では収穫後の鮮度が保たれるようになり、サイズも均一化し、追熟し甘くなると言われています。また葉物野菜でも同じように甘みが増すので、品質向上に繋がります。

3.害獣の忌避効果

焚き火の焦げたような独特な匂いを嫌って、ネズミやハクビシンといった害獣が近寄らなくなります。また匂いの成分が作用してか、アブラムシやセンチュウといった害虫に対しても忌避効果があります。作物だけではなく、通路などにも散布すると良いでしょう。

4.土壌改良

木酢液に含まれているフェノール類によって、土壌中の病原菌を殺菌したり、アルカリ性土壌を中和するなどの効能があります。ほかにも微生物が活性化することで、有機質が豊富な土となり、根の活着や成長が促進されます。

5.発酵促進

木酢液に含まれているアルコール類には、堆肥の発酵促進効果があります。牛糞などを堆肥化する際にも使われますが、家庭で出た生ゴミを堆肥とするときにも使えます。
発酵が早く進むため、堆肥の温度が上がりやすく、切り返しを早め早めに行うのがポイントです。

木酢液は日常生活でも効果を発揮?

土壌改良や害虫害獣の忌避剤など、農業で使うことが多い木酢液ですが、実は日常生活においても嬉しい効果があります。

1.ペットの糞尿の脱臭

ペットの糞尿を脱臭するときにも、木酢液は便利です。
200倍程度に薄めた木酢液をペット用品に吹きかけることで、ペットの嫌な匂いを消臭することができます。また散歩中や外飼いで糞尿の匂いが気になったときは、糞尿を掃除した後、糞尿があった場所に木酢液(50倍希釈)を散布するだけで、匂いを消すことができます。

木酢液の匂いは時間経過や降雨で消えてしまいますが、定期的に散布することで野良犬・猫避けにも効果を発揮します。

2.お風呂に入れれば新陳代謝アップ

木酢液をお風呂に入れると温まりやすく、新陳代謝が活発になり冷めにくくなります。また主成分である酢酸には、かゆみや炎症を抑える効能があるとされています。木酢液を入浴剤として使うことで、新陳代謝アップと肌トラブルの改善が期待できます。

木酢液の量は10cc~20ccほどとし、必ずお風呂に使えるという表示があるものを選びましょう。残り湯は洗濯や水やりにも使えます。

木酢液はどこで買える?

農業にも日常生活にも使える便利な木酢液はどこで買うことができるのでしょうか。

1.ホームセンター

カインズなどのホームセンターで木酢液を購入することができます。
農業資材を扱っている店舗であれば、基本的に販売しているようです。

◯備長炭 木酢液スプレー

値段:498円(税込み)
特徴:国産の木酢液です。希釈済みのスプレータイプなので、買ってそのまま散布できます。
>>詳細はこちら(外部リンク)

◯木酢液(原液)1.5L
値段:598円(税込み)
特徴:薄めて使うタイプの木酢液で、土壌改良のほか忌避剤としても使えます。
>>詳細はこちら(外部リンク)

◯木酢液 原液 4L
値段:880円(税込み)
特徴:カインズオリジナルの木酢液で、4L入りの徳用品です。たっぷり入っているので多用途に使うことができます。
>>詳細はこちら(外部リンク)

2.ダイソーなどの100円ショップ

ダイソーでも木酢液を買うことができます。
ホームセンターで買うほどではないけれど、試しに使ってみたいという人におすすめです。

◯木酢液(500ml)
値段:110円(税込み)
特徴:原液なので、自分で希釈して使います。植物の活性化や害虫避け、ペットや家畜の脱臭効果などに使えます。
>>詳細はこちら(外部リンク)

木酢液の選び方

木酢液には農業用のものや、肌につけても良いものなど、さまざまな種類があります。
ここでは、木酢液を選ぶ時に気をつけるべきポイントについて解説していきます。
下記の3つのポイントを意識して木酢液を選びましょう。

原材料が広葉樹

クヌギやナラなどの広葉樹から作った木酢液は質がよく、おすすめです。商品ラベルに原材料の表示がないものは、どのような木材が使われているかわからないので避けるようにしましょう。

沈殿物・浮遊物がない

高品質の木酢液はワインレッドや薄褐色のような澄んだ色合いをしています。沈殿物や浮遊物があるものは、静置やろ過が十分でないものかもしれません。

6ヶ月以上静置・ろ過されたもの

木酢液のもとを6ヶ月以上静置することで、有害物質と木酢液とに分離します。この有害物質をろ過することで、安全に使うことができるようになります。

木酢液の基本的な使い方

木酢液は自身で希釈して使うものと、希釈済みのものがあります。ここでは原液を希釈して使う際の、基本的な方法について解説していきます。
商品によって希釈倍率は異なるので、あくまで参考としてください。

1.病気予防や品質向上に使うなら

植物の病気予防や品質向上に使うなら、原液を500~1000倍に薄めて使いましょう。
葉の表面だけでなく、裏面や茎にもしっかり吹きかけるようにしてください。
木酢液の殺菌効果によってカビなどの病気が予防されるだけでなく、根の張りなども良くなります。月に3回程度の頻度で散布すると良いでしょう。雨が降ると流されてしまうので、晴れた日に散布しましょう。

2.害虫獣の忌避目的で使うなら

害虫獣の忌避目的で使うなら、原液を2~5倍に薄めて使いましょう。
木酢液の独特な匂いを嫌がって、害獣が近づかなくなります。通り道や畑の周辺に散布しましょう。

濃度が濃いため、作物に直接かかると葉が焼けてしまうかもしれません。作物の虫よけとして使う場合は、500~1000倍に薄めて使いましょう。

3.土壌改良や発酵促進に使うなら

土壌改良や発酵促進に使うなら、原液を50~100倍に薄めて使いましょう。
薄めた木酢液を生ゴミに混ぜ込むことで発酵が促進され、質の高い堆肥になります。また土壌に散布すると微生物の数が増え、豊かな土になります。なお土壌改良を目的に散布する際は、作物の植え付け1週間前までに行いましょう。

4.脱臭目的で使うなら

脱臭目的で使うなら、原液を10~50倍に薄めて使いましょう。
ペットの糞尿など匂いの強いものを脱臭するのであれば、10~50倍希釈の木酢液を使います。独特な匂いと殺菌作用で悪臭を軽減することができるでしょう。
なお、ペット用品や排水溝などの脱臭には200倍程度に薄めたもので十分です。濃度が高すぎると傷みに繋がるので使い方には十分注意しましょう。

木酢液を使う時の注意点と保管方法

木酢液を使う時は、以下のポイントに注意しましょう。
また保管方法にも注意が必要です。

1.肌に直接使用しない

木酢液は刺激の強い液体です。肌に直接使用することは避けましょう。
イボや水虫に効果があるという説がありますが、証拠がなく民間療法の粋を出ません。闇雲に使用することは怪我に繋がるおそれもあるので、注意してください。

2.直射日光が当たらない場所で保管

保管する際は、日光が当たらない場所で保管しましょう。常温でも大丈夫ですが、子どもやペットの手が届かないところに置くようにしてください。

3.金属製の容器を使わない

木酢液の成分が金属に反応して、穴を空けてしまいます。保存するときはガラス瓶やプラスチック製の容器に入れましょう。

木酢液を自宅で作るのは困難

木酢液を作るためには、原料となる広葉樹、炭焼き窯やパイプなど大掛かりな設備が必要になります。また製造中に出たタールなどの不純物を処理することも考えると、自宅で作るのは困難でしょう。

もし自作したいという場合、一般的な作り方は以下の通りです。

1.広葉樹の原木を、炭焼き窯で焼き上げます。
2.炭焼き窯の煙突から上がった煙を、パイプに通します。
3.パイプを冷却し、煙に含まれる水分を液体化し、容器に集めます。
4.6ヶ月ほど静置し、分離した不純物を取り除きます。
5.ろ過した木酢液をガラス瓶やプラスチック容器に入れ完成です。

目的別に正しい使い方をしよう

土壌改良や作物の品質向上など、家庭菜園の良い相棒でありながら、脱臭や入浴剤など日常生活にも使える木酢液は、様々な目的で使うことのできる便利なアイテムです。目的によって希釈倍率が異なりますので、混同しないよう注意して使ってください。

住宅街などで家庭菜園の害虫獣避けに悩んでいるという方は、特に木酢液の使用がおすすめです。ぜひ本記事を参考にして、挑戦してみてください。

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